中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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オリンパスが「物言う株主」(アクティビスト)を取締役に招く

1月12日の日本経済新聞オリンパス物言う株主を取締役に招くという記事がありました。物言う株主として著名な投資ファンドであるバリューアクトの外国人のようです。バリューアクトは、オリンパスの株式を昨年より約5%保有しております。

 新聞報道によれば、オリンパスは指名委員会等設置会社にも移行するようですが、今回の詳細は、オリンパスが1月11日に公表した「Transform Olympus」に記載されており、骨子見出しをあげますと次のとおりです。

 ①グローバル・グループ一体経営体制へ転換 ②グローバ人事制度への転換 ③医療事業の再編成 ④コスト削減及び資本効率改善への取組 ⑤取締役会のダイバーシティ化を伴う指名委員会等設置会社への移行

各事項をブレイクダウンした内容が資料には記載されています。

新聞報道によれば、「目指す方向性が一致していたので、一緒にやることを決めた」とあり、会社側から積極的に受入れたとのことです。物言う株主は、会社側と対峙することが常で、物言う株主の提案する取締役選任の株主提案をして可決されたようなケースを除いて、会社側が積極的に物言う株主の提案、特に役員提案を受け入れるケースはこれまで聞いたことはありません。

オリンパスのケースも内情は報道されていませんが、報道どおり積極的にすんなりと決まったのかどうかは知るよしはありませんが(物言う株主をボードメンバーに受入れることは、企業の経営陣には、普通に考える限り、相当な抵抗があると思います)、いずれにせよ、これによりオリンパス企業価値が向上し、株価向上、配当増となるような場合、バリューアクトの行動について、オリンパスの株主の賛同を得ることが十分にあり得ると思います。

 また、本日の日本経済新聞では、投資ファンド保有銘柄には株主総還元(配当+自己株式取得)のアップが期待できることから、株価上昇が期待されるとありました。

オリンパスが指名委員会等設置会社に移行するというのは、取締役会の機能を戦略の実行ではなく、戦略の策定・執行の監督機能に重きを置く体制にすることになります。バリューアクトは、あくまでファンドであり、ファイナンスのプロであって事業のプロではないと思いますので、監督機能にフォーカスするという機関設計にするということかと思います。

 昨年の日本企業の株主総会では、投資ファンドから多くの株主提案がありましたが、ほとんどのケースでは株主提案に対する株主の賛同は得られませんでした。

資本の論理の観点では正しくても、提案内容が会社提案議案と真っ向から対立するような過激な内容も大きく、機関投資家も「そこまでしなくても・・」ということで、株主提案が否決されたことと私は理解しています。

しかし、今回のオリンパスのケースでアクティビストである物言う株主が市民権を得れば、株主にとってアクティビストに対する期待は高まる流れになるかと思いますので、今後のオリンパスの動向は、株主や機関投資家のアクティビストに対する見方に大きな変化が生じる1つの変化点になるか否か注視する必要があると考えます。