3月期決算企業は本年の株主総会の本格準備に入っているかと思います。
2018年度は、コーポレートガバナンス・コード、コーポレートガバナンスシステムガイドライン(CGSガイドライン)の改訂などコーポレートガバナンス関連で大きな変化のあった年と思います。ということは、今年の株主総会の目玉の1つになるということです。
今回は、経産省のCGSガイドラインで気になる事項について、上場企業の方があまり気付いていないのではと思える事項について紹介したいと思います。
コーポレートガバナンス改革において社外取締役の増員がフォーカスされているところはご存知のことと思います。
では、何故、社外取締役である必要があるのでしょうか。大まかな趣旨は認識しているかと思いますが、社外取締役の活用の狙いについて、CGSガイドラインでの記述を紹介したいと思います。ガイドラインの28ページから29ページに記載されています。
- CEOが経営の執行にあたって取締役会で戦略を策定することが重要
- 日本の場合、新卒採用された従業員が社内で職業経験を積み、内部昇格により取締役となることが多い
- どうしても社内で蓄積された経験に頼り経営を行うことになるが、急速な時代の変化の中で社外の知見を活用しながら成長している内外の企業との競争にか勝つことは容易でない(これが稼ぐ力が弱いままである)
- 今後は、経営の仕組みを、必要な資質を備えた社外取を確保し、その知見・経験を活用する
では、経産省は社外取締役だけが望ましいと考えているのかと言えば、必ずしもそうではないようです。この点、見落としがちなのですが、CGSガイドラインの28ページの脚注において次のような記述があります。
- 長期的に見ると、従業員レベルでの雇用の流動化や経営陣への外部招聘などの取組が進めば、社外の知見・経験が経営に反映されることとなるが、その実現には時間を要する。より足元でできる取組として社外取締役の活用が考えられる。
つまり、 経産省は、社外取締役ありきと考えているわけではなく、雇用の流動化により、中途採用者が経営陣に入るのであればよいが、日本の上場企業(特に大手)は、その会社しか経験のないプロパー社員しか役員になれず、中途入社の従業員が経営に携わるのは難しいので、まずはてっとり早くできる社外取の活用を進めるということを言っています。
この脚注の記述を知りませんでしたが、なるほどと思いました。
残念なことに、日本の伝統的な企業では、プロパー社員よりもかなり上のランクの大学を卒業していたり、また、企業規模の大きい会社でレベルの高い業務経験があっても、中途入社である以上は役員になるのは、かなりハードルが高いのが現実かと思います。
理由は単純で、平社員時代から顔見知りで、同じ会社で飯を食べ、一緒に酒を飲みサラリーマン人生を歩んできた部下の方が親しみを持て、扱いやすいということにつきます。これは仕方のないところです。
しかし、経産省が雇用の流動化によるマネジメント層の創出を真剣に考えるのであれば、コーポレートガバンナス・コードで取締役会の構成で、「国際性」とか「女性」とか正直どうでも良いことを掲げるのではなく、転職者(勿論、男女を問わず)を経営幹部に登用すべきというようなことを規定しても良かった気がします。もっとも、コーポレートガバナンス・コードは、金融庁が管轄ですが。
というように、本日は、経産省は必ずしも社外取締役が最良の手段として考えているわけではないということを紹介しました。
さて、次回ですが、CGSガイドラインでは、後継者計画についても詳細触れられています。しかし、あらためて良く考えると後継者計画は必要ない会社も多いと私は考えます。このあたりについて、CGSガイドで書かれている後継者計画の内容と併せて、趣旨に立ち返り紹介したいと思います。