コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

投資先企業の利益剰余金が少ない場合の配当原資の見方(資本剰余金を原資とする配当)

先日、「配当性向だけでなく配当原資を良く理解しましょう」というタイトルの記事を書きましたが、これに関連して、今回は利益剰余金が少ない又はマイナスの場合の剰余金の配当原資について説明したいと思います。

バランスシートを見ると、当期純利益が大赤字で利益剰余金が小さくなっており、投資先企業が無配とした場合、「やむを得ない」と考える個人投資家の方も多いと思います。しかし、配当原資は会社法上、利益剰余金だけではありません。

剰余金の配当は、通常は、バランスシートの利益剰余金から行うのが一般的です。

では、利益剰余金が十分でない企業やマイナスになっている企業は配当できないのでしょうか。例えば、当期純損失が数期連続し、利益剰余金が大きく毀損してしまっている場合です。

この場合であっても資本剰余金からの配当が検討できます。

資本剰余金とは、増資などの際に株主から払い込まれた出資金のうち資本金に組み入れられなかった分をいいます。より正確にいいますと、資本剰余金は、「資本準備金」と「その他資本剰余金」で構成され、資本準備金からは配当できないので、「その他資本剰余金」が配当原資ということになります。

利益剰余金が例えばマイナスの場合であっても安定配当を配当施策として表明している企業は、資本剰余金からの配当を検討することがあります。

資本剰余金を原資とする剰余金の配当を実施している企業をいくつかあげますと、TSIホールディングスフィスコスシローグローバルホールディングスユニデンホールディングスなどがあります。

この中でユニデンの2018年3月期の決算短信でバランスシートの株主資本の内容を見ると次のようになっています。

資本金    18,000百万円
資本剰余金  28,851百万円
利益剰余金      59百万円
自己株式   -7,335百万円
株主資本合計 39,575百万円

これを見ると、利益剰余金が少ないため資本剰余金を配当原資としたことに納得できるかと思います。

ただし、資本剰余金を原資とする配当は、株主から払い込まれた「資本の払い戻し」に当たりますので、通常の利益剰余金を原資とする配当と異なり、税務上は「みなし配当益」のほかに「みなし譲渡益」が生じます

配当に絡む税務は、私は不勉強のところがあるので、あまり詳細は語れませんが、税法上は、「みなし配当」と呼ばれる利益配当の部分と「みなし譲渡」と呼ばれる株式譲渡対価部分に区分され、株主の手続が少々面倒なようです。

個人投資家の方は、投資先企業のバランスシートを見て、利益剰余金が少なくても資本剰余金が一定程度あり、かつ、バランスシートの資産の部(左側です)に十分な現金があるのであれば、「この企業は配当余力があるのではないか」との観点から投資先企業を見る必要があるかと思います。

とは言ってもだまって見ているだけで配当が実施されるものでもありませんので、個人投資家は、「資本剰余金が潤沢にあるのでこれを原資に配当を実施せよ」ということを株主提案することが必要になると思います。

個人投資家は配当性向だけではなく、配当原資を良く理解しましょう

先日の日経新聞で配当性向の記事がありました。日本企業の配当性向は30%台が多く、欧米企業に比べて見劣り、株価を抑える要因になっているということです。

ちなみに、財務改会計の初歩的な用語ですが、配当性向とは、配当支払額÷当期純利益(%)で示されます。記事によると各国の配当性向は、次のとおりです。

日本企業    30%(大手企業中心の500種平均株価の構成銘柄31.1%)
米主要500社 47%
アジア主要企業 36%

日本企業の配当性向は少ないことは以前より言われております。何故30%なのか疑問
ですが、これまでも1つの目安として30%を基準としている企業も非常に多いと思います。個人的な投資先企業のスクリーニングをしていても、配当性向30%で設定している企業が多く見られます。

ここで、個人投資家が理解すべき重要なことは、配当性向30%は何の基準にもならないということです。

前にもブログで書きましたが、配当は、バランスシートの純資産に中にある「その他資本剰余金」と「その他利益剰余金」が原資になり、これとバランスシートの左側の現金及び預金の金額を見ることになります。

配当性向とはその他利益剰余金の中の項目である繰越利益剰余金に積み立てることができる当期の純利益のうち、どの程度が配当支払に当てられているかを示す指標であり、30%を基準にする意味など全くないといってよいと思います。つまり、配当原資とこの原資に見合った現金が潤沢にあれば、配当性向が100%を超えるべきことも当然のことなのです。

個人投資家の方は、自分の投資先企業の財務諸表を見て、配当性向ではなく、バランスシートで配当原資と現金及び預金の数値を見ることをお勧めします。

そうすれば、配当性向30%とあっても、何ら満足すべき数値ではなく、「この企業は株主還元余力がもっとあるではないか」ということも良く理解できます。

 

