コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

地銀の統合延期の報道に見る企業結合審査の重要性(たかが手続き、されど手続き)

以前より何度か新聞報道されていますが、ふくおかFGと十八銀行の統合が公正取引委員会公取委)の企業結合審査が長引くため、2017年4月に予定していた経営統合を10月に延期するとありましたが、2月20日の新聞報道でも詳細の記事が掲載されていました。国内の地銀同士の統合で何度も新聞報道があるとはホットな話題の1つであるようです。

ポイントを纏めますと、この企業結合の結果、長崎県で貸出シェア70%の首位行が誕生し、これにより金利の競争がなくなり貸出金利の上昇など利用者にしわ寄せがいくことが問題とされているようです。統合により大きなシェアを持つ企業が出現することにより、市場プレーヤー間での競争が働かず、結果、製品またはサービスのユーザーが不利益を被る、つまり安い製品やサービスの供給を受けられなくなるということを規制するのが公取委の企業結合審査の考えです。

公取委の審査では市場をどこに考えるかが1つのポイントになりますが、長崎県を市場として考えているようです。市場が長崎県にとどまらず、九州全域や関西などと広げると市場プレーヤーも増えるので、この2社の統合後のシェアも薄まるのですが、長崎県と限定しますと市場も限定されますので、当然のことなが統合後の市場シェアも高まることになります。公取委の企業結合審査では、まずは広く市場を解釈できるように説得できる材料をそろえること、次に市場が狭く解釈された場合には、その狭い市場でも潜在的なプレイヤーの出現の可能性を主張できるような材料を揃えることなどが重要になってきます。

ちなみに本件は国内のみのドメスティック案件ですが、グローバル企業が統合するときも統合後のシェアが各国において一定の比率に高まる場合には、各国の当局の審査が必要になります。特に中国ではこの審査の時間がかかり、結果として審査が得られない限りは企業結合は実行できず、企業結合が遅れることが良くあります。

企業結合審査は、単なる手続きの話でありますが、あなどると統合が進まず大変なことになります。私が最初に勤務していた化学素材メーカーでは、もう20年近く前になりますが、ある世界の大手化学メーカーと日本、米国はじめ世界各国で合弁会社を設立しようと大きな事業計画を描いていましたが、日本での公取委の審査で市場のシェアが高まるということで統合の認可が下りず、結局グローバルでの統合が白紙になったという経験がありました。

本件とは規模感が違いますが、いずれせよ、このような統合審査に当たっては、十分な経験がある法律事務所を活用して取り組むことが重要です。

弁護士との対応窓口となると通常法務部ですが、私の経験上は、このような案件では法務部はそもそもビジネスが理解できていないことも多いので、法律事務所の折衝窓口にすると単なる伝達係にしかならず、社内の意見も満足に弁護士に伝えることが出来ないことも多いので、事業部門や経営企画部門が中心になって前面に立ち、法律事務所と協働して進めることがより効果的と思います。