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経営企画担当の実務上の視点

東証1部上場企業で経営企画担当のマネージャー職にあるものです。経営・事業企画担当の立場から M&A、事業戦略、IR、戦略法務についてアカデミック+実務の視点からの気付いた点や考えることについて情報発信していきます。

#6 企業買収防衛策とは①

先日、中国企業による欧州企業の買収の話を書きましたが、これに関連して企業買収の防衛策について書きたいと思います。

企業買収とは、読んで字のごとく、企業を買収することです。企業買収には、対象会社の経営陣の同意を得て行う有効的企業買収と経営陣の同意を得ない又は反対する状況の中で買収を行う敵対的買収の2つに分かれます。前者の場合には、対象会社の意思にそった買収であるため問題にならず、後者の敵対的買収に対する企業買収防衛策が議論になります。以下、敵対的買収を前提とします。

企業買収は、上場会社について問題となるケースが多いかと思います。何故上場会社かというと、未上場会社であれば、通常は株式の譲渡は取締役会の承認が必要になるという旨を定款で規定しているので、自由に株式を譲渡・取得することはできないのですが、上場会社の株式は市場で流通しているので誰でも購入できます。
では、上場会社に対する企業買収の防衛の手段としてはどのようなものがあるでしょうか。

まず法による規制として、いわゆる外為法により海外企業による10%以上の日本企業への投資規制があります。海外企業が日本企業の10%以上の株式を取得する場合に、国が規制するというものです。しかし、適用は限定されており、買収先の会社が原子力や航空機産業である場合やこれらの会社に対して部品を供給する会社の場合で、かつ当該買収が日本の安全に影響を及ぼす恐れがある場合に限られます。従い、これに該当しない事業を営む会社の買収であれば規制の対象にならず、また、航空機の部品サプラヤーであってもこの規定が当然に適用になるかは不明のところもあります。この法規制を除くと、他には具体的な規制はないように思えます。

一般的には、買収の前後で当該買収者の保有株式比率を希釈化するため会社法の定めに従い、会社に友好的な第三者に新株を割当増資(第三者割当増資)をすることも防衛手法としては考えられます。しかし、第三者割当増資においては、会社に資金調達の必要性が要求され、買収者の株式保有比率を下げる目的だけの第三者割当増資については、後日、買収者より新株発行の差止めの訴訟や新株発行の無効の訴えが提起された場合には、裁判所の判断により、差止め又は無効とされる可能性が高くなります。

とすると、企業買収防衛の本道としては、株価を上げて時価総額を高めることで買収者に買収に係る金銭負担を増加させ、買収を思いとどまらせる、または当初予定した比率を下回る比率しか買収できないようにすることになります。しかし、そうはいっても株価は企業の業績以外にも市場環境の要素も相俟って決まるものであり、時価総額を上げたいと思っていてもなかなかその通りには行かないものです。

そこで、有効な施策としていわゆる買収防衛策の導入が出てきます。買収防衛策とは、正式には、「株式の大量買付けに関する適正ルール」等の名称を付している会社が多く、買収をしようとする者に会社が対抗するルールを設定し、そのルールの内容及びこれを遵守することを予め公表し、これを遵守しないで買収を進めるようとする者には、新株予約権等を交付することで買収者の株式保有比率を希釈化するスキームです。スキームの狙いとしては、第三者割当増資と同じですが、予め対抗ルールを定めておくということが大きな違いです。

買収防衛策は、2007年頃のスティールパートナーズによる日本企業への投資を契機に導入する企業が増え、現時点でも上場企業約3,500社のうち約450社程度が導入しています。最近廃止する企業も増えてはきてはいますが、依然として会社としては有効な施策かと思います。そこで、次回、買収防衛策のスキーム及びその留意事項について要点を絞って書きたいと思います。