中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

P&Gの事例に見るアクティビストの提案と個人株主対策を考えることの重要性

11月6日の日本経済新聞の「経営の視点」において、「P&Gに求めたのは」とのタイトルでP&Gに対して米国ファンドが役員受入の提案をしたものの、結果として、本年10月の株主総会でアクティビストの提案が退かれたことについて記事がありました。株主提案が退かれた最大の要因は、個人株主の多さであったと書かれています。P&Gは個人株主比率が40%を超えて米国企業としては極めて高いとのことのようです。要は、アクティビスとが株主提案をしたものの、個人株主はこの提案に賛同しなかったということです。

一方で、日本の株式市場における個人株主比率を見ますと、東証全体に占める個人株主比率は約17%です。

私は以前は個人株主を増やすことに何の意味があるのか良く理解できていませんでしたが、アクティビストの活動について投資銀行と議論をする中で、企業の「準安定株主」として個人株主は大切であると最近考えるようになっていましたが、この記事を見てあたらめてその通りと思いました。

前にもブログで同じようなことを書きましたが、個人株主は機関投資家と異なり、必ずしも短期利益にのみに目を向けているのではなく、ブランドや企業の製品への愛着などが強いとされています。

勿論、BtoBの商売をしている企業については、個人株主は製品を直接手にすることはありませんので、製品の愛着というのは、この場合には必ず当てはまりませんが、要するに、企業のイメージ全体に対する愛着が強いということです。個人株主の企業に対する愛着を高めることが出来れば、アクティビスによる増配要求の株主提案や公開買付提案があっても、個人株主はこれに応じることなく、安定株主とできます。

コーポレートガバナンス改革の中、持合株式である政策保有株式が売却される中、売却された株式の受け入れ先を個人株主とすべく、個人株主施策は企業にとって今後、大変重要になってくると考えます。

では、個人株主を増やすには、どうすればよいでしょうか。これは簡単ですが、株主優待をすることが1つ効果的です。しかし、単にこれだけでは、継続対策としては十分でないと考えます。

一旦、個人株主数を増やした後、事業所見学会等を開催し、経営トップなりマネジメント層が個人株主を事業所に案内して、企業の概況を説明したりすることが大切になってくると考えます。

これらの活動を通じて、個人株主は、自分が企業から大事にされているという印象を持ち、それが長期的に株式保有を継続しようとするインセンティブに繋がるのです。現在個人株主比率が少なく、一方で持合株式比率の高い上場企業は、持合は今後確実に解消される動きにあるので、個人株主を増やし、かつ安定株主とするための対策を真剣に考える必要があるかと思います。