中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

ISSが議決権行使ポリシーの改定案を公表

2017年10月26日にISS議決権行使助言会社)が株主総会での議決権行使ポリシーの改定案を公表しました。

内容は2点で次のとおりです。

1.指名委員会等設置会社および監査委員会設置会社の取締役会構成要件の厳格化
・ 社外取締役(独立性問わない)が1/3未満の場合、経営トップである取締役の選任議案に反対

2.買収防衛策の総継続期間要件の導入
・ 買収防衛策の賛成推奨の基準に、最初に買収防衛策を導入してからの総継続期間が3年以内であることを追加

ISSは、従来より買収防衛策議案には賛成推奨することはなく(ちなみにISS議決権行使助言会社であり、自ら議決権を行使することはなく、機関投資家が議決権を行使するに当たって、企業毎の賛成・反対推奨をする機関です)結論には変化はないのですが、「総継続期間3年」を設定したことで影響が大きいような気がします。

これまでは、一定の要件を充足すれば形式基準はクリアすることが理論上は出来る建付けでしたが、今回の改訂案では、企業は期間最大3年とする1回の導入についての賛成となるということは、これまで継続更新していた企業は、賛成推奨の形式基準をクリアしないことになります。

要するに、買収防衛策は1回だけに限定し導入することは出来るが、1回導入した企業は今後は更新することに反対しますということを言っていることになります。

国内機関投資家は、議決権行使に当たって、必ずしもISSの基準に準拠して判断をするわけではありませんが、昨今、機関投資家の買収防衛策に対する反対が強まる中、このISSの基準は反対方向の更なる追い風になる可能性があります。

とすると日本企業に与える影響がどうかですが、これで買収防衛策を廃止する企業が増えるとアクティビスト(物言う株主)には好都合になります。

また、ここ数年のコーポレートガバナンス改革での政策保有株式の売却の動き、日本の機関投資家の協調行動の容認、スピンオフ税制、2018年度税制改正での経産省の要望している事業ポートフォリオ転換の円滑化措置などを考えると、どう見てもアクティビストには都合の良い環境に向かっているとしか思えません。

買収防衛策は、東芝川崎汽船三陽商会などは廃止した後、アクティビストが株式取得したことを考えると、企業は2007年頃に盛んだった外資の投資会社による日本企業の買収を真剣に対策をする必要があるのではないでしょうか。

とすると当たり前ですが、企業は自社の株主と日々接する機会を増やし、理解して貰うというSR活動が今後重要になってくると思います。