コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

「コーポレートガバナンス改革」の言葉に安易に流されないための視点

先日の日本経済新聞によれば米国の上場企業数が3600社となり、一方、日本の上場企業数は、3700社で米国を上回ったとのことです。

米国では、ピーク時の1990年代には7000社ほどあり、その時に比べて半減したとのことのようです。半減の理由としては、次の2つが一般的に言われています。

1.サーベンス・オクスリー法により上場基準の厳格化
2.アクティビストの活発化に伴う企業のM&Aによる上場企業の未上場化

日本では上場企業数が増加していますが、問題は上場の意義の低い企業が増加している点です。

つまり米国に比べて、PBR(=株式時価総額÷株主資本)が1倍を下回る企業が多いということです。1倍を下回るということは、バランスシート上の株主資本より市場での評価の方が低いということになります。

バランスシートには、企業の研究開発力、人的資本、ブランドなどの無形資産は計上されていませんので、株主資本が時価総額より低いということは、これらの無形資産が市場で評価されていないことになるわけです。

このことは何度かブログで繰り返し書いていますが、基本的に新聞記事を見て思ったことをブログで書いているわけですので、つまり、それだけ同じようなことが繰り返し新聞でも報道されているということです。

新聞記事では、米国の大手年金基金のカルスターズの最高責任者のコメントで「コーポ
レートガバナンスなどの市場の規律は企業価値の向上につながる」との記述がありま
した。

ここで今更ですが、あえて企業価値コーポレートガバナンスの関係について述べたいと思います。

昨今のコーポレートガバナンス改革の狙いは、企業価値の向上にあります。そして、企業価値とは株式時価総額+ネットデットです。

このため、企業価値を高めるということは、株式時価総額を高める、すなわち、株価を高めることになります。株価は需給のバランスですので、株価が高まるということは、企業の将来業績に投資家が期待するということです。

企業の業績が好調であれば、PLの当期純利益が増え、結果株主は、配当というリターンを得ることが出来るのです。このため、あらためてコーポレートガバナンス改革で企業は具体的にどういうガバナンス施策を行えばよいかというと、利益向上に結びつく施策を講じることです。

コーポレートガバナンスというと、最近は取締役会の多様性ということで、女性の取締役を増やすとか、社外取締役の員数を増やすということに目が行きがちですが、それではいけません。

自社の利益アップ、ひいては株価向上に響く施策を講じることがコーポレートガバナンス改革です。取締役会の多様性が叫ばれているのは、そうすることで企業の収益、ひいては利益が向上する可能性があり得るから言われています。

しかし、当たり前ですが、日本国内だけでビジネスしている企業は外国人の取締役などは全くもって不要だし、BtoBのビジネスしている企業には女性取締役がマストかと言うとかなり高い確率でそれも違います。

ついつい分かり易い言葉に流され、形式的な瑣末なことに目を向けるのではなく、自社の市場株価にプラスに働くコーポレートガバナンス改革の施策は何であるかの原点に戻り、自社にとって本当に必要なことを考えることが肝要と思います。