コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

基本的な会計・株式指標について①:ROE(株主資本利益率)

最近ROEROA、EPSなどの会計指標、株式指標について、今更ながら日常業務においてあらためて検討する機会が多いこともあり、自分の理解の整理の意味も含めて基本的な考え方について少し書いてみたいと思います。

まずはROEですが、ROE(Return on equity)とは株主資本利益率といい、当期純利益÷純資産で算定されます(単位はパーセント表示)。要は、バランスシート(貸借対照表(BS)のことです)の中で株主に帰属する持分に対して、どの程度の最終利益を会社は当期に稼げたかの指標になります。

純資産の中にある株主資本を分母にすることもあるかも知れませんが、概ねバランスシート上の右下にあります純資産と考えていただければよいかと思います。東証1部上場企業のROEの平均は、2015年度ではたしか約7~8%程度と思いますが、米国の主要企業だと12%程度であると聞いたことがあります。ちなみに、米国のアップル社は37%程度という記事を少し前に新聞で見た記憶があります。企業のステークホールダーの一人である株主に、その投資したお金に対してどの程度の利益を出しているかの目安になります。

企業としてはROEを高める努力をすることが必要になりますが、ではどのように高めればよいのでしょうか。

簡単にいいますと、ROEの計算式を見れば分かるように当期純利益を増やすとともに、純資産を少なくすればよいのです。しかし、当期の純利益は、バランスシートの繰越利益剰余金(Retained earning)に蓄積されるので、当期純利益をそのまま純資産に蓄積した場合には、結局としてROEの数値は高まりません。

当期純利益のうち、株主への配当を増やすことで蓄積される利益剰余金は少なくなるので、ROEは改善することになります。 

つまり、当期純利益が100億円あったとしますと、そのうち20億円を株主に配当金として還元しますと、バランスシート上の繰越利益剰余金に蓄積される金額は80億円(=100億円-20億円)となりROEは向上します。要するにはROEを高めるということは、株主からいえば「たくさん利益を出して株主に還元して下さいね」ということを言っていることになります。

株主への還元としては、配当以外に自己株式の取得の手法が用いられることも良くあります。配当は、例えば「1株当たり3円」といったように決定されますが、今期はたくさん利益が出たので、「1株当たり5円」としたとします。いわゆる増配ですね。この場合、翌期にはあまり利益(純利益)がでなかった場合、「1株当たり3円」に戻すとなると、今度は、いわゆる減配となり非常にマーケットでの評価が悪くなります。このように配当を増やす場合には、企業としてはそれなりの覚悟が必要になるので、アドホックな株主への利益還元策として、増配に代えて自己株式の取得を行うケースもあります。

自己株式の取得で、株主の持っている自社の株式を会社は買取り保有することで、その買取対価を株主は得ることが出来るので、株主としては配当を受け取るのと同様の効果を得ることができます。
そして、会社が取得した自己株式は、バランスシート上の純資産にマイナスで表示されるので純資産を減らすことで、ROEを高めることが出来るのです。

なお、ROEをブレイクダウンすると、デュポンシステムといって次のように分けることができます。
ROE=売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ

売上高純利益率=純利益÷売上高

総資産回転率=売上高÷総資産

財務レバレッジ=総資産÷純資産

従い、企業間のROEを分析するような場合には、単にROEの数値だけを比較するのではなく、上の公式に従いブレイクダウンすると、しかも過去数年分に遡ってグラフやエクセルシートに並べてみると(上場企業であれば法定開示書類や決算説明会資料で決算資料は見れますね)、その企業の総合力をチェックすることもできるかと思います。

次回以降は、ROA総資産利益率)、PBR(株価純資産倍率)、PER(株価収益率)などについて順次書いていきたいと思います。