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経営企画担当の実務上の視点

東証1部上場企業で経営企画担当のマネージャー職にあるものです。経営・事業企画担当の立場から M&A、事業戦略、IR、戦略法務についてアカデミック+実務の視点からの気付いた点や考えることについて情報発信していきます。

事業提携交渉において「将来のお別れ時」の条件も十分に検討することの重要性

4月に入って以降もほぼ時間がなく、ブログの更新が出来ていませんでしたが、3週間ぶりに更新をします。

東芝について、監査法人を変更するなどの報道や銀行から訴訟が提起されたとの報道が続いていますが、1週間ほど前に、半導体分社にあって米国ウエスタンデジタル社(WD)が合弁契約の違反を東芝に主張しているとの報道がありました。

フラッシュメモリの生産について東芝とWD間で合弁会社保有しており、東芝がこの合弁会社の持分を東芝メモリに移行することが合弁契約違反とのことのようです。

合弁会社とは、2社以上の会社が共同出資して設立する会社ですが、合弁契約においては、当事会社が自己の持分を第三者に売却する際には、合弁相手方の同意を得るとの規定が規定されています。合弁とは相手方を信頼して一緒になって事業をやって行こうというものですから、勝手に自己の知らない第三者に持分が移転することは通常制約されます。

合弁を「結婚」と考えると、夫が、妻に飽きたからと言って夫の地位を妻の知らない赤の他人に勝手に移転できるとなったら妻は困りますよね。それと同じことです。

東芝のケースでは、持分譲渡について、合弁契約上の売却の制約に縛られないという東芝の主張と縛られるというWDの主張に対立が生じているようです。合弁契約の内容は分かりませんので、どちらの言い分が正しいのかなどは推測がつきませんが、ここから思うところは、合弁はじめ事業提携を開始するに当っては、やはり契約で、事業提携の解消、つまり「お別れ」のケースも想定して明確に規定しておくことが重要であると今更ながら思いました。

合弁などの事業提携を開始するときには、当事会社は互いバラ色の前向きのことを考えており、従って、提携解消(「お別れ」)時の解消条件や手当てについてあまり深く考えないことも多いと思います。「お別れ」は将来、少なくても数年以上経過して起こることであり、交渉担当者には案件を纏めるということしか念頭になく、遠い将来に発生するかも知れない後ろ向きのことを考えるインセンティブはないといえます。

従い、最終的には、「お別れ」の際の重要事項は、お決まりの文句である「別途協議して定める」ということで終わることになります。

しかし、問題は数年後または十数年後に「お別れ」を検討する時です。合弁という「結婚」をして事業を共同して進めてみたものの、相手会社と相性があわず合弁や事業提携の解消を検討するという局面です。この場合にはじめて、契約上の「お別れ」に関する規定が大きくクローズアップされることになります。明確に規定をしていない時には、誰が責任をとるのかという議論にも発展します。

しかし、当時担当した事業部門や企画部門の方は、数年も経つと人事異動していることも多いので、責任を負わないことになります。となると、後は人事異動の範疇から外れている法務部の人間が「どうしてこんな契約を作成したんだ」と言われることになります。ちなみに、法務部の社員は、一度法務部に入ったら、他の部署に異動することもなく、ビジネスや計数との縁もないまま法務部という地味な部署でサラリーマン人生を終えるという人もかなり多いと思います。従い、事業部や企画部門の方のように、異動で担当が変わり自分は知らないと言えないことが多いのですが、責任を問われた時は「自分はNGと主張したが、交渉責任者の強い意向でこういう規定にしたのです」という逃げ文句を使います。

法務部は、交渉担当者が決めたことをきれいな表現で契約に書き起こすという文書作成がすべての仕事ですから、もっともな理由になります。

とすると、責任を取る人間はおらず、結局は、その時の担当者が大変な苦労をすることになります。

このことを考えると、交渉を担当する事業部門や企画部門の方は、交渉を開始するときには、交渉成立という強い圧力がかかる中でもきちんと「お別れ」のケースも想定して、提携の段階で決めておくべき重要事項は経営トップにも明確に伝え、交渉合意のセットとなる合意事項とすることが大切かと思います。