アクティビストが個人株主の賛同を得るには「良く分かる株主提案」のような小冊子が必要

直近のビジネス誌「日経ビジネス」に「うまい話に乗らない株主」とのタイトルで、本年の株主総会でアクティビストの勝利はわずかであったとの記事が出ていました。

本年6月総会の企業のうち、株主提案は41社あったが、株主提案が可決されたのはわずか2件とのことです。

同記事に議決権行使の分析関係者のコメントとして、「国内機関投資家は会社が課題の改善姿勢を見せている限り会社提案に反対しなかった傾向が強かった」とのことです。株主提案が、ファイナンスをベースにした資本の論理上は正しくても、個人投資家などは、意外に株主提案には賛成を入れていないようです。

アクティビストの提案は、個人投資家の多くから、原理主義者のように見えてしまうとも記事に書いてありました。

これは私の想像ですが、個人株主の多くは高齢者であり、極端な増配による金銭メリットの享受より、少ないながらも配当を従前どおり得られるのであれば、異質なアクティビストの提案よりも会社提案に賛成しようという「情けの論理」が優先していることが理由の1つにあるのではないでしょうか。

たしかに論理的に正しくても、以前の村上ファンド村上世彰氏のように、「めちゃくちゃもうけました」のような発言が高齢者であるごく普通の一般個人投資家に受け入れられないのは納得できるところでもあります。

では、このように資本の倫理は日本の個人投資家の賛同を得がたいということは来年以降も続くのでしょうか。

私は、来年からは状況に変化が出てくるように考えます。金融庁東証が改訂コーポレートガバナンス・コードで、政策保有株式の縮減や事業ポートフォリオの見直しを促進しており、その対応をする企業も今後は相当増えてきます。

政策保有株式の売却により、他社が配当を増やすことになれば、政策保有株式を変わらず持ち続ける企業の個人株主は、違和感を覚えるのではないでしょうか。

A社は、政策保有株式を売却して配当を増やす、また、自己株式の取得による株主還元を進めているのに、B社は、政策保有株式が潤沢にあるにもかかわらず、縮減をしない、または縮減をしてもキャッシュが溜まるだけで、増配・自己株式取得といった株主還元をしないのであれば、「これはおかしいぞ」という具合になるはずです。

株主提案に賛成するには特に難しいものでもなく、会社から株主総会の招集通知に同封されてくる、議決権行使書の「株主提案」の欄に「〇」をつけるだけの話です。

また、今の40代以下の方は、転職経経験者も多く、転職とは縁のない60代、70代以上の終身雇用の世界で生きてきた高齢者と比較して、ドライに物事を判断するような傾向にあるように思えます。

ということを考えると、終身雇用制度が崩れている40代、30代の世代の個人株主は、配当増を提案するアクティビスが出現した場合には、躊躇なくその提案に賛成することになるのではないでしょうか。私などは投資のリターンが増えることにしか関心はないので、何のためらいもなく株主提案に賛同をします。

とは言っても、現時点では、やはりあまり大胆な株主提案が日本企業の株主に受け入れられるにはまだ時間がかかると思いますので、投資ファンドは、ファイナンスコーポレートガバナンスといった専門知識の理論武装に加えて、日本的な慣行を踏まえた「ソフトな提案」が必要になるのでしょう。

個人株主の圧倒的多数は、ROEという言葉をかろうじて知っている程度で、ROEの意味するところ、ファイナンスの基礎、会社法などを知らない方ばかりなので、株主提案の意味を「分かりやすい株主提案」「分かりやすいコーポレートガバナンス」のような小冊子にして、投資先企業の個人株主に郵送して(株主名簿閲覧権を使えば株主は判明します)、まずは理解をしてもらうなどの工夫が必要であるのかも知れません。

上場企業の効果的な個人株主対応

先日の日本経済新聞で「個人 進む二極化」との記事がありました。個人株主数が2017年度に5,000万人を超え5,129万人で過去3年で12%増えた一方で、保有額の大きい高齢者は持株の処分に動いているということです。

私の認識では、日本企業全体(コーポレートジャパンと私は言っています)に占める個人株主は、高齢層が多いように思います(正確なデータを見たわけではないので、間違っているかも知れません)。理由は、個人で株式を購入できるには一定程度の資金が必要なためです。しかし、高齢者は相続を見据えて株式の売却に動いています。上場株は、相続税の評価で優遇措置がないため、売却して現金に代えるという動きがあるということです。

一方、政策保有株式の縮減の動きが今後加速し、政策保有株主は会社に文句を言わない「物言わぬ株主」であったのですが、それに代わる安定株主を企業は今後確保する必要があり、その1つとして個人株主を上場企業各社は今後増やしたいとい切実な課題がありあります。高齢でない個人株主の増加を各社模索することになります。

