コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

配当議案に対する機関投資家の反対の高まり

少し前の日本経済新聞に本年6月の株主総会での配当議案(剰余金の処分)への反対比率が上がったとの記事がありました。

三菱UFJ信託銀行、アセットマネジメントOne等の運用会社の議決権行使の個別開示結果をまとめたようで、東京海上アセットマネジメントやニッセイアセットマネジメントが反対票を投じた割合が上昇したようです。

記事によれば、東京海上アセットマネジメントが配当議案の賛成率を配当性向15%から25%に引上げ、議決権行使をした706社中、34社に反対を投じたようです。

増配に関しては、本年の株主総会アルプス電気の子会社であるアルパインに対して投資ファドのオアシスマネジメントが1株当たり315円の大幅増の配当の株主提案をしていましたが、これに対してはISSが賛成推奨をしたものの否決されましたが、個別開示結果で見ましたところ、野村アセットマネジメント日興アセットマネジメントは株主提案に賛成していました。

私は、以前にアルパインの財務諸表を見たところかなりのキャッシュリッチで、1株当たり315の増配も財務に大きな影響はないと思いましたが、野村アセットマネジメント等は論理的な判断をしたようです。

ちなみに、運用会社の議決権行使の個別開示結果は、各運用会社のホームページに掲載されており、投資先企業の議案とそれに対する賛否結果が詳細に開示されています。まだご覧になったことのない方は、一度見てみるとよいかと思います。グーグルなどで運用会社名を入れて、「議決権行使基準」「個別開示」等のキーワードを入れると各社のホームページに飛びます。

さて、配当性向に話は戻りますが、配当性向30%を1つの目安にしている上場企業が多いかと思います。

その理由は良く分かりませんが、日本の上場企業の配当性向が平均で30%程度ですので、これにあわせて何となく30%を基準においているのが圧倒的多数の上場企業かと思います。

しかし、前にも書きましたが、配当性向30%など特に意味はないのであり、繰越利益剰余金とそれに見合ったキャッシュがあれば配当はできます。配当は毎期の純利益が原資ではなく、繰越利利益剰余金が原資です。

2017年度の法人企業統計によれば、内部留保が446兆円で前年度から10%増加し、6年連続で過去最高になっています。

内部留保の使い道に対する議論も今後高まるように思いますので、上場企業は、投資ファンドが増配を求めてきたときに自社の財務状況、今後の設備投資、M&Aの考えを十分に考慮して、理論上どこまで還元が可能であるかという理論武装をきちんとしておく必要があるのではないでしょうか。

突然に投資ファンド理論武装をした頭の良い個人株主の集団が、配当増を提案したきた場合、横並びで30%を配当性向にしているという理由は通用しないので、どこまで配当を増やせるのか、増やさない場合には何故そうしているのかの点について、自社の属するセクターの他社企業と比較するなどの理論武装をしておく必要があります。