2週間ほど前にある新聞で、経産省が「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」を改訂する方向で本年4月中を目途に検討会を立ち上げるとの記事がありました。
このガイドラインは、2017年3月に経産省が公表しており、同ガイドラインによれば、「ダイバーシティ2.0」とは、「多様な属性の違いを活かし、個々の人材の能力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み出し続ける企業を目指して、全社的かつ継続的に進めていく経営上の取組み」をいいます。
新聞報道によれば、今回の金融庁のコーポレートガバナンス・コードの改訂案で取締役会の構成で「ジェンダー」と「国際性」が盛込まれたことを受けて、取締役会の多様性向上をより強く求める内容にする方向で検討するということのようです。
併せて情報開示に関する内容も拡充をするようで、投資家へのアピール向上を促すということです。
ちなみに、2017年3月の「ダイバーシティ行動2.0ガイドライン」においては、ダイバーシティーが企業価値向上にもたらす主な効果として、次の4つがあげられています。
1 グローバルな人材獲得力の強化
2 リスク管理管理能力の向上
3 取締役会の監督機能の強化
4 イノベーション創出の促進
ダイバーシティーとは、従業員だけに限定されるものではなく、取締役も対象とするものと思います。従業員にだけダイバーシティーを行っても、最終的にはマネジメントがそれに理解を示さないとダイバーシティーが進まないため、結果、マネジメントサイドにもダイバーシティーを要求することになります。
多くの日本の上場企業(特に大手企業になるほど)の社内取締役は、①50代 ②入社時から社内一筋の経験のみ ③男性である といういわば「三種の神器」が社内取締役の条件かと思います。
この点が問題であるというのが、最近のコーポレートガバンナンス改革の背景であり、経産省はダイバーシティーの活性化に向けて、更なる取組みを進めるということのようです。
しかし、前にもブログで書いたように取締役のダイバーシティーなどというものは、必要ある企業のみが真摯に取り組めばよく、そうでない企業は取り組む必要は全くないと思います。海外機関投資家は、私の印象ですと、日本の機関投資家よりはダイバーシティーと国際性に関心を持つ傾向にあると思います。
したがって、外国人株主比率が20%を超えるような企業は、海外機関投資家の声を聞き、これにきちんと対応をする必要がありますが、上場企業の多くを占める中小型株銘柄にあたる企業は、外国人株主比率は数パーセント程度の企業が多いと思います。
このような企業は、少々乱暴な言い方ですが、ジェンダーや国際性など無視しても全く困らないのであり、「ダイバーシティー2.0」など関係なく、従前どおり収益向上に邁進し株価向上を目指せばよいのです。
ダイバーシティーの言葉は最近の流行ですが、そもそも業績・株価向上とダイバーシティーの直接の因果関係などどの程度あるのか怪しいものであり、自社の株主構成なども見て、対応する必要があるのかどうかの本質を見極めて進めることが必要かと思います。