ただ、所詮は個人であり、かつ、年齢層も若いため、事業で成功したようなごく握り富裕層を除けば、資金力も限度があります。とすると、個人株主を増やそうと企業は頑張っても個人株主の「数」は増えても、肝心の「保有比率」の増加には結びつきにくいという現実があります。わずか1,000株程度の株式を保有する個人ばかりが増えて、この個人が色々と瑣末な提案を会社に主張したりするとその対応が大変になります。このため、企業としては、最低でも1万株程度は購入できる資金力のある個人株主に株式を保有してもらう必要があります。

とすると企業は、自社の個人株主を、保有株式数1万株の個人株主を重要ターゲットで層として、マーケティング手法であるRFM分析でこれを更に層別する必要があると思います。

RFM分析とは、いつ商品を購入したか(Recency:最新購買日)、どの程度の頻度で購入しているか(Frequency:購買頻度)、いくらの購買金額か(Monetary(購買金額))で顧客を層別して、対応をすることであり、これを個人株主に当てはめるのです。

つまり、①1万株をいつ保有したのか、②どの程度の頻度で購入しているのかです。例えば、10年前から保有している個人であれば、会社が特段の措置を行わなくても保有を継続するでしょうが、最近になって購入した株主には、会社の状況をよく知ってもらうために会社として手厚いサービスをするというものです。

既にこういう活動を実践している上場企業も多いのではないかと思いますが、これからはじめて個人株主増加施策を検討する企業は、今後、こういった手法を検討すれば良いかと思います。

本日はこれで終わりますが、最近、自分の株式投資の目的で四季報オンラインを使い、土日に自宅で投資先企業のスクリーニングをやっています。

これまでもブログで個人株主のアクティビズムの可能性等について書いてきましたが、資金力の乏しい個人投資家が投資先企業に株主としての権利行使を行い、これにより、株主価値の向上策を投資先企業に実施させることを前提とした投資先候補企業のスクリーニング方法について、次回または次々回に掲載したいと思います。

書評:「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門」

本日は久しぶりに書籍の紹介をしたいと思います。講談社+α新書から出た「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい- 人生100年時代の個人M&A入門」という本です。

タイトルが面白かったので購入して読んでみました。著者は、元SBIインベスメントなどでの勤務経験のある三戸政和という方です。専門書でもなく、じっくり勉強するような書籍でもないので、2時間半程度でさっと読むことが出来ました。

本の内容は、一言でいうと、大手企業で役員になれないサラリーマン(部長・課長などの一般従業員)が役職定年後に余裕のある暮らしをするには、40代半ば頃から準備をはじめ50代半ば以降に個人M&Aを行い、資本家を目指しなさいというものです。

さらに少しだけ纏めますと次のような内容です。

1.大手企業で役員になれずに50代後半で役職定年を迎えた部長・課長の一般従業員の年収は、役職定年後は400万円から500万円がほとんど。役員になったサラリーマンとの格差が激しい
2.ゆとりある老後を送るには、資本家になる道を探す必要があり。つまり自らが資本家となること
3.資本家となるには、自ら事業を1から立ち上げることもあるが、これは99%借金を背負って失敗するからやめなさい。そもそもサラリーマンは、事業を1から立ち上げた経験もなければ能力もない。事業をゼロから立ち上げて成功する人間は、サラリーマン社長を含めたサラリーマンとは住んでいる世界が違う
4.一方、既に存在する企業を買収することは成功の可能性あり。大手企業のサラリーマンは管理能力もあり、また、大手企業での経験を活かして、対象企業の業績改善を図ることが可能であり、自分の経験を活かすことができる
5.40代半ばを過ぎたら50代後半で個人M&Aを行い、投資家になることを目指すべし。業績改善によりオーナーとして配当収入を得ることができほか、会社の売却によりキャッシュを得ることも出来る

簡単に纏めると上記のような内容かと思います。

先日、役職定年を迎えた大手企業の部長は、役職定年後の年収の低さから、中小企業(上場企業)の社外取締役になる道を探ることをブログで書かせて頂きましたが、同じことが本書のベースにあります。

50代後半以降の残りの人生を低収入のまま元の勤務先で惨めに過ごすよりも、個人M&Aをして資本家になりなさいという趣旨は良く分かります。

しかし、あたり前ですが、会社を買っても、必ずしもうまく経営がいくことがないのも事実です。中小企業のオーナーが高齢で自分の子供が事業を継承しないため廃業する、または、日本M&Aセンターといった国内の未上場専門のM&A仲介会社を使って会社を売却することが多いのはご存知かと思います。

儲かるビジネスであれば、オーナーは息子に継がせるのであり、息子は親父の会社を継ぐより、サラリーマンをやった方が稼げると判断して後をつがないのであり、そのような会社を個人M&Aで買収して資本家となっても大きな収入を得るのは難しいことでしょう。特に300万円程度でオーナーが株式を手放すような会社の営業利益、純利益などはたいしたものではないことは容易に想像できます。

ただ、著者のいうように、大手企業の部長などの一般従業員はそれなりの管理能力や専門知識があり、それをうまく活かせば、大きな収入も得られる可能性もあるのかも知れません。

