コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

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株主判明調査とは?

先日のある新聞記事で「株主判明調査」との言葉がありました。時々耳にする方もいるかとは思いまし、IRご担当の方などは十分に理解されていますが、基礎的事項についてポイントを説明したいと思います。

会社の株主は通常は会社の株主名簿に記載されています。つまり名義上の株主=実質株主(真の株主)です。従って当然ですが、一般法人である〇〇株式会社や個人である山田 花子さんなどはそのままの名称で株主名簿に記載されます。

しかし、国内機関投資家や海外機関投資家については、自らが株主名簿上の株主となることは一般に少ないのが現状です。理由は、管理コストの観点などからであると言われています。彼らの保有分は、株主名簿上は〇〇信託銀行(〇〇口)などと記載されています。

つまり、この〇〇信託銀行(〇〇口)が10,000株と株主名簿に記載されている場合、この背後には実質株主である〇〇アセットマネジメント㈱が5,000株、〇〇投資信託㈱が3,000株、〇〇キャピタル㈱が2,000株といった具合に隠れているのです。

では、実質株主が判明しないとどういうことになるのでしょうか。

会社が、定時または臨時の株主総会で会社議案を提案する場合に、機関投資家の賛否の表読みが出来ないことになります。つまり、会社提案議案に対する機関投資家の賛否の考えを聞きたいとしてしても株主名簿を見ただけでは誰が該当する機関投資家であるのか分かりません。

つまり、株主名簿上の名義は〇〇信託銀行(〇〇口)であっても、議決権行使の賛否を指図するのはその背後にいる実質株主であるので、票読み(=議案に賛成・反対のいずれを投じるかの予想を行うこと)が出来ないことになります。票読みが出来ていれば、株主総会の賛成が得られないと予想される場合には議案を提案しませんし、また、機関投資家の賛成するように議案の内容を修正できますが、これらが出来ないことになります。最悪は、議案を株主総会に提案したが、否決されたということになります。

企業は、3月決算企業であれば、通常は3月末と9月末に株主判明調査を行うことが多いと思います。3月末であれば、判明した実質株主である機関投資家を訪問して、株主総会の議案への賛否に意思を確認したりします。ただし、株価が大きく変動したような場合には、期中で株主判明調査を行うようなこともあります。また、臨時株主総会を開催する場合には、期中で株主判明調査を行うこともあるかと思います。

なお、株主判明は企業サイドでは困難ですので、通常は名義書換代理人である信託銀行などを起用することになります。ただし、実質株主の背後には、資金提供者(アセットオーナー)が存在しますが、ここまでは判明しません。

私は社会人になって間もない頃、業務で「株主判明調査」という言葉を聞いたときには、3月末で株主名簿が確定するのに更なる判明とは何を調査するのだろうか、素性の良い株主か悪い株主かを興信所のように調査するものなのだろうと真面目に思っていたことがありました。

今後はスチュワードシップ・コードの影響もあり、企業サイドも、定期的に四半期に1回といった頻度で実質株主を把握して、実質株主との対話を行うような機会も場合によっては増えるのかも知れません。

次回は、実質株主の株主総会での参加の可能性について書いてみたいと思います。