中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

上場企業の効果的な個人株主対応

先日の日本経済新聞で「個人 進む二極化」との記事がありました。個人株主数が2017年度に5,000万人を超え5,129万人で過去3年で12%増えた一方で、保有額の大きい高齢者は持株の処分に動いているということです。

私の認識では、日本企業全体(コーポレートジャパンと私は言っています)に占める個人株主は、高齢層が多いように思います(正確なデータを見たわけではないので、間違っているかも知れません)。理由は、個人で株式を購入できるには一定程度の資金が必要なためです。しかし、高齢者は相続を見据えて株式の売却に動いています。上場株は、相続税の評価で優遇措置がないため、売却して現金に代えるという動きがあるということです。

一方、政策保有株式の縮減の動きが今後加速し、政策保有株主は会社に文句を言わない「物言わぬ株主」であったのですが、それに代わる安定株主を企業は今後確保する必要があり、その1つとして個人株主を上場企業各社は今後増やしたいとい切実な課題がありあります。高齢でない個人株主の増加を各社模索することになります。

ただ、所詮は個人であり、かつ、年齢層も若いため、事業で成功したようなごく握り富裕層を除けば、資金力も限度があります。とすると、個人株主を増やそうと企業は頑張っても個人株主の「数」は増えても、肝心の「保有比率」の増加には結びつきにくいという現実があります。わずか1,000株程度の株式を保有する個人ばかりが増えて、この個人が色々と瑣末な提案を会社に主張したりするとその対応が大変になります。このため、企業としては、最低でも1万株程度は購入できる資金力のある個人株主に株式を保有してもらう必要があります。

とすると企業は、自社の個人株主を、保有株式数1万株の個人株主を重要ターゲットで層として、マーケティング手法であるRFM分析でこれを更に層別する必要があると思います。

RFM分析とは、いつ商品を購入したか(Recency:最新購買日)、どの程度の頻度で購入しているか(Frequency:購買頻度)、いくらの購買金額か(Monetary(購買金額))で顧客を層別して、対応をすることであり、これを個人株主に当てはめるのです。

つまり、①1万株をいつ保有したのか、②どの程度の頻度で購入しているのかです。例えば、10年前から保有している個人であれば、会社が特段の措置を行わなくても保有を継続するでしょうが、最近になって購入した株主には、会社の状況をよく知ってもらうために会社として手厚いサービスをするというものです。

既にこういう活動を実践している上場企業も多いのではないかと思いますが、これからはじめて個人株主増加施策を検討する企業は、今後、こういった手法を検討すれば良いかと思います。

本日はこれで終わりますが、最近、自分の株式投資の目的で四季報オンラインを使い、土日に自宅で投資先企業のスクリーニングをやっています。

これまでもブログで個人株主のアクティビズムの可能性等について書いてきましたが、資金力の乏しい個人投資家が投資先企業に株主としての権利行使を行い、これにより、株主価値の向上策を投資先企業に実施させることを前提とした投資先候補企業のスクリーニング方法について、次回または次々回に掲載したいと思います。