中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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カゴメが個人株主向けに決算説明会を開催

1月27日付の日本経済新聞によれば、カゴメが本年2月中旬に、初めて個人株主向けの決算説明会を開催するとのことです。

通常、上場企業であれば4半期決算の開示後に、年に複数回はアナリストを集めて決算説明会を開催することが多いですが、同様の決算説明会を個人株主相手に行うということで珍しい取り組みかと思います。

カゴメはじめ食品メーカーは、一般消費者向けのビジネスを行っているため、個人の認知度も高く、よって個人株主比率が高いケースも多いと思います。

新聞報道によれば、カゴメは、2001年に株主優待を導入したり、単元株を引き下げたりして、個人株主増加の取り組みを増やしてきたようです。

具体的な個人株主比率は、新聞記事に記載がなかったので、カゴメの2016年12月期の有価証券報告書を見てみると(カゴメは12月期決算のようです)、所有株式数比率で「個人その他」が約66%となっており、たしかに個人株主の比率がかなり大きいと思います。一方、外国人がわずか6%程度となっております。

なお、カゴメは、買収防衛策を導入しており、本年が更新期限のようですが、外国人比率がわずか6%で導入する意味はどこにあるのでしょうか。恐らく、2007年前後に食品業界のブルドックソースが、海外ファンドによる買収ターゲットとされたので、その時期に同じ食品業界であることから導入し、その後は同業他社の状況などを見ながら、継続更新してきたことと思います。しかし、カゴメの国内機投資家比率は不明ですが、現在6%程度の外国人比率しかないのであれば、国内機関投資家からも風当たりの強い買収防衛策は、本年は更新を非継続とすることがあるかも知れません。

話は戻りますが、カゴメに関わらず、日本の上場企業各社は、個人株主を長期の安定株主と位置付けようという動きを検討していると思います。理由は、政策保有株式に対する世間の風当たりが強くなり、政策保有株式の規制の流れにあることです。とすると、自社の株式を政策保有株式として保有してくれていたメインバンクや取引先の自社株式の保有分が市場に流れ、その取得先を個人にしたいという企業も多いと思います。あらたな個人株主を増やすか、または既存の個人株主がさら買い増すということです。

最近は、個人株主も企業の決算数値に関心を持つ方も増えていると思います。そもそも、株式投資というものは、リターンを求めて投資するものですので、対象企業の業績はじめ決算数値については個人株主も精通しているべきですものではありますが。

企業と投資家・株主との対話重視の最近の流れの中で(ちなみに、スチュワードシップコードは機関投資家に適用されますが、個人株主には適用されません。念のため)、株主を自社の事業所に招いて製品・事業所の説明をする株主説明会以外に、アナリストと同様に決算数値を個人株主に説明するという今回のカゴメのような動きをとる上場企業も今後増えてくるように思います。