コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

2017年の株主総会を振り返って

 

6月も終わり、多くの3月決算企業の定時株主総会も終わったと思います。

本年の株主総会を振り返りますと、連日、株主総会の議決権行使に関連する記事が日経新聞では報道されていました。本年の総会関係の話題についてまとめると、スチュワードシップ・コードの改訂による機関投資家の「議決権行使結果の個別開示」をキーワードに次のような話題が印象的でした。

1.物言う株主(アクティビスト)による株主提案の増加
2.相談役、顧問制度の廃止
3.買収防衛策議案の反対率の増加

既にブログで色々と個別に書いていることですが、おさらいの意味で簡単に説明したいと思います。

まずは相談役、顧問制度の廃止ですが、これは東芝の例が典型で、社長経験者として退任後も経営に隠然たる力を及ぼしておきながら、報酬や役員の人事権などへの関与が不透明ということによるものです。日清紡ホールディングスJ・フロントリテイリング阪急阪神ホールディングスが本年相談役制度を廃止しているようで、今後、相談役を持ち続ける企業は、その意義、報酬体系、経営への影響などを明確にして公表することが必要になってくるのではないかと思います。

次に買収防衛策ですが、最近は廃止の風潮も高いですが、経営陣の保身と受け取られるケースが増えています。

以前は物言う株主が会社の株式の過半数を取得して経営権を取得するという動きがあり、そういう場合には、企業価値、ひいては既存株主の利益を確保するスキームとして買収防衛策が市場で一応の評価を得ることが出来ました(そうはいっても、2007年頃でも議案の賛成率が80%を超えるような企業は極めて少なかったと思います)。

しかし、最近はそのようなアクティビストは減り、マイノリティーの株式(数パーセント)を取得して「理にかなった」提案を企業に行い、他の一般株主の賛同を得て目的を達成するタイプに変わってきています。

とすると、買収防衛策の当初の導入の意義はなくなり、物言う株主の提案に賛成するか否かは、株主の判断に委ねるべきだということが昨今の批判の背景にあります。また、買収防衛策は15%、20%といった株式を大量に取得する場合に適用されるルールであり、大量の株式を取得されるケースは、現在はあまり想定できないので、そもそも不要ということです。

本年は、大手信託銀行、生保・損保では反対を投じたところがあったとは私は聞いてはいませんが、信託銀行でも来年から相当に厳しい判断をするところも出てくると思われますし、実際にある大手信託銀行からそのように聞いています。

特にROEが低い、収益が悪化しているような企業は経営陣の能力が低いと市場で評価される中、買収防衛策はそのような経営陣を守るためのものと見なされるので、そのような企業は買収防衛策議案については来年も多くの反対が出ると思われます。

企業サイドとしては、ROEの改善策や中期経営計画を説明し、その絡みで買収防衛策の必要性を投資家に納得して貰うなど、今後は、機関投資家との対話により多くの時間を割く必要が生じるものと思われます。

本年は投資家・株主との対話をするという外部環境の大きな変化が現れた株主総会でありましたが、本年の8月頃には議決権の個別開示結果が一斉に開示されます。

企業サイドとしては、開示結果を見て、特に賛成率の低い議案については、9月に入ったら、来年の株主総会を見据えて、機関投資家や株主との積極的な対話を開始する必要が出て来るかと思います。

9月以降に投資家・株主との対話を充実させた企業とそうでない企業とは、来年の株主総会で議案の賛成率に確実に大きな開きが出てくることになると思います。