著者によれば、未上場の中小企業は大手企業の方がびっくりするくらい当たり前のことが出来ていないことが本当に多く、普通に大手企業で業務をしてきたという経験自体が、中小企業では1つの財産になり得るというようなことが書いてありました。

書籍の内容は全く深いものでもなく、じっくり真面目に腰をそえて読むようなものでは全くないのですが、自己啓発の類の書籍として面白いと思いました。

経産省のCGS研究会(第2期)の今後の予定

先日6月22日に経産省のCGS研究会(第2期)の第7回会議が開催されました。

本年夏ごろに改訂CGSガイドライン案が公表されるとの予定ですが、第8回以降の今後の予定も公表されました。

第8回(7月) グループガバナンス「守り」の論点②
第9回(9月) CGSガイドライン改訂案について
第10回(10月) グループガバナンス「攻め」の論点
第11回(11月) 経営幹部の選任(グループにおける指名委員会の役割等)
第12回(12月) 経営陣幹部の報酬設計(グループにおける報酬委員会の役割等)
第13回(1月)その他論点、とりまとめ骨子案
第14回(2月)ガイドライン素案
第15回(3月)ガイドラインとりまとめ

第5回会議から第7回会議までは議事録が公表されていませんので、議論の状況がよくわかっていませんが、第7回では守りのガバナンスが議論されたようです。

なお、5月18日に公表された中間整理によれば、今後の対応の方向性として、社外取締役の再任基準の設定、指名・報酬委員会活用のベストプラクティスの整理、経営幹部の報酬方針や設計の在り方のベストプラクティスの整理、業務執行者以外が取締役会議長を務めることが望ましい場合の整理とされています。

これらが9月5日公表予定のCGSガイドライン改訂案に盛り込まれることと思われます。

6月1日に公表されたコーポレートガバナンス・コードの対応が本年12月末までとされており、このCGS研究会(第2期)のガイドラインとりまとめが来年3月とされています。また、買収防衛策の廃止の動きが加速する中、物言う株主の動きが益々活発化し、日本市場でも市民権を得る方向にも向かっております。

企業各社は通常は年明けから総会準備をはじめると思いますが、先日の日本経済新聞の記事では、総会修了後には来年の総会の準備を開始する企業が今後増えるであろうと書かれておりました。今年の夏休み明けには、コーポレートガバナンス改革の関連で来年の総会準備を開始する企業が増えることと思います。

アルパインに対する香港の投資ファンドのオアシスマネジメントの株主提案が否決(前回の続き)

アルパインに対する香港の投資ファンドのオアシスマネジメントの株主提案が否決されたことは前回書きましたが、株主提案の賛成率が30%以下であったとの日経新聞の記事がありました。

この記事を受けて、EDINETを見たところ、アルパイン株主総会の議決権行使率の結果報告に関する臨時報告書を出しており、1株325円とする大幅増配の株主提案の賛成
率は29%でした。

アルパインの2018年3月末における外国人株主比率は約40%で、ISSも株主提案に対して賛成推奨レポートを出しているので、少なくとも30%を超える外国人の賛成は得られたのではないかと以前にブログで書きましたが、反対した外国人投資家もかなりいたようです。

これは推測ですが、アルパインとしては会社提案議案の賛同を得るべく、外国人投資とのエンゲージメントを積極的に行ったのではないでしょうか。

本年の株主総会における株主提案は大変多いですが、株主提案が可決されたという事例はやはりまだまだ少ない模様です。ただし、株主提案の増加が今後益々高まることは確実で、上場企業は今回のアルパインのようなケースが自社にも起こり得るということを認識することが必要かも知れません。

 

企業価値算定における余剰現預金の考え方(ブログに頂いたコメントの回答)

本日は年休取得で休みのため日中にブログを更新します。

先日、企業価値評価における現預金の算出基準についてコメント質問を頂きました。ありがとうございました。

ただ、この「はてなブログ」での返信の方法が未だによく分かりませんでしたので、コメントのご質問に対する返信という形でここで回答したいと思います。

DCF法で算出する場合には、将来の税引後フリーキャッシュフローをベースに算出した事業価値に非事業用資産として、現預金等を足すことになります。改訂コーポレートガバナンス・コードでは、政策保有株式の縮減が求められているので、投資有価証券もこれに加えることになると思います。念のため次の式になります。

企業価値=事業価値+非事業用資産(余剰現預金+投資有価証券)
株式価値=企業価値-有利子負債

この場合の余剰現預金をどう考えるかということですが、必ずしも確立された考えはないように思いますが、売上高の0.5%~2%を超える現金を余剰現預金と見なすという経験則があるといわれております(「企業価値評価実践編」(鈴木)より)。

また、「マッキンゼー&カンパニーでは、売上高の2%を上回る現金は全て余剰資金と見なすこもあり得るとされている」(「企業価値評価の実務」(プルータスコンサルティング)と書籍などには書かれています。

