中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた個人株主のアクティビズムの可能性(3)-2

改訂CGコードと事業ポートフォリオ、資本コストの話題について、ブログで触れる前に先日の5月1日にソレキア株式会社(9867)に対して、個人株主が株主提案をした旨をソレキア東証に開示していました。

株主提案を行った方がこれまでのように投資ファンドではなく、個人株主であり、その提案内容がまさに私がブログで書いているところでもありましたので、本日は、これについて紹介したいと思います。

いくつか株主提案がありますが、その中で3つほど紹介します。

1.総還元性向100%とする剰余金配当の株主提案
2.ROE8%以上を目標にして、その実現に向けて取締役は最善の努力を払う旨の定款
変更の株主提案

3.政策保有している上場株式を第61期中に全て売却する旨の定款変更の株主提案

以上になります。ソレキアは、東証JASDAQスタンダード上場の時価総額約40億円程度の電子部品商社です。

2018年5月1日付けのソレキア東証開示文によりますと、株主提案を行使したのは、1名の個人株主ですが、この方は、ソレキアの2017年3月の有価証券報告書の大株主状況を見る限り上位10名には名前がありません。

2018年3月末現在での株式所有比率は分かりませんので不明ですが、ソレキアは1単位300株ですので、株主提案には最低300単位必要なので、少なくとも30,000株は保有する株主と言えます。

各提案の詳細について、ソレキアの5月1日開示の東証開示文から一部を抜粋すると次のとおりです。

まず、株主提案の上記1については、「貴社の平成30月期第3四半期決算短信によれば、平成29年12月31日現在の連結貸借対照表上、貴社が保有する現預金は約36億円、投資有価証券は3億円以上あります。また、貴社が現在行っている事業は、生産装置を更新する等の設備投資や研究開発に大きな資金を必要とするものではなく、現在の保有現預金等で十分な必要運転資金が確保されているはずです。」と記載されています。

次に株主提案の上記3については、「今年3月末に公表されたコーポレートガバナンス・コード改定案「原則1-4」では、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容を開示すべきであるとされています。このコード改定案「原則1-4」の精査・検証が、一般の株主に対して、誠実に行われるならば、現在の政策保有を正当化できる株式は貴社には一つもないという結論になるはずです。(貴社が政策保有している株式は、その発行会社の規模と比べて非常に少ない株数なので、保有に伴う便益などあるはずがないというのが主な根拠です。)しかし、長年、業績及び株価を低迷させているにもかかわらず、居座り続ける取締役にとっては、政策保有株式は保身のための株式の持ち合いという側面が強く、自らの地位を危うくする持ち合い解消を決断することは難しいと思いますので、定款に本条文を加え、政策保有株式の売却を確実にするべきと考えます。また、ROE 向上を目指す観点からも収益につながらない遊休資産を現金化し、収益性の高いプロジェクトへの投資を検討するべきであり、仮にそのような経営計画・投資案件が全くないのであれば、自社株買い等で株主に還元するべきです。」と記載されています。

いずれの内容も最近の投資ファンドが、企業に対して株主アクティビズムで主張する内容と同じ視線の提案になります。

ただ、上記1及び3の株主提案ともに提案の理由が、だいぶ定型的な内容であり、他の株主の賛同を得るには、このソレキアという企業の財務を含む企業分析をして、より踏み込んだ提案理由にしないと、賛同を得ること困難だろうと思います。この提案内容では、機関投資家も賛同票を投じるまでの判断には至らないのではないでしょうか。

提案内容は不十分であるとしても、私がこれまでブログで書いてきたように個人株主が最近のコーポレート・ガバナンス改革の流れに沿った株主提案を行った一例と言えます。ファイナンスコーポレートガバナンスの不備・課題を指摘するプロである投資ファンドの提案に比べるとまだまだ素人的な提案内容ではありますが、一応の理論武装をした提案ということになります。

気になったニュースでしたので、前回のブログの続きとして掲載しました。次回は、資本コストと事業ポートフォリオについて記載したいと思います