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香港投資ファンドのオアシスがGMOの株主に対して株主提案を推奨

先日、GMOインターネット(以下「GMO」)の株主提案に対してGMOの定時株主総会の招集通知において、取締役会の反対意見が掲載されていることを紹介しましたが、これに対して、3月9日付けで投資会社であるオアシスより、取締役会意見に対する反論が報道関係者宛として公表されました。

報道機関宛に公表することでマスコミを通じて周知し、最終的にはGMOの株主にオアシスの株主提案への賛同を促うことを狙いとしています。

オアシスの反論をかなりコンパクトに纏めると次のような内容になります。

GMOは、買収防衛策は株主共同の利益を重視するといいながらも、GMOの大株主である熊谷氏の意思で支配された取締役会において、熊谷氏以外の株主利益に配慮した判断がなされる可能性は低い

②買収防衛策の発動を検討する独立委員会に委員の独立性がない

しかし書いてはみたものの、少しコンパクトすぎるので、オアシスの意見書からの抜粋も次のとおり記載します。

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「オアシス株主提案に対するGMOインターネット株式会社の取締役会意見について」
(平成30年3月9日付)より一部抜粋

GMOインターネットは、大規模買付行為を受け入れるか否かは最終的には株主によって判断されるべきと説明しているにもかかわらず、現在同社が採用する買収防衛策は、その導入に際して株主の意見を確認しておらず、更に、実質的には株主の意見を確認する事なく取締役会の判断で発動する事ができる仕組みです。これは、GMOインターネット取締役会意見における対外的な説明とは大きく実態が乖離しているとオアシスは考えます。

GMOインターネットは、株主共同の利益を重視していると説明しているものの、弊社が従前のプレスリリースで指摘した2007年当時の外資系ファンドからの買収提案を熊谷氏が独断で断ったという対応に代表される様に(その他の熊谷氏の公私混同の疑義のある取引については下記の通り)、根本的な問題として、最大株主且つ代表取締役会長兼社長である熊谷氏とその他の株主の利益が相反する場合が存在します。熊谷氏が非常に大きな影響力を及ぼす事ができる同社の現状のガバナンス体制下においては、同社の取締役会において、真に熊谷氏以外の株主の利益に配慮した判断がなされる可能性は極めて低いとオアシスは考えます。

・加えて、以下の観点から、GMOインターネット社外取締役2名と社外の専門家2名(そのうち1名はGMOインターネットの元社外監査役)で構成される特別委員会が真に独立した立場にはなく、その勧告内容に客観性は認められない(熊谷氏の意向を尊重するバイアスがかかっている)とオアシスは考えます。
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オアシスの意見を読む限り極めて的を得たものとなっていると私は感じます。

特に独立委員会の独立性は、機関投資家が強く要求するところであり、オアシスの資料によれば、独立委員会の委員である社外取締役が、過去14年間GMOの役員であったとあります。社外取取締役も任期が長いと独立性がないと機関投資家は判断するケースが多いと思います。

GMOでは、何故このような方を独立委員会の委員にしていたのでしょうか。

これは私の推測ですが、恐らく、これまで株主総会で買収防衛策を導入・更新するというスキームになっていなかったので、買収防衛策に対する世間の動きにGMOは疎かったのではと考えます。

買収防衛策を株主総会で更新継続する企業は(このタイプが圧倒的多数ですが)、更新の際には機関投資家を事前に訪問して議案説明をしますが、GMOの独立委員のような構成では反対されるということは容易に分かるはずです。

従って、買収防衛策の導入・継続更新を株主総会で議案上程する場合には、独立委員会の委員の独立性には十分に配慮することになります。

おそらく今回の株主提案に賛同する機関投資家は、かなり多いのではないでしょうか。より具体的にいいますと、議決権行使結果の個別開示が必要とされる現状の環境下では、オアシスの「株主提案」に対して、機関投資家は「反対」との議決権行使は出来ないのではないかということです。

勿論、機関投資家保有比率が不明ですので、もし比率が低ければ、いくら賛成しても結果には影響を与えることにはありません。

ちなみに、このオアシスの提案書では、冒頭に「日本法大手法律事務所と共に精査しました」と記載されています。大手法律事務所というと、通常は、西村あさひ法律事務所、森・濱田松本法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所あたりを指します。どこの法律事務所を業者として起用したかは不明ではあります。