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経産省が上場企業に対して社外取締役の再任基準を明示する方向

6月17日(日)の日経新聞で、経産省が上場企業に対して社外取締役の再任基準を明示するよう求めるとの記事がありました。

今夏に定める予定のコーポレートガバナンスシステムガイドラインの改訂版(改訂CGSガイドライン)に規定するとのことです。改訂CGSガイドラインについては、先般、中間整理が出されており、以前にブログでも紹介しましたが、中間整理で社外取締役の再任基準は掲載されていましたので、このタイミングであらためて社外取締役の再任基準を記事にする背景は良く分からないところではあります。

取締役の選任については、招集通知に各取締役候補者の選定理由が記載されます。これは社内取締役、社外取締役のいずれを問いません。これが1つの選任理由になりますが、経産省は、これは選任理由であり、より明確な再任基準を策定せよということです。たしかに、選任理由は、多くの企業は一般的な内容しか書いておらず、どうして選定したのは極めて抽象的という場合が多いかとは思います。

社外取締役の解任基準を設ける背景としては、社外取締役が十分な機能を果たしていないという背景があります。企業によっては、社外取締役が十分な機能を果たしているというところも勿論あると思います。しかし、取締役会への出席率が低い、選任したものの、その方の能力が乏しいのか、会社に遠慮しているのかは知りませんが、社外取締役が積極的に提案や経営への関与が不十分なケースが多いというのが経産省の認識のようです。

社外取締役の再任から少し話は変わりますが、改訂コーポレートガバナンス・コードでは、経営陣幹部解任の要件も開示することとされております。

現時点では改訂コードを踏まえたCG報告書を提出している企業は少ないのですが、アサヒグループHDが次のような開示を行っています。

代表取締役などの業務執行取締役(CEO以下の経営陣)について、その業績につき毎年定期的に指名委員会にて審議し、取締役会にて定めた解任基準に該当するとの審議結果であった場合は、指名委員会における審議結果を取締役会にて検証の上、基準に該当する場合は、取締役候補者として指名せず、また、代表取締役・業務執行取締役(CEO以下の経営陣)としての役職を解任します。」

解任基準自体は開示していませんが、解任基準を取締役会で規定しているようです。

会社法上は、役員は正当な事由なく解任された場合には会社に損害賠償請求が出来るとされており、正当な事由には、法令定款違反行為が該当します。しかし、これのみが解任基準とするとわざわざ規定する必要はないということになります。

アサヒグループHDの開示する解任基準とは、「再任しない基準」を意味するのかは分かりません。いずれにせよ各社とも他社の開示例を見て、今後、詳細を検討することになると思います。