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経営企画担当の実務上の視点

東証1部上場企業で経営企画担当のマネージャー職にあるものです。経営・事業企画担当の立場から M&A、事業戦略、IR、戦略法務についてアカデミック+実務の視点からの気付いた点や考えることについて情報発信していきます。

相談役などによる「院制」への批判の理由

3月11日の報道報道にて、経産省有識者検討会が「相談役」について企業が職務内容や就任の経緯などを開示すべきとする報告書を纏めたとの記事がありました。東芝の問題もあり、最近、企業の元経営トップが就任する相談役制度について強く批判される動きにありますが、相談役制度の問題はどこにあるのでしょうか。

相談役とは、企業の社長経験者が、その後、会長になり、会長を退任した後につくポジションかと思います。相談役制度のメリットは、経営の経験を積んだ相談役が現経営陣に対して大所高所からアドバイスをするということにあるかと思います。

しかし、問題とされているのは、取締役の地位にない相談役が現経営陣に対して指導・指示をすることで経営に対する相当程度の影響力を行使しながらも、相談役は会社法上の役員ではないため、責任を問われる立場にないという点です。つまり、取締役・執行役(執行役とは指名委員会等設置会社における執行役であり、いわゆる「擬似役員」である「執行役員」は別概念です。執行役員は、「法的」には一般従業員に毛が生えたような制度です)はその業務執行に対して、対会社及び対第三者に対して会社法上は損害賠償責任を負っています。

しかし、相談役は取締役の地位にない中、現在の経営陣に背後から強い影響を与えながらも会社法上は賠償責任を負う立場ありません。指導といいながら相談役の発言は、外部のコンサルタントとは全く異なり、ある意味で指揮命令の一種ともいえますが、経営に失敗しても責任を問われないという点です。特に取締役会に出席してもいないにもかかわらず、外部の株主から良く分からない点で経営に影響を与えているという点が問題視されているのです。

とすれば、相談役が現経営陣に対して業務執行への強い影響を及ぼす指示をするのであれば、①相談役の選任に株主の意思を反映させるプロセスにする、②相談役もその職務については、会社法上の損害賠償の義務を負わせるという建付けにすれば問題はクリアになるように思われます。

ただし、相談役といっても、企業によっては本当の意味でアドバイスだけしており、そのアドバイスを採用するかどうかは、完全に現経営陣に判断を任せている会社も多く存在すると思います。とすると、相談役というキーワードをもって、全て問題視するのではなくその実態を見る必要があると思いますが、外部かは分かりにくいところではあります。

なお、以上の法的議論は脇に置いて、相談役という「院制」に対する道徳的な批判も議論のベースにはあるように思えます。要は、サラリーマン社長は、オーナー社長とは異なり、一般従業員の延長とも解釈でき、それにも関わらず社長を退任した後、つまり定年を迎えた後も企業に対して影響を行使するという点に関する批判です。

なお、個人的には、オーナー社長経験者の相談役は別に考える必要があると思います。オーナーはサラリーマンとはその根底において企業に対する思い入れは異なり、また、企業は自分の分身ですので退任した後のアドバイスも心から自分の分身である企業の行く末を心配してのことであり、サラリーマン社長とは根本的な感覚が違います。

ちなみに米国の一部の大企業では、サラリーマン社長は退任後は一切経営に口を出さないと本で読んだことがあります。日本と違い報酬の面で、一般従業員の延長ではなく、大成功したオーナー社長と同じように数十億円の巨額の報酬を得て、リタイア後に自分で投資事業を企業したり、別のあたらな活動をするので、経営に口を出すインセンティブや時間もないということのようです。要は興味の対象が会社以外に目が向けられるほどの金を稼げたかどうかがポイントかと思います。
日本でもサラリーマン社長の報酬が、一般従業員の数倍程度の報酬ではなく、大リーグで成功したほんの一握りの日本人のプロ野球選手のように、別世界の住人のような巨額の報酬を得ることが出来れば、職業人生の定年を迎えた後も経営に口出しをする「院制」などという言葉はなくなるのかも知れません。