先日の日本経済新聞で「助言会社 問われる眼力」というタイトルで大塚家具のお家騒動の際に、娘である子供と父親のいずれに議決権行使助言会社は賛成したのかとの記事がありました。
娘を支持することに議決権行使助言会社であるグラスルイス及びISSは推奨し、その理由は、娘の方が取締役の多くに専門性の高い人材を外部登用し、小売業のコンサルタント、マーケティングの専門の人材を揃え、また、女性取締役比率が高かったことにあるようです。娘は、「最高のガバンス体制」とアピールしたものの、結果としては周知のとおり業績低迷の有様で、助言会社の力量は如何か?という内容です。
助言会社の推奨判断を機関投資家は採用することが多く、そのことを助言会社は認識しているのですから、賛成推奨に助言会社は責任を負う必要があるともいえます。記事もそのような趣旨かと思います。
しかし、助言会社は、企業のビジネスに精通しているものではなく(勿論、議決権行使推奨というビジネスには精通していますが)、賛成を推奨する取締役個々人のビジネスの能力を判断するのは不可能です。そのため、外形的な基準で判断せざるを得ないのです。
とすると、どうすればよいのでしょうか。
私は、機関投資家が助言会社の賛否推奨基準に依拠することなく自ら判断し、それをアセットオーナーに説明できる力をつける必要があるように思えます。
最近のアナリストは、新人時代から企業の決算数値と業績予想を見ることに重きが置かれ、企業の営む事業のSWOT分析や企業経営陣と深く対話できる経験が積めていないということを以前にある運用機関のベテランのアナリストから聞いたことがあります(勿論、アナリストの全員がそうであるとは思ってはおりません)。
機関投資家は短期での運用実績を求められているのですから、四半期毎の決算数値に目が向くのは当然のことと言えば当然かも知れませんが、もう少し数値以外の本質を見抜く眼力が機関投資家には必要になるように思えます。
なお、先日、トランプ大統領が米国で四半期業績開示を廃止することをSECに検討するよう命じたとの報道がありました。四半期決算は機関投資家の投資のショートターミズムを促進する最たる要因でもあります。
そうであれば、四半期決算を廃止することで、機関投資家は短期数値にとらわれることなく、企業の本質を中長期的観点から見る十分な眼力をつけることが出来るのかも知れません。