コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

グループ会社間でも企業統治の透明性が求められるか

3月23日の日本経済新聞スクランブルに「身内」提案も真剣勝負とのタイトルで同じグループ企業からの株主提案の動きについて記載されていました。

株式会社UACJの筆頭株主である古川電工(24.9%出資)がUACJの役員人事案に対して見直しを提案しており、同じくUACJの第2位株主である新日鉄住金(7.7%出資)も古川電工の株主提案に同調しているのことです。

また、記事によれば、昨年、ある大手総合商社が、上場グループ企業に対して、役員人事に関する株主提案を検討していたとのことです。

これまでグループ会社の株主総会における会社提案議案に対して、親会社などのグループ会社が株主提案という法的措置を講じるということは、あまり聞いたことがありませんでしたが、企業グループ内での真剣勝負が増えているという記事の内容です。

この背景はどこにあるのでしょうか。

これは企業統治改革(コーポレートガバナンス改革)による、投資先企業に対する議決権行使の適切化の流れにあるように思えます。

コーポレートガバナン・コードの改訂案においては、政策保有株式に対する議決権行使基準の開示、議決権行使基準に基づく適切な議決権行使が求められています。これがさらに発展し、政策保有株式として投資先企業の会社提案議案に対する「反対」「賛成」といった単なる議決権行使のみならず、さらに一歩踏み込むと株主提案まで向かうということになります。ただし、コーポレートガバナンス・コードでは、議決権の適切な行使を超えて株主提案の行使までは求められていませんので、UACJのようなケースが一般化するとは思えません。

ところで、政策保有株式ですが、この言葉自体を知らない方はいないと思いますが、正確な定義は理解しているでしょうか。

金融庁のホームページに詳細が掲載されていますが、バランスシートに計上されている「投資有価証券」に該当する株式のうち、保有目的が「純投資目的」以外の目的であるものを政策保有株式といいます。有価証券報告書においては、その銘柄数及び貸借対照表計上額の合計額を開示します。

なお、「純投資目的」とは、専ら株式の価値の変動又は配当の受領によって利益を得ることを目的とすることをいいますが、これは会社の主観の問題であり、より具体的な中身、基準や運用については、各企業社の経営判断に従うことになります。

グループ企業であっても上場企業である以上は、大勢の少数株主が存在しており、不祥事を起こした企業には、機関投資家は反対票を投じることから、政策保有株式として投資するグループ企業で不祥事があった場合には、会社の提案する役員人事案に対しては「反対」票を行使することが今後は求められます。