コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

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政府が女性取締役の「1名以上起用」の企業統治の方針を公表

先日の日本経済新聞で、金融庁は上場企業に女性取取役の起用を促す方針との記事が掲載されました。

金融庁コーポレートガバナンスのフォローアップ会議のこれまでの議事録を見てきましたが、女性取締役の起用の話は出ていませんでしたので、どこから出た方針なのかと思っていましたところ、昨日の新聞でも、安陪首相が女性取締役を1名以上起用することを促すと正式表明したとの記事がありました。

フォローアップ会議は、出席委員が議論してコンセンサスを得るという場ではなく、あくまで金融庁有識者を招いて、その意見を参考にしながら方針を決める場と理解していますので、たまたま会議ではこの論点が出なかったのかも知れません。または、2月15日開催の第14回フォローアップ会議の議事録がまだ公開されていませんが、その中で、はじめて女性取締役の論点が出たのかも知れません。

いずれにせよ、政府が表明している以上、結論には変わりはないことになります。

女性取締役の必要性についてはブログでも何度か触れており、上場企業によって起用が必要な企業とそうでない企業があることとは思います。しかし、そもそもとして、上場企業の中高年の幹部クラスの中で女性の割合が極めて少ないのが多くの上場企業の現状かと思います。

これはどういうことかと言うと、子供が2人以上いる女性はフルタイムで働けない環境にあるということです。複数の子供を持つ女性は能力が高くても、非常に残念なことですが、退職をして家庭に入ってしまっている例が多く、私の大学時代の女性友人を見ても、自分の周りを見てもそうです。つまり、「働ける環境にある女性が働いている」というのが多くの日本企業の実情です。

自分より偏差値の低い大学を出ている男性や女性が、フルタイムで働けるという理由であるがゆえに昇格し、自分は彼らまたは彼女より、かなり上のランクの大学を出ているにもかかわらず、子供が2人いるため、退職せざるを得なかったと非常に悔しい思いをしている女性もかなりいると思います。

とすると、選定する母集団の小さい中から、あえて取締役を選定するとなると能力の極めて乏しい人材が役員になるという非常におかしな話が出てきます。すると、「この政府の方針はおかしい?」と非常に多くの上場企業の経営層や幹部層の方は考えるのが極めて普通かと思います。

ちなみに、上場企業で女性役員(取締役・監査役)の占める比率は、米国で18%程度で、フランスが30%超で、日本は3~4%であったと記憶しています。

ただし、女性取締役の起用はコーポレートガバナンス・コードで規定されることになりますが、コードは遵守が強制されるものでなく、また、上場企業は遵守が出来ない場合にはその理由を説明すれば足ることとされています。

従って、多くの企業では、女性取締役の即起用は出来ない理由を説明することになるもの思います。

しかし、女性や役員起用の流れが強まることは確実ですので、上場企業としては、中長期では女性の役員への起用を考えざるを得ません。とすると、現状のように母集団の小さい中から、やむなく不適格な人材を選ぶという過ちを防止するには、企業としては、選定する女性の母集団を大きくする必要があります。

女性が子供を2人以上出産しても、男性と全く同じように何の躊躇なく働けるという、本来であれば極めて当然の環境を今から考え始めることが必要になってくるのではないでしょうか。

なお、個人的な話ですが、私は子供が2人おり、うち1人が女の子ですので、10年後には、このように女性が男性と全く同じように働ける環境が整備されていればよいなと思っております。