個人的には、余剰現預金は、個別企業によって捉え方は異なると思いますが、ざっくりとした簡易的な企業価値算定においては、売上高の2%を超える現預金を余剰現預金と見なすことでよいように考えております。

ブログの掲載記事につきましては、過去にもいくつか質問を頂いたことがあるのですが、このブログでの返信方法がよく分からず回答できておりませんでしたが、ブログに記事として書けばよいということに最近気付きましたので、頂いたコメントの回答は今後はブログになるべく掲載していきたいと思います。

何かあれば、遠慮なくご意見を頂ければと思います。

HOYAが手元資金の上限を引き下げ

6月21日の日本経済新聞で、HOYAが手元資金の保有上限を引き下げるとの記事がありました。

従来は、現金及び現金同等物の上限目途が3,000億円程度であったところ、今後は2,000億円程度と約1,000億円程度引き下げるということです。

HOYAの2018年3月期の連結キャッシュフロー計算書における現金及び現金同等物は2,458億円となっています。一方、連結売上高は、5,412億円です。キャッシュの余力を見る指標としては、手元流動性比率があります。

これはキャッシュ÷月商で算出され、月商の何倍程度のキャッシュがあるかを判断する指標です。HOYAの手元流動性比率は、2018年3月末時点では、次のとおりになります。

手元流動性比率 = 2,458億円÷(5,412億円÷12)= 約 5.4倍

つまり、月商の約5倍のキャッシュがあることになります。

これが多いか少ないかですが、企業の設備投資・M&A投資の計画状況や業種にもよりますが、一般的に考えると5倍は多いと思います。

なお、HOYAの有利子負債を考慮していないので、有利子負債を考慮したネットキャッシュベースではもう少し下がるのかも知れません。

ちなみに、JALは2018年3月期の決算説明会資料において、手元流動性比率として連結売上高の約2.6ヵ月とすると公表しております。

政策保有株式の縮減が今後求められる中、投資有価証券も現金と見なされる傾向にあります。とすると、バランスシート上の現金及び預金がそれほど多くなくとも、投資有価証券もキャッシュとしてカウントした場合、ネツトキャッシュベースでの手元流動性比率が高い企業は、キャッシュの使途について投資家に明確に説明する必要が出てくるかと思います。

M&Aのための投資資金である」ということであれば、どの分野のM&Aでどういう体制で、いつの時期を目安に行うものかといった説明を今後は投資家から求められるのかも知れません。

アルパインに対するオアシスマネジメントによる大幅増配の株主提案が否決

カーナビメーカーであるアルパインに香港の投資ファンドであるオアシスマネジメントが大幅な増配の株主提案をし、これに対して議決権行使助言会社であるISSが賛成推奨をしたことは前回書きましたが、6月21日にアルパインの定時株主総会が開催されました。

結果、株主総会においてオアシスの株主提案は全て否決され、会社提案が可決されたようです。

アルパインの2018年3月期の有価証券報告書も同日提出されており、同社の株主構成からこの結果について、少し触れてみたいと思います。

アルパイン有価証券報告書に記載の2018年3月末現在の株主構成は次のとおりです。

その他法人    41.79%
外国人法人    40.79%
金融機関     11.42%
個人その他     4.96%
金融商品取引業者  1.04%

ISSの議決権行使基準に賛成するのは外国人投資家が考えられますので、40.79%の多くは株主提案に賛成したのではないかと考えます(ちなみに新聞報道によればオアシスはアルパインの株式を9%程度保有するようですので、この40.79%にはオアシスの保有分も入るかと思います)。

もっとも、必ずしも全ての外国人投資家が賛成するわけではなく、アルパインが海外機関投資家に個別に面談をして、会社の方針を説明し、それに納得をしたような場合には、会社提案に賛同する外国人投資家もいるのかも知れません。

仮に40.79%が全てが賛成にまわるとすると、オアシスは残り約9%の賛成票を集めれば株主提案の賛成を得られたことになりますが、これに失敗したということになります。

1株当たり325円の配当は個人株主にとっては非常に嬉しい提案ですが、アルパインの個人株主4.95%には、アルパインの元役員などの会社関係者も入っているのではと思われ、とするとやはり残り9%の賛成票の獲得は、困難であったのでしょう。金融機関が11.42%とありますが、取引先銀行と国内機関投資家がどの程度の保有比率であるのか、これは開示されていませんが、興味のあるところです。

株主総会の決議結果については、数日後に臨時報告書が開示され、それに会社提案と株主提案の賛成率が開示されます。

それを見た上で、引き続き気付いた点があればコメントをしたいと思います。

役職定年を迎えた一般従業員は「野に出よ」

先日の日本経済新聞で「相談役・顧問は『野に出よ』」との記事がありました。

読者の関心を引く面白いタイトルであると関心しました。相談役・顧問制度自体は、弊害ではなく有用な場合もあるのですが、東芝のケースから弊害の制度という方向にどうも流れが向かっており、その中での記事になります。特に海外機関投資家からは相談役・顧問は理解しがたい制度のようです。

