コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

企業買収防衛策とは③

上場会社に対する買収防衛策としての買収防衛策について書きたいと思います。

買収防衛策の正式名称は会社によって様々ですが、「大量買付行為に対する対抗策」、「株式の大量取得行為に関わる対応方針」などを名称を付けています。買収防衛策は、現在約450社程度の上場企業が導入しており、スキームの細かい内容は会社によって異なるところがありますが、大きく次のようなスキームを各社とっているかと思います。

①会社の株式を市場の内外を問わず15%~20%以上を取得する者(大量買付者)は会社に取得の意向を通知

②①を受けて会社は大量買付者に対して、更なる詳細情報の提供を求める

③会社は、②の情報を踏まえて独立委員会で対応方針を決定し、最終判断を行う取締役会に会社の取るべき方針(以下の④)を勧告する。なお、独立委員会とは、社外取締役監査役や弁護士・大学教授等のみで構成する委員会になります。

④独立委員会の勧告を受けて取締役会は、(a)株主総会の承認を条件に対抗措置を発動するか、(b)株主総会には諮らず、取締役会の決議のみで対抗措置を発動することを決定

⑤対抗措置の発動として、会社は新株を大量化買付者以外に交付することで、大量買付者の株式保有比率を希釈化することで、影響力を弱める

これが大きな流れになりますが、簡単にいいますと、大量買付者の出現前(一般的に「平時」といいます)に買収防衛策を株主総会の承認又は取締役会の決議によりルールとして会社は導入しておくことで、大量買付者が出現した場合に、この者以外に新株を交付することで大量買付者の影響力を低下させるというものです。
買収防衛策を導入していなくても買収者が出現した場合、通常の第三者割当増資として、特定の第三者(ホワイトナイトといいます)に新株を交付することで大量買付者の議決権を希釈化することも一応考えられます。しかし、第三者割当増資の場合には、会社に資金使途があることが要求され、単に大量買付者の影響力を低下させる目的での第三者割当増資はその有効性が裁判で争われたときに有効性が認められない可能性が大きいのです。
一方、買収防衛策がある場合には、買収防衛策に基づく新株発行として認められる余地が大きいというものです。

買収防衛策のメリットとしては、大きく次のようなことも挙げられるかと思います。

まず、市場内買付の場合にも15%~20%を超える場合には、買収防衛策が適用になるという点です。市場内での株式取得は、金融商品取引法による公開買付規制の適用はなく、大量買付者は市場で自由に取得できるのですが、買収防衛策では、市場内の取引であっても大量買付者は買収防衛策を遵守することが要請されます。
次に、会社にとって大量買付者との交渉期間を確保できる点です。公開買付規制ですと、会社は大量買付者との間で十分な交渉を行う時間的余裕はありませんが、買収防衛策がある場合には、一定の交渉を確保することができます。

しかし、買収防衛策は大量買付者が出現した場合には有効な施策となりえますが、会社に対して少数の株式を取得して色々と要求するアクティビストに対しては有効な施策とはなりえません。何故ならば、買収防衛策はあくまで15%~20%以上の株式を取得しようとする大量買付者に適用され、数パーセントの株式取得にとどまる者に対しては買収防衛策は発動できないからです。

そこで、最近の傾向である数パーセントの株式を取得するアクティビストが出現した場合に会社としてはどのように対応すれば良いのかを次回書いてみたいと思います。