コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

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持分法適用会社を保有する意義は?(2)(東芝機械の持分譲渡のケースを例に)

前回、持分法適用会社を保有する意義として①対象会社の利益を取り込むこと、②取引上のメリットを享受すること、③対象会社の敵対的買収リスクを低減することのうち、②について思うところを書いてみましたが、今回は③及び①の順番で書いてみたいと思います。

まず③ですが、敵対的買収者とは、対象会社の経営陣の同意を得ないまま上場企業の株式を取得することで対象会社の経営を支配することをいいます。敵対的買収においては、買収者が公開買付(TOB)により投資先会社の株価に20%~30%程度のプレミアムを付けて買収を呈示し、これに納得する既存株主、つまり「折角高い価格で株式を買ってくれるので、売却してキャピタルゲインを得よう」と考える株主は遠慮なく応募をすることになります。

この場合、対象会社を防衛するためには、このTOBに応募する株式数をなるべく少なくする必要があります。このためには対象会社の経営陣は常日頃から会社の魅力を株主に伝えて、理解して貰い長期に亘り株式を保有して貰うことが大切ですが、即効性がありより重要なのは安定株式数が高いことです。

そこで、持分法適用会社として20%の株式を保有する筆頭株主が存在する場合、この株主は安定株主といえるので、企業を防衛する上で大変に意義があります。勿論、残りの80%を取得されてしまったら意味がありませんが、少なくとも確実に20%分は安定株主となるので会社が残りの会社サイドの株主(与党株主とでもいうのでしょうか)を確保する上で有用な施策になります。

ちなみに、東芝機械の例を挙げると、同社のPBR(株価純資産倍率)は割安と言われる1倍を下回っており、また、東芝機械は、買収防衛策を導入しており、2016年の定時株主総会で継続更新しています。
とすると程度の差はあれ買収リスクはあると考えているのであり、その観点からは東芝が20%の株式を保有していることは敵対的買収リスクの低減という点で大事であったといえると思います。

次に①についてですが、これは会計上の話になりますが、持分法適用会社の純利益に持分比率をかけた額は保有する会社にとっては自社の連結PL上に、営業外収益として取り込めます。

つまり、50%以上を保有する連結子会社のように売上高以下の全てのPL項目を取り込むのではないので、対象会社の利益率が自社より小さい場合でも、ひとまず営業損益より後の項目の利益に関して売上高経常利益率売上高当期純利益率は向上することになります(売上高以下のPL項目を取り込むと対象会社の営業利益率が自社より悪い場合には、取り込み後は自社の売上高は増えますが営業利益率は低下することになります)。
また、連結子会社の場合と異なり資産・負債を取り込むこともないので、程度の差はあれROAも改善することになります(分子の利益を「当期純利益」とした場合です)。もっとも、対象会社の当期純利益が利益ではなく「純損失」となっている場合には、逆で利益率やROAは悪化することにはなります。

このように仮に事業上のメリットがない場合でもあっても対象会社の業績が好調である場合には、自社の決算にプラスの影響になります。

東芝機械の2016年3月期の純利益は約48億円でした。とすると東芝は48億円のうち出資分相当額を自社のPLに取り込めることになります。取引上のメリットがない場合であってもこのように利益が出ていれば取り込めるわけですから、意義があるといえますが、巨大企業の東芝によってはこの利益がそれほど影響があるとはいえないとも考えることができると思います。

以上、持分法適用会社を持つことの意義について思うところを書いてみました。