コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

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アクティビストにとってプラス材料となる機関投資家の議決権個別開示


数日前の日経新聞金融庁機関投資家向けの議決権の個別開示の規範を決めたという記事がありました。

議決権行使の個別開示とは、国内機関投資家は株式を保有する会社の株主総会の議案に対して賛否表示をした結果について、会社別及び議案別に賛否の開示しなければならないというものです。

議決権個別開示が企業サイドに及ぼす影響は色々とあるかと思いますが、留意すべき事項の1つは、個別開示がいわゆる株主アクティビストにプラスに働くように思えます。
つまり、アクティビストとは、新聞報道で良く目にするオアシスマネジメントやサードポイント、エフィッシモキャピタルマネジメントなどがこれに該当しますが(勿論これ以外にも沢山存在します)が、要するに、少数の株式を取得して他の一般株主の賛同を得て、役員選解任、増配、事業売却、他社とのアライアンスなどを会社に積極的に提案する株主のことをいいます。最近の例ですと、村上ファンド系のエフィッシモキャピタルマネジメントが東芝の株式を取得したケースが記憶に新しいかと思います。

ここでどうしてプラス材料になるかといいますと、まず株主総会の議案は、通常は取締役会が決定する会社提案がほとんどですが、会社法上は、一定比率の株式を保有する株主も議案を提案できます。株主提案といいます。アクティビストも当然に株主提案を行うことになります。


単純な例をあげますと、株主総会において会社サイドは、議案として「1株5円の配当」を提案するとします。一方で、アクティビストは、「1株10円の配当」を株主提案したととします。これに対して、株主総会において、株主である機関投資家はいずれかの議案に賛成をすることになり、この結果が開示されます。
これまでは、個別開示はなかったので会社との付き合いもあり、会社との関係を考慮して会社提案に賛成票を投じることもあったかも知れません。しかし、今後は個別開示という「見える化」の中、仮に会社提案に賛成した場合、何故少ない配当の議案に賛成票を投じたのかをアセットオーナーに説明することが求められます。

会社が繰越利益準備金及びバランスシートの現預金が十分になり、手元流動性比率(現預金÷月商)も数ヶ月ある、いわゆる「キャッシュ・リッチな企業」であれば、1株10円の配当議案に賛成しないとアセットオーナーは納得ししないと思います。このため、機関投資家は、株主提案に賛成をすることになるのです。このように、個別開示は、理論的な要求を行ってくるアクティビストにとっては追い風となるので、日本企業としては、株価の低い企業などはアクティビストの要求に応じざるを得なくなるケースが今後はこれまで以上に高くなるようにも思えます。

では企業サイドはどうすれば良いかですが、株価を上げるということも言われますが、アクティビストは数パーセントの株式取得にとどまるケースも多いので株価を上げたところで、資金の潤沢なアクティイストの出現防止にはあまり効果はないと思います。また、買収防衛策の導入ということもありますが、通常は発動の条件を15%~20%以上の株式取得をしているケースがほとんどで数パーセントの株式を取得して、会社に要求してくるアクティビストには発動できません。

となると、自社が市場からどのように見えているかをきちんと認識して、市場の考えにそぐわないようであれば訂正する、または市場の評価と異なる事項についてきちんと理論武装をして(キャッシュリッチであればそれは買収や将来の成長投資の資金である等を明確にする)常日頃からしておくことがいざという時の対応として大事になってくるように思います。