コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

オリンパスが「物言う株主」(アクティビスト)を取締役に招く

1月12日の日本経済新聞オリンパス物言う株主を取締役に招くという記事がありました。物言う株主として著名な投資ファンドであるバリューアクトの外国人のようです。バリューアクトは、オリンパスの株式を昨年より約5%保有しております。

 新聞報道によれば、オリンパスは指名委員会等設置会社にも移行するようですが、今回の詳細は、オリンパスが1月11日に公表した「Transform Olympus」に記載されており、骨子見出しをあげますと次のとおりです。

 ①グローバル・グループ一体経営体制へ転換 ②グローバ人事制度への転換 ③医療事業の再編成 ④コスト削減及び資本効率改善への取組 ⑤取締役会のダイバーシティ化を伴う指名委員会等設置会社への移行

各事項をブレイクダウンした内容が資料には記載されています。

新聞報道によれば、「目指す方向性が一致していたので、一緒にやることを決めた」とあり、会社側から積極的に受入れたとのことです。物言う株主は、会社側と対峙することが常で、物言う株主の提案する取締役選任の株主提案をして可決されたようなケースを除いて、会社側が積極的に物言う株主の提案、特に役員提案を受け入れるケースはこれまで聞いたことはありません。

オリンパスのケースも内情は報道されていませんが、報道どおり積極的にすんなりと決まったのかどうかは知るよしはありませんが(物言う株主をボードメンバーに受入れることは、企業の経営陣には、普通に考える限り、相当な抵抗があると思います)、いずれにせよ、これによりオリンパス企業価値が向上し、株価向上、配当増となるような場合、バリューアクトの行動について、オリンパスの株主の賛同を得ることが十分にあり得ると思います。

 また、本日の日本経済新聞では、投資ファンド保有銘柄には株主総還元(配当+自己株式取得)のアップが期待できることから、株価上昇が期待されるとありました。

オリンパスが指名委員会等設置会社に移行するというのは、取締役会の機能を戦略の実行ではなく、戦略の策定・執行の監督機能に重きを置く体制にすることになります。バリューアクトは、あくまでファンドであり、ファイナンスのプロであって事業のプロではないと思いますので、監督機能にフォーカスするという機関設計にするということかと思います。

 昨年の日本企業の株主総会では、投資ファンドから多くの株主提案がありましたが、ほとんどのケースでは株主提案に対する株主の賛同は得られませんでした。

資本の論理の観点では正しくても、提案内容が会社提案議案と真っ向から対立するような過激な内容も大きく、機関投資家も「そこまでしなくても・・」ということで、株主提案が否決されたことと私は理解しています。

しかし、今回のオリンパスのケースでアクティビストである物言う株主が市民権を得れば、株主にとってアクティビストに対する期待は高まる流れになるかと思いますので、今後のオリンパスの動向は、株主や機関投資家のアクティビストに対する見方に大きな変化が生じる1つの変化点になるか否か注視する必要があると考えます。

 

機関投資家と上場企業のエンゲージメントの意義と課題

本日は上場企業と機関投資家との対話(エンゲージメント)について書いてみたいと思います。

昨年の12月から本年1月、2月にかけて機関投資家とのエンゲージメントを行う上場企業も多いかと思います。決算発表後にIR部門が個別機関投資家とスモールミーティングをすることは多いと思いますが、エンゲージメントは企業との決算の対話とは大きく異なります。四半期決算や年度決算の対話をするのではなく、企業の強み・弱み、事業戦略、コーポレートガバナンスなど多岐に亘る事項について対話をすることがエンゲージメントになります。

では、エンゲージメントの目的は何でしょうか?

