3月21日の日本経済新聞の19面に「3月総会 増える対決型」との記事がありました。物言う株主の活動の活発化により、株主提案が3月総会で過去最高になっており、企業と株主が対峙するケースが増加しているということです。
ブログでも何度も書いていますが、スチュワードシップ・コードの改訂により、機関投資家の議決権行使の個別開示が求められることになり、機関投資家は、株主提案が合理的な内容であればこれに賛成を投じるケースも増え、物言う株主の力が増加していることが背景にあります。
米国では、物言う株主が提案をして、これに賛同する機関投資家も多く、結果、株主提案が可決されるケースも多いですが、新聞記事の中で早稲田大学の教授の宮島英昭氏という方の意見として、日本も「米国型総会まであと一歩のところまで来ている」とありました。
3月中旬に入り、6月の株主総会に向け準備に本腰を入れ始めた上場企業も多いと思います。
本年はコーポレートガバナンス・コードの改訂(以下「改訂CGコード」)も予定されており、6月の定時株主総会シーズンからこの改訂CGコードが適用されるとの報道もなされていたります。2015年のコーポレートガバナンス・コードの制定の際には、適用までに6ヵ月の猶予期間がおかれましたが、今回は5月の改訂後に直ちに適用されるのではないかということです。
もし、そうであれば、6月の定時株主総会において、「改訂CGコードの対応はどうなっているのか?」という指摘が株主から出る可能性もあります。政策保有株式の縮減方針や保有の意義の見直しなどが改訂CGコードの目玉と思いますが、このあたりは企業にとってつつかれると嫌な箇所と思いますが、上場企業は本年の株主総会の準備の中で改訂CGコードの対応準備も必要と思います。
念のためですが、土産目的で株主総会に出席している、定年した一般サラリーマン株主や個人株主などの素人はこんな高度な質問はできないし、仮に質問をしても、所詮は素人に毛が生えた程度なので適当にあしらえば済むのですが、問題は物言う株主であるプロのアクティビストが出現した場合です。ファイナンスとコーポレートガバナンスに精通した物言う株主は、大手法律事務所を起用することもあり、十分に注意する必要があります。
上場企業は、3月末の株主が確定した時点で、株主の実質株主判明調査を行うと思いますが、その結果がゴールデンウィーク前後で出てきて、その時点で物言う株主が株式を保有しているということが判明することもあります。しかし、この時点でばたばたと改訂CGコード対応などをはじめると大変です。
従って、物言う株主が存在しているという前提で、まだ余裕のある今の段階から準備することが重要になってくるように思えます。
野村アセットマネジメントなどは株主提案に賛成するケースを明確に議決権行使基準に規定していますので、物言う株主が存在し、仮に野村アセットの基準に即した株主提案をして来た場合に、企業としてはどういう反論をすべきかというように、機関投資家各社の議決権行使基準を確認した上で、きちんと整理しておくことが重要と思います。