先日の新聞報道で対米外国投資規制が強くなるとの記事がありましたので、今回は、米国企業に対する海外企業による直接投資について少し触れてみたいと思います。
米国では、対米外国投資委員会(CFIUS)という委員会があり、国家安全保障・経済安全保障の見地から外国企業による米国企業への投資に対して大統領に勧告し、大統領は拒否する権限を有するというのが規制の内容です。買収金額や取引規模は関係なく、大統領の判断は司法判断に服さないということになっています。
2007年頃にCFIUSの審査対象が拡大され、直近では2017年11月8日に改正案が米国議会に出され、規制の範囲が拡大される方向にあると言われており、現時点の見通しでは、法案が可決される可能性が大きいようです。
この規制は、支配の変更を伴う外国法人による株式取得、事業譲渡等が対象になります。
2013年に審査対象事業として16のセクターが指定されおり、化学製品、商業施設、通信、防衛基盤産業、エネルギー、ヘルスケア・公衆衛生等、輸送システムなどで、これらの産業に属する米国企業に投資やM&Aをする際には、申請が必要になります。
最近の傾向としては、取引を阻止する大統領令の可能性が増大していると言われており、このため、過去に比べてハイペースでの届出が出されており、本年は昨年より100件を越える届出が予想されているようです。
改正案の内容は見ていないのですが、改正案では規制が強化される方向のようなので注視が必要と思われます。
以前にある大手法律事務所のセミナーに参加した時に、対米投資に関しては、通常の投資以外に規制の対象外とは一応なっているグリーンフィールド投資も含めて、日本企業は、早い段階から投資規制に精通した法律事務所を起用するなどして検討することが大事といっていました。
外資による投資規制としては、米国以外には、欧州でも現在規制の強化の動きにあります。
この背景には、中国企業が欧州企業を買収し、技術が中国に流出することを欧州は懸念していることにあり、海外からの投資を規制するCIFUS同様の厳しい法規制が2018年末までに導入されることで検討されているようです。
欧州、米国の規制強化ともに背景は中国企業の潤沢な資金による投資を抑制したいということにあるかと思います。日本でも外為法で外資による日本企業への投資には一応規制はありますが、他国に比べるとだいぶ緩い規制内容になっています。
とすると、米国・欧州への投資が抑制されるとなると、潤沢な資金力を持つ中国企業は今後は日本企業の買収、投資に関心が高まるように思えます。