10月5日の日経新聞で「投資ファンド膨張」との記事がありました。低金利が続く中で、年金基金などの機関投資家が高い利回りを当て込んで投資ファンドに資金を提供しているということです。
機関投資家もアセットオーナーから資金を預かり、それを運用して、リターンをあげる必要がありますが、自らの投資では運用リターンが小さいので投資ファンドに預けて運用を任せるということかと思います。
投資ファンドの手法はいわゆるアクティビストのような手法をとることが多く、従来の伝統型のヘッジファンドの手法の運用利回りより投資ファドによる利回りは高いというのが米国での実績になります。
ある公表資料によれば、米国での2013年から2017年までの機関のヘッジファンドの運用利回りは約7%である一方、アクティビストによる運用利回りは約10%ということのようです。
新聞報道によれば、米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は投資ファンドの運用が資産全体の8%を占めており、また、テキサス大学基金はファンドへの投資比率を資産の40%に高めているようです。
この記事が出る前から投資ファンドに年金基金を預けるケースが米国では増えており、米国のイエール大学が大学の年金基金において“Absolute Retrun”(絶対リターン)という投資を開始し、これは所謂アクティビストの投資手法ですが、投資リターンが米国大学基金の運用パフォーマンスを大きく上回るため、これを契機に他大学もYaleを見習えということでAbsolute Returnを開始したということを何かで見たことがあります。テキサス大学もイエール大学の例に倣ったのでしょうか。
また、物言う株主(アクティビスト)である米国のエフィッシモの受託資産の6割以上が北米の年金・大学から長期の資金を受託しているようです。
要はアクティビストファンドのパフォーマンスが好調なのでこれに対する資金の流入が続いているということになります。
日本でもスチュワードシップコードの改訂により、「必要に応じて他の機関投資家で協同で対話を行うことが有益な場合もある」と規定されており、今後は、集団的エンゲージメントが認められたことになります。また、日本では、スピンオフ税制が制定され、今後は、企業再編がし易くなりました。2018年税制改正では、事業ポートフォリオ転換の円滑化措置を経産省は要望しているようです。これは、自社ノンコア事業の分離とセットで、自社コア事業強目的の事業買収を行う場合、分離に当たっての譲渡益課税の繰延措置を認めるものです。経産省は、コングロマリット企業の収益性が低いことを課題として考えており、企業が再編によって利益率の改善が容易に出来るよう税制面の措置を検討しているといったところかと思います、
こういう環境の変化もあり、①年金基金が運用を高い運用利回りが期待できるアクティビストファンド(投資)に任せ、②アクティビストファンドは不採算事業を持つ企業に対して、スピンオフ税制の存在も背景に切離し等の再編による利益率などの改善を提案し、③これに対して、他の機関投資家も巻き込み株主の提案が承認されるケースも今後は増えていく可能性があるかも知れません。