コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

日立製作所が800社を超えるグループ会社の約4割を今後削減する方向

4月14日の日本経済新聞に「日立製作所が2021年度を目途にグループ会社を約4割を削減する方針」との記事がありました。

800社程度ある傘下のグループ会社を統廃合して、500社程度にまで削減するということです。日立製作所は800社もグループ会社があるということがそもそも驚きです。

日立製作所に限らず、伝統のある日本の大手企業は、多くのグループ会社を抱えていることが多いかと思います。グループ会社を保有する理由には、雇用の継続という大きな狙いが1つあるかと思います。

つまり、親会社本体で役職定年を迎えた社員の受入先としていることがあります。親会社で一定年齢を超えた社員を本体から子会社であるグループ会社に出向又は転属させて、給与を下げ、子会社で部長又は役員の役職を与えて雇用するというのは、伝統的な大手日本企業の慣行かと思います。

今回の日立のグループ再編では、間接部門を抱えて効率の悪さが目立っていたとのことで、これを解消することが狙いとあります。

機関投資家から見た場合には、役職定年後の50半ば過ぎの高齢社員をグループで雇用するためにグループ会社を持つということは、とんでもないという意見が出そうですが、この意見もどうかなとは思います。

そもそも企業の役割の1つは「人の雇用を継続する」ということがあります。企業の存続の根本は、従業員の雇用にあり、従業員のために存続するのが企業です。日本電産の永守会長も、雇用の場を提供するのが企業の役目ということを前に言っていたのを何かの記事で読んだ記憶があります。であれば、雇用を継続するため、本体から外してグループ会社で採用するということも一理あるようにも思えます。

しかし、上場企業の場合、コーポレートガバナンス改革の動きの中、株主の声が最近は非常に強く、株主価値向上、つまり利益増加にプラスにならないことは許されないというのが最近の風潮です。

日立の営業利益率は18年3月期には7.1%の見込みですが、海外の競合会社並の10%を目指すということのようです。

不採算事業の再編、カーブアウトは昨今のコーポレートガバナンス改革の目玉であります。不採算事業を抱えるということは、この事業の営業利益率の低さが会社全体の営業利益率に悪影響を与え、ひいては、ROEといった経営指標にもマイナス影響を与えます。

日本企業にはPBRが1倍を下回る企業は約700社存在するといわれており、これが問題であると言われています。投資家から見た場合、株価が低いので問題ということです。

PBR=ROE×PERで、ROEの構成要素の1つが売上高当期純利益率ですので、利益率の悪い事業を抱えるということは、ROEにマイナス影響を与え、PBRにも影響を及ぼすことになります。

改訂コーポレートガバナンス・コードでは、資本コストに見合った利益を生み出せない事業の撤退を検討することを促しています。また、経産省が進めているコーポレートガバナンスシステム研究会(第2期)では、グループとしての管理体制の見直しが検討されています。

日立がグループ企業の大幅削減を決定した背景は、新聞報道以外には分かりませんが、これらの最近のコーポレートガバナンス改革の動きも背景にあるように思えます。

不採算事業を抱えることは、アクティビストからもつつかれるリスクを抱えることになりますので、株主総会シーズンに入るこのタイミングで、将来、アクティビストが「物言う」に先立ち(アクティビストである投資ファンドが日立の株式を保有しているかどうかは私は知りませんが)、会社としてグループ会社の削減を公表したということであるかも知れません。