大きくは、中長期的な目線の投資家に自社を理解して貰うことと、株主資本コストを下げることにあるように思えます。中長期的な投資の観点からは、短期間での企業業績だけでなく、企業の持つ本来の力、コーポレートガバナンス等を対話で確認して機関投資家に理解して貰うことになります。

もう1つは、株主資本コストの低減ですが、株主資本コストとは、株主が投資先企業に要求するリターンですが、これはハイリスク・ハイリターンです。つまり企業の将来キャッシュフローのブレの予見可能性が低い場合には、投資家は高いリターンを求めるということです。つまり要求するROEが高くなるということです。

これを下げるには、企業の①成長性、②収益性、③予見可能性の向上、④経営力について投資家に理解いただく必要があります(これは金融庁のフォローアップ会議の委員である、フィデリティ投信の三瓶氏がある書籍で言っていました)。株主資本コストはCAPMで算出されますが、実は機関投資家によって考えるコストは色々あります。そのため、企業はエンゲージメントを行うことで株主資本コストの低減に取り組むことになります。

ただ、これは私の個人的な意見ですが、投資家サイドもエンゲージメントにまだ慣れておらず、企業との1時間の面談で質の高い討議の出来る機関投資家はまだそれほど多くはないように思います。

特にパッシブ運用が中心の投資家は、決算数値以外の個々の企業を深く分析することにあまりなれていないように思えます。決算数値に関する決算説明会やスモールミーティングでの対話は投資家・上場企業サイドともに十分に慣れていますが、非財務情報のエンゲージメントは、まだまだ互いに手探りのような印象を持ちます。

いずれにせよ、何を対話すべきか悩むよりも、実質株主判明調査で明確になった9月末現在の株主に電話・メールによる面談のアポを入れて、まずは対話を開始して見ることが大切だと思います

東証が上場区分の見直し検討を開始

昨年の12月21日付の日本経済新聞の記事ですが、東証が上場区分を見直すことを検討とありました。見た方も多いとは思いますが、色々と頭に入れておく意義のある数がありましたので、整理してみたいと思います。

上場企業数とPBR1倍以下の上場企業数ですが、次のとおりです。

<上場企業数>

東証1部    2100社
東証2部     500社
東証ジャスダック 700社
マザーズ     270社

日経平均株価TOPIXともに大きく下がっていますが、新聞記事では、東証1部の2100社の中、PBR1倍以下が954社で、このうち、4年連続で1倍を下回る会社数は600社とのことです。

PBR1倍以下とは、再三ブログでも記載しておりますが、時価総額が株主資本を下回るということですので、割安銘柄ということです。最近の株価低迷の状況下では、PBR1倍以下の企業数はもっと多いかと思います。

東証から上場企業に出されている通知の資料などを読みますと、時価総額500億円~1000億円のレンジでの基準を設けることを検討するということで、1部の上にさらに上位の市場を創設するなども検討するとのようです。1月末までのパブコメ募集もされています。

企業家の目標の1つが、株式上場かと思います。しかし、一旦上場した以上は、株価を気にしないオーナー経営者も少なくないように考えます。株価が低いと買収のリスクもあるのですが、中堅企業はオーナー一族の保有比率も高く、安定株主比率が高いのでそもそも買収リスクは小さくといえます。結果、株価など気にしないという方が多いのかも知れません。

今後、東証1部から降格した企業は、東証1部への再昇格を目指して企業価値向上に邁進することによる株式市場の活性化を東証は期待しているのかも知れません。

法務部の地位が低いこと - CGS研究会 第12回会議資料より

12月13日に経産省のCGS研究会(第2期)の第12回会議が開催され、その資料がHPに掲載されました。

内容はグループ会社における指名委員会の在り方ということですが、現時点では一部資料のみ掲載されております。

今回掲載の資料はテーマとは直接の関係はないですが、欠席委員ということで中央大学法学部教授の大杉健一氏の意見書ですが、次のような内容になります。

「私が大企業の法務関係者とお話をすると、「今の日本企業のままでは、外国の同業者との競争に勝てない。向こうは法務もその他の本社部門もプロ集団で、CxOたちが全力でCEOを支えている。わが国では法務部の地位が低いし、その他の本社機能を見ても縦割りになっていて、法務と財務・経理、経企の横の情報交換・意見交換などが十分にできていない。」という意見を伺うことが増えてきました。以上を踏まえて、次のように希望します。前回や今回の会議で議論する経営者指名や経営者報酬の問題を、独立した個別の問題としてだけ議論するのではなく、「本社機能(CxOたち)の横連携という大きな課題」の中に位置づけて議論していただけると、幸甚に存じます。」

先日の日本経済新聞でも日本企業の法務部門は米国企業と異なり、経営の中枢から離れたところにおり(つまりあまり重要視されていない)、競争力の強化のためには、法務担当役員なり経営中枢に関わるべきであるということです。

