中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

金融庁のディスクロージャーワーキング・グループ報告の概要

少し前になりますが、2018年6月28日に金融庁ディスクロージャーワーキング・グループが報告を公表しておりますので、本日はこれについて少し触れてみたいと思います。内容は有価証券報告書の開示に関する考え方をまとめたもので、おおむね次のような内容が記載されていります。

<経営戦略・ビジネスモデルの開示>
依然として開示内容が不十分な企業が多い。英国の例を参考に、企業構造、事業市場と関連付けて、事業計画・方針を明確に説明し、企業成長、業績、将来見込みの評価に資する情報が提供されるべき

<リスク情報の開示>
リスクの羅列となっており、数年間記載の変化のない企業も多い。英国の開示例を参考にリスクの重要度の順に、発生可能性・事業に与える影響等企業固有の事情に応じた実効的なリスク情報の開示をする必要あり

<分かりやすい開示>
諸外国(米国・英国)の取り組みも参考に、投資家にとって重要な情報を十分・正確に提供するため更なる取り組みが必要

<政策保有株式の開示>
・合理性検証方法や取締役会における議論状況について開示すべき
・個別政策保有保有目的・理由について、定量的な効果も含めての具体的記載を求める
・有報開示基準に満たない銘柄も含め、売却・買い増した銘柄の詳細の開示
・開示対象銘柄の拡大
・純投資と政策投資の区分の基準や考え方の明確な説明
・純投資株式についても一定の開示

<重要な契約>
米国では、契約書の内容が開示されているが、日本では開示が不十分。投資家の判断で重要と考える契約内容について、海外の実態を把握しながら適切な開示を促す

<ガバナンス情報の提供>
役員報酬の考えの分かりやすい記載。算定にKPIがある場合、KPIの選定理由、業績連動報酬反映方法の記載。報酬決定プロセスの客観性・透明性のチェックを可能にするため、報酬委員会の具体的活動内容の開示。日本は役員報酬が低いので、個別開示の対象拡大は必ずしも重要でない

などです。

色々と書いてありますが、目的は、「企業情報の開示は、資本市場における効率的な資源配分を実現するための基本的インフラであり、投資判断に必要とされる情報を十分かつ正確に、また適時にわかりやすく提供することが求められる」とあります。

たしかに、色々な投資先企業の有価証券報告書を見ますが、リスク情報の開示、重要な契約の開示、政策保有株式の開示は、各社の書き方がひな型的との印象は受けます。

上場企業は開示が大変になる一方です。詳細開示をすれば投資家から質問が出るし、また、開示が不十分であると、開示の不十分性が問題と指摘されるということのような気がします。物言う株主からのも指摘を受ける可能性もあります。

以前にもブログで書きましたが、上場の意義は資本市場からの資金調達ですが、この必要のない企業はMBOによる非上場化するということを真剣に考えないと、無題にコストばかりかかることになるような気もいたします。開示のための準備、開示を踏まえた対応といったコストです。

上場廃止すると優秀な学生がこないという声も聞きますが、そもそも、上場していても中堅規模以下の企業であれば、どの道、偏差値の高い大学(ざっくりといいますと、東大・一橋・旧帝大早慶上智クラスでしょうか?)の学生が来ることは想定しがたいのであって、そんなことに悩むよりも(そもそも優秀な学生の判断基準である大学の「偏差値」の差など仕事の上では、東大・京大・一橋大学の一部の優秀な方を除けば、偏差値の高い大学も低い大学も、知織ゼロベースで会社に入り、「よーいどん」で競争すれば、たいして違いはないはずです。要は、仕事に対する意識が高いか低いかで差がつくのではないでしょうか)、非上場化して、うるさい株主の目を気にすることなく、企業価値向上に邁進できるような気がします。