社外取締役の員数増加、役割強化の動きの中、企業が元取締役経験者を社内で抱え込むのではなく、社外に出て他社の社外取締役に就任することが日本経済のコーポレートガバナンス改革に有用との趣旨の新聞記事でした。

しかし、よく考えると、私は、相談役・顧問は「野に出よ」ではなく、役職定年を迎えた部長クラスの一般従業員が他社の社外取締役として「野に出る」ことが日本の市場活性化においては必要ではないかと思います。

ほとんどの企業では、部長含む一般社員には役職定年制度があり、取締役になれない圧倒的大多数の社員は、50代半ば又は後半で役職がなくなり、年収も新入社員と同じ程度まで下がるかと思います。

その後も嘱託・契約社員として勤務先と有期雇用契約を結び、65歳程度まで働くことにはなりますが、社内では組織上の指揮命令権はゼロになり、まわりからは扱いにくい平社員として見られ、当然仕事に対するインセンティブも相当に低下します。

で、あれば、例えば、仮に時価総額が5000億円規模の企業の元部長であれば、シニア社員として自社にとどまるのではなく、時価総額が10分の1程度の500億円規模の上場企業に社外取締役として就任することが本当は重要なのではないかと思います。

年代も50代後半であれば、体力・知力ともに十分あり、大企業の部長のポジションにあり、かつ専門性の高い業務における得意分野が2、3本あれば、中堅規模の上場企業において、社外取締役に就任するニーズは強いのではないでしょうか。

勿論、部長といっても、部下に業務を任せて管理するといった本当の部長ではなく、自ら手を動かし、専門性を持つ「作業担当部長」であることが必要ではあります。中堅規模クラスの上場企業には、こういう大企業の元部長クラスが社外取締役となることが実務上は一番望ましいように思えます。

とすれば、40代半ばの大手企業のサラリーマンの残りのサラリーマン人生の過ごし方ですが、自分が取締役候補ではないと自覚した時点で、担当部長を目指し、実務作業者としてその道に精通するという姿勢で残りの10年の自社でのサラリーマン生活を考えるのが大切になってくるかと思います。

なお、製品知識・広報知織とか、社内の従業員の名前などのその会社でしか通用しないことは他社では価値がなく、どの上場企業でも通用する汎用性のある業務、例えばスタッフ部門の業務で言えば、経理・財務であったり、コーポレートガバナンス投資ファンドなどのアクティビスト対応、人事労務対応など上場企業であればどこにいっても必ず必要になる業務のスキルなどが大事になります。

本日は、新聞のタイトルから横道にそれ雑談のような内容になりましたが、思うところを書いてみました。

経産省が上場企業に対して社外取締役の再任基準を明示する方向

6月17日(日)の日経新聞で、経産省が上場企業に対して社外取締役の再任基準を明示するよう求めるとの記事がありました。

今夏に定める予定のコーポレートガバナンスシステムガイドラインの改訂版(改訂CGSガイドライン)に規定するとのことです。改訂CGSガイドラインについては、先般、中間整理が出されており、以前にブログでも紹介しましたが、中間整理で社外取締役の再任基準は掲載されていましたので、このタイミングであらためて社外取締役の再任基準を記事にする背景は良く分からないところではあります。

取締役の選任については、招集通知に各取締役候補者の選定理由が記載されます。これは社内取締役、社外取締役のいずれを問いません。これが1つの選任理由になりますが、経産省は、これは選任理由であり、より明確な再任基準を策定せよということです。たしかに、選任理由は、多くの企業は一般的な内容しか書いておらず、どうして選定したのは極めて抽象的という場合が多いかとは思います。

社外取締役の解任基準を設ける背景としては、社外取締役が十分な機能を果たしていないという背景があります。企業によっては、社外取締役が十分な機能を果たしているというところも勿論あると思います。しかし、取締役会への出席率が低い、選任したものの、その方の能力が乏しいのか、会社に遠慮しているのかは知りませんが、社外取締役が積極的に提案や経営への関与が不十分なケースが多いというのが経産省の認識のようです。

社外取締役の再任から少し話は変わりますが、改訂コーポレートガバナンス・コードでは、経営陣幹部解任の要件も開示することとされております。

現時点では改訂コードを踏まえたCG報告書を提出している企業は少ないのですが、アサヒグループHDが次のような開示を行っています。

代表取締役などの業務執行取締役(CEO以下の経営陣)について、その業績につき毎年定期的に指名委員会にて審議し、取締役会にて定めた解任基準に該当するとの審議結果であった場合は、指名委員会における審議結果を取締役会にて検証の上、基準に該当する場合は、取締役候補者として指名せず、また、代表取締役・業務執行取締役(CEO以下の経営陣)としての役職を解任します。」

