中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

物言う株主であるオアシス・マネジメントによるGMOインターネットに対する株主提案

この1週間は業務が非常に多忙で、ブログの更新の時間が全くありませんでしたが、少し時間が出来ましたので、久しぶりに更新します。

1月18日付の新聞報道によれば、香港の投資ファンドで、物言う株主であるオアシス・マネジメントがGMOインターネットに対して株主提案を提出し、買収防衛策の廃止等を求めているということのようです。

GMOインターネットは、12月期決算で、3月下旬に定時株主総会が開催されるので、その総会に向けての議案の株主提案ということになります。

オアシスのホームページに行くと、株主提案の詳細が掲載されています。その目的は、当然ですが、自分の提案を他の株主にも示し、他の株主の賛同を得て株主総会で自己の提案内容の可決を狙うことにあります。

ざっと見ると、①買収防衛策の廃止②定款一部変更(買収防衛策の導入方法)③定款一部変更(指名委員会等設置会社制度への移行)④定款一部変更(取締役社長と取締役会議長の兼任禁止)などです。

①と②は矛盾するようにも読めますが、GMOは取締役会決議で発動できる買収防衛策を導入しており、オアシスは、買収防衛策は廃止を求めるが、仮にこの株主提案が否決された場合を想定して、②で買収防衛策を現状のまま継続するとしても、株主総会の決議が必要なスキームにすることを求めているということになります。

オアシスの株主提案に賛同する株主がどの程度いるかですが、外国人株主が30%程度いるようですが、これらは基本的にオアシスの提案に賛同するような感じがします。

では、国内の機関投資家はどうでしょうか。この点は、国内機関投資家保有比率や名称が一切不明のためなんともいえませんが、買収防衛策には、国内機関投資家も厳しく判断する風潮のため、オアシス側に賛同する投資家も多いのではないでしょうか。

ここで最近の機関投資家の議決権行使基準の中で、野村アセットマジメントの昨年11月1日に改定した議決権行使基準が非常に特徴的です。

同社では、株主提案に原則として賛成するケースを具体的に定めており、次のいずれかに該当する「定款変更議案」であり、かつ明確で具体性を備えている場合には、原則「賛成」としています。

・役員選任議案における重要情報開示を求めるもの
・社外取を取締役会議長とすることを求めるもの
・CEOと取締役会議長の兼任禁止を求めるもの
・相談役・顧問等の廃止を求めるもの
役員報酬の個別開示を求めるもの
企業価値向上と持続的成長の観点から問題と見られる保有株式の売却を求めるもの
・政策保有株式に係る議決権行使方針の策定及び開示又は議決権行使結果の開示を求
めるもの など

野村アセットがGMOの株式を保有しているか否かは不明ですが、野村アセットの基準によれば、形式的には野村アセットは賛成するということになります。

今回のオアシスの株主提案は、①を除いて全て定款変更のため、株主総会の特別決議事
項のため、2/3以上の賛成が必要でありハードルは高いですが行方は大変気になるところです。ちなみに株主提案(日本語)を見ると、極めて法的な内容のため、恐らく、オアシスは日本の大手の法律事務所を使っているかと思われます。

なお、最近の報道を見て思うのですが、一般サラリーマンなどの個人株主も少額の投資をして、微々たる配当やキャピタルゲインで一喜一憂しているのではなく、会社法ファイナンスの知織を駆使すれば、企業に対して、株主提案をして他の賛同を得るということも手段としては考えることも出来るのではないでしょうか。

時価総額数十億円程度の企業で、PBRが1倍を下回る、つまり割安株を取得して、企業の財務分析やコーポレート・ガバナンスの分析をして、それを株主提案という形で提案すれば、自己の提案に賛同する株主もおり、キャッシュリッチや同族経営の企業に一定の圧力をかける道も一応あるように思えます。

資金力の乏しい一般の個人も知恵を絞れば、自己の提案を企業に要求できる道があるのではないでしょうか。ただし、自分の勤務先が判明したり、ましてや、投資先企業と自社の勤務先が何らかの取引関係があったなどということが判明した際には、社内で変わった人間扱いされ、最悪、左遷候補になってしまう可能性も十分にあるので、この点は注意が必要です。

自社の勤務先とまずもって全く関係のない業界について時間をかけて調べ、割安株の分析をしてキャッシュリッチの程度、事業分離による不採算の程度を分析すると面白いかも知れません。

私も、株式投資の経験はそこそこあり、一定程度の会社法ファイナンスの知識もあるのですが、自分の投資先企業に対して「物言う株主」としてのアクションなどは、さすがに日中に真面目にサラリーマンをやっている以上、起こすような時間もなく、また起こそうと思ったこともないのですが、自分であれば、この企業に対しては、このような株主提案をするというシミュレーションをして今後、差し障りのない範囲でブログで掲載したいと思います。