コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

必ずしも「買収防衛策=(イコール)機関投資家は反対」ではない

先日の日経新聞によれば、2017年1月~4月の期間に買収防衛策を廃止した企業数は14社になり、大きく増えているということのようです。さらに2日ほど前にも買収防衛策廃が増えているとの記事が日経新聞にまた出ていました。

買収防衛策は以前にブログで詳細に掲載しましたが、会社の発行済株式について大量に取得(10%~20%程度)しようとする買収者に対して、会社に意向表明書の提出を求める等して、企業価値を損なうものでないかどうかを会社が検討し、場合によっては株主総会に諮り株主の判断に委ねるので、それまで買収を開始しないようにというルールをあらかじめ株主総会の決議を経て導入しておき、そのルールに違反した場合には、買収者以外が権利行使できる新株予約権・新株を発行するというものです。この結果、買収者の取得した株式の議決権の比率を希釈化させるというものです。詳しくいいますと、もう少し色々とあるのですが、単純にいうとこういう感じです。

買収防衛策に対する機関投資家の議決権行使に対する見方は厳しくなり、株主総会での会社の提案する買収防衛策議案に対する反対が増えているということのようです。

しかし、私が実際に機関投資家と話をした限りでは、この反対には一定の条件をつける必要があり、この条件を充たして会社の買収防衛策に対しては、現時点では機関投資家は賛成しているという感覚をもっています。

2、3年前からも買収防衛策に反対という機関投資家はおりましたし、当時は賛成していた機関投資家の中には、厳しくなっているところも勿論ありますが、ROEが一定比率あり、業績も悪くない会社であれば、現時点においては2、3年から大きく行使基準は変わらないと思います。

実際に機関投資家20社程度とこういった討議をしてきました私の実務経験に基づきくものです。勿論、全体として厳しくはなってきているので、業績の低迷している企業や特にROEが低い会社には、数年前には賛成したいたのに、現在は反対というのはあります。

また、機関投資家に単に株主総会の招集通知を送付するだけで(買収防衛策の導入・継続は多くの会社が株主総会の普通決議事項にしています)、機関投資家に何ら事前の説明をしないというような会社には、機関投資家は反対を投じるケースも多いのもたしかです。

要するに、機関投資家との対話の機会を増やし、買収防衛策の導入・継続の趣旨を伝え、買収防衛策が経営陣の保身のためのものではないことをきちんと伝えれば、ROEが一定程度あるような会社であれば、買収防衛策議案は賛成となると思います。

どうしても新聞報道だけを見ると、こういった実務の話を飛ばして(記事を書いている新聞記者は、所詮は実務を知らない人ばかりだから仕方ありませんが)、「株主総会で買収防衛策を提案すること=機関投資家は反対」という書きぶりになり、「(機関投資家との対話を行わないで)株主総会で買収防衛策を提案すること=機関投資家は反対」という肝になる括弧の説明が飛んでしまっています。

新聞記事を読んでいて、「肝心のところの説明が抜けているのでは?」と思いました。