解任基準自体は開示していませんが、解任基準を取締役会で規定しているようです。

会社法上は、役員は正当な事由なく解任された場合には会社に損害賠償請求が出来るとされており、正当な事由には、法令定款違反行為が該当します。しかし、これのみが解任基準とするとわざわざ規定する必要はないということになります。

アサヒグループHDの開示する解任基準とは、「再任しない基準」を意味するのかは分かりません。いずれにせよ各社とも他社の開示例を見て、今後、詳細を検討することになると思います。

改訂コーポレートガバナンス・コードを反映したコーポレートガバナンス報告書の提出

6月株主総会シーズンが近づき、先日の日経新聞企業統治指針として改訂コーポレートガバナンス・コード(改訂CGコード)に関する記事が掲載されていました。

これまで改訂CGコードについては、何度か書いているので、改訂CGコードの詳細は今回は書きませんが、改訂CGコードへの対応は本年12月末までとされている中、6月1日以降改訂CGコードを踏まえたCG報告書を提出している会社も数社あるようですので、その簡単な紹介と今後企業が開示に当たって留意すべき事項について書きたいと思いま
す。

6月1日以降にCG報告書を提出している会社は、アサヒグループHD、セブン&アイカゴメ、Jフロントリテイリングなど1部上場企業では数社のようです。

政策保有株式については、カゴメが次のような内容を開示しています。

「当社は、直近事業年度末の状況に照らし、保有の意義が希薄と考えられる政策保有株式については、できる限り速やかに処分・縮減していく基本方針のもと、毎年、取締役会で個別の政策保有株式について、政策保有の意義、経済合理性等を検証し、保有継続の可否および保有株式数を見直します。なお、経済合理性の検証の際は、直近事業年度末における各政策保有株式の金額を基準として、これに対する、発行会社が同事業年度において当社利益に寄与した金額の割合を算出し、その割合が当社の単体5年平均ROAの概ね2倍を下回る場合には、売却検討対象とします。また、簿価から30%以上時価下落した銘柄及び、当社との年間取引高が1億円未満である銘柄についても、売却検討対象とします。その上で、得意先企業のうちこれらの基準のいずれかに抵触した銘柄については、毎年、取締役会で売却の是否に関する審議を行い、売却する銘柄を決定します。見直しの結果、2018年度に一部保有株式を売却いたしました。」

縮減を基本方針として、保有の合理性の検証方法まで具体的に記載しています。

政策保有株式については、大手企業では、これまでも保有検証を実施している企業も多いと思いますが、ここまで踏み込んだ開示はあまり見たことはありません。カゴメと同じレベルで他社も今後開示するか分かりません。

ただし、留意すべきは改訂CGコードを公表した際に東証パブコメに対する見解を公表しており、その中で、次のことが書かれています。

・「検証の結果、全ての銘柄の保有が適当と認められた」といった、一般的・抽象的
な開示ではなく、取締役会における検証に際し、コードの趣旨を踏まえ、例えば、次
のような具体的開示が行われることが期待される
-  保有の適否を検証する上で、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを含め、どのような点に着眼し、どのような基準を設定したか
-  設定した基準を踏まえ、どのような内容の議論を経て個別銘柄の保有の適否を検証したか
-  議論の結果、保有の適否について、どのような結論が得られたか

これを踏まえますと、カゴメの開示は決して詳細なものでもなく、東証の求める内容であるとも言えます。

とすると、次に企業が考えるべきことは、ここまで開示するとして、今、実施している保有の合理性の検証が果たして十分なものであるかの確認が必要になるような気がいたします。他社がどういう検証をしているのか詳細は分からないと思いますが、自社のこれまでの検証方法が、資本市場関係者に対して合理的な検証であると言えるのかの再確認が必要になるのではないでしょうか。

議決権行使助言会社ISSがオアシスのアルパインに対する大幅な増配要求に対して賛成を推奨

前回、議決権行使助言会社ISSについて書きましたが、先日の日本経済新聞でカーナビなどの自動車部品メーカーであるアルパインに対してアクティビストであるオアシスマネジメントが1株当たり325円の期末配当の株主提案をして(会社提案は1株当たり15円)、これに対してISSが賛成推奨したとの報道がありました。

アルパインには、親会社であるアルプス電気との経営統合を巡って、オアシスが色々と提案をしていることは新聞報道で周知の方も多いと思います。

今回の記事を見て、アルパインの2018年3月期の決算短信で財務状況を見てみました。大幅な増配を要求しているわけですから、アルパインのキャッシュがどの程度あるのかとの観点からの分析になります。以下は、2018年3月期のアルパイン決算短信の連結バランスシートから見た数値になります

現金及び預金 538億円
投資有価証券 285億円
有利子負債  0
利益剰余金  950億円
株主資本比率 65.8%

ネットキャッシュ(現金及び預金+投資有価証券-有利子負債)は823億円で、時価総額、総資産に占める比率は次のとおりとなります。なお、投資有価証券はコーポレートガバナンス・コードでは縮減が求められており、上場企業各社に対するアクティビストの株主提案でも投資有価証券は売却による現金化をすることを提案していることを考え現金及び預金と同じものとみなします。

ネットキャッシュ  / 時価総額 約 55%(ベース 時価総額1,500億円)
ネットキャッシュ  / 総資産  約 37%(ベース 総資産  2,190億円)
手元流動性比率       約 4ヶ月(ネットキャッシュ ÷ 月商)

これを見ると、キャッシュが潤沢であることはわかります。それだけ財務状況が良いという証であります。

オアシスは1株当たり325円の期末配当を要求しておりますが、これによると配当額は次のとおりとなります。

期末配当金額=325円 × 発行済株式数 68,952,260(自己株式除く)=約224億円

2918年3月期の純利益が93億円ですので、配当性向は約240%となります。会社提案は期末配当が1株当たり15円で、これに発行済株式数を乗じると総額約10億円ですので、約214億円増となります。

前述のとおり、ネットキャッシュも潤沢であることから、224億円の配当をしても十分なキャッシュがありアルパインの財務に与える影響は低いように思えます。1株当たり325円の増配にISSが同意したという記事だけを読むと少々驚きますが、あらためて財務諸表を読むと、財務に大きな影響はなくISSは論理的に当然の判断をしたと見ることもできるのではないでしょうか。

次にこれに賛同する株主の可能性ですが、アルパインの2018年3月末の株主構成は公表されていませんので、2017年3月期の有価証券報告書を見ると、次のとおりです。

その他法人41.85%、外国人株主 37.99%、金融機関13.43%、個人その他 5.76%

その他法人は親会社であるアルプス電気かと思います。

ISSが賛成を推奨するということは、多くの海外機関投資家ISSの推奨を参考にするので、外国人株主の多くは株主提案に賛同する可能性が高いです。総会の決議を通すための過半数の賛同を得るには、個人株主や国内機関投家の賛同がどこまで得られるかがポイントかと思います。

ところで、このISSの賛成推奨に対して、6月8日にアルパインが反論を東証に開示しています。

要約しますと、事業運営はグローバル展開であり、実際の現預金管理は多数拠点で複雑に管理されていること、投資有価証券は中長期的に円滑な取引関係を維持するために必要な戦略投資であり、これらのアルパイン固有の資金需要がISSの判断には考慮されておらず、追加配当を行った場合には事業運営に著しい制約を与えるという反論になります。

しかし、個人的な印象としては、表現が抽象的かつ定性的な域を出ず、反論としては非常に弱い印象を受けます。アルパインのバランスシートを見れば、財務・会計に相当疎い人でない限り、キャッシュリッチであることが容易に分かります。とすると、株主還元をせずにキャッシュを保有する理由の正当性を投資家に説明するわけですから、設備投資やM&Aなどの成長投資にいくら使うとかの具体的な数値をあげないと、説得性の乏しい反論であるような印象を持ちました。

経済合理性のある株主提案は益々増えております。本件がどのように進んでいくか、今後、少し関心をもって見ていきたいと思います。

ISSの議決権賛否推奨レポートに対する企業側の反論

議決権行使助言会社である米国ISSの議決権行使の賛否推奨レポートに対して、ツガミ(東証1部)とインフォコム東証JQS)が反論を公表しました。
ISS議決権行使助言会社の大手で、上場企業の株主総会議案に対して賛否を推奨する会社です。

ツガミ、インフォコムともに自社の株主総会社外取締役候補者に独立性がないとISSが判断していることに対して、東証の独立役員の基準は充たしており、ISSのいう独立性がないという判断は正しくないとして反論しています。

ISSの独立性の判断基準は東証より厳しいのは周知の事実ですが、そのような中、あえて反論を掲載する意義ですが、反論をすることで自社の会社提案議案に対する機関投資家の反対率が下がる可能性が高いということにあります。

ISSの反対推奨に対する反論の論拠としては、ISSの事実認定に誤りがあること、ISSの判断基準に合理性がないことが考えられます。後者は、合理性の判断は主観が入るので何が正しいかの判断は難しいところあるのですが、前者の事実誤認であれば、正しいか誤りかは明確になるのでISSの判断は覆るはずと考えられますが、実際には、ISSが企業の反論を受けて判断を覆したケースはないようです。

しかし、企業としては、適切な反論をしておけば、機関投資家はその反論を踏まえて判断をしますので、企業の反論に理由があると考えれば、会社提案に賛成する、つまり反対率が低下するということになるかと思います。

ISS株主総会シーズンに膨大な数の企業の総会議案を招集通知を見て判断するのですから、機械的に判断することが多く、細かいところまで目が行き届かないところも当然あるかと思います。

このため企業としては、反論するという事後的対応するよりも、まずはISSにしっかりと認識して頂きたい事項は、招集通知の各議案にハイライトするなど明確に記載をすることが肝要かと思います。