私の経験上も、法務部門は、どうしても経営の中枢からは外れた位置にある印象が強いです。弁護士資格を持つ社内弁護士を増やせという動きもありますが、解決になるのか個人的には甚だ疑問です。

大手企業であれば、いわゆる四大法律事務所と顧問契約を結んでいるところが多く、結果、重要な法的事項はこれらの事務所に相談することが多いかと思います。

社内弁護士は、弁護士資格は有するが、こういった大手法律事務所の優秀な弁護士が一般上場企業にサラリーマンとして勤務することはまずなく(大手総合商社などであれば、大手法律事務所から弁護士が一定期間派遣されるのかも知れませんが)、結果、社内弁護士は大手総合法律事務所の弁護士のような高い能力・経験がないことが多く、このため社内弁護士が増えたところで、法務部が中枢に参画できないことの解決にはならないような気がします。

社内弁護士も含めて法務部の役割をあらためて考える必要があります。外部の大手法律事務所を使うのか当然ですが、その相談結果を「XX弁護士に確認したところXXXという意見でした」と社内のマネジメントへの伝達部署にとどまるのではなく(社内にいると法務部から良くこのような話を耳にします)、「XXXという意見ですが、実務や事業の観点を踏まえると△△△ということになるかと思います」という提言が出来る必要があると思います。

そうするためにも、法務部一筋という狭い職業人生を歩むのではなく、財務・経理はじめ他の実務経験を積むことが重要のような気がします。

東証1部の割安銘柄

12月8日の日本経済新聞で割安銘柄が東証1部で37銘柄あるとの記事がありました。自社の株式時価総額がその保有しているグループ会社の株式時価総額より小さいということで、子会社やグループ会社が上場しているケースが多いということのようです。

A社の時価総額が100億円であるが、A社のグループ会社のB社の時価総額が150億円ということです。この場合のリスクですが、投資ファンドなどのアクティビストのターゲットになりやすいかと思います。A社の株式を100億円で取得すれば、時価総額150億円のB社が取得できます。つまり、単純に考えると、100億円のキャッシュアウトがあっても、支配下にあるB社を売却することで150億円のキャッシュインがあり、A社を買収することで50億円のキャッシュが得られます。

キャッシュリッチ(=現預金-有利利子負債がプラス)の企業を買収することと基本的な考えは同じですね。

新聞報道によれば、この37銘柄のうち3割強は地銀とのことです。地銀はマイナス金利政策で業績見通しが厳しく、株価が低迷しています。PBR1倍以下の地銀も多いと思います。

地銀などは地域の優良企業に融資しているケースも多いため、地銀を買収すれば、地銀の融資先の企業の統廃合なども自由に出来るかと思います。もっとも外資投資ファンドが日本の銀行を買収するには、たしか規制があったような気もしますが。

話は変わりますが、上場子会社の在り方については、経産省のCGS研究会(第2期)でも議論されています。経産省の資料を読む限りでは、上場子会社のCEOの選任が親会社の指名委員会の審議対象になっていないのが課題といった点が論点の1つのようです。

SEC(米証券取引委員会)が四半期開示の見直し検討を開始

12月8日の日本経済新聞でSEC(米証券取引委員会)の2019年の活動計画が公表されていました。重点活動テーマとして5つほど記事に掲げられていますが、気になったものを2つほどあげます。

1 長期投資の促進
  四半期開示義務の見直し是非について意見聴取
2 議決権行使プロセスの改善
  議決権行使助言会社の開示強化の検討

それぞれについて少し触れてみたいと思います。

まず1の方ですが、これは四半期開示のあり方の検討です。日本でも上場企業は四半期開示が義務付けられていますが、これが、いわゆるショートターミズムの要因の1つという批判も出ています。つまり、企業の中長期的な企業価値向上のためには、長期目線で投資家は投資する必要があり、この四半期開示制度が長期目線での投資を阻害することになるというものです。

四半期で業績を開示するとなると、投資家は短期での企業評価にどうしても目が行き、また、企業サイドも株価を気にして短期業績にマイナスになる投資等は躊躇することになるということです。

2の方ですが、これはISS、グラスルイスといった議決権行使助言会社の在り方の見直しです。

機関投資家は投資先企業の総会議案に対して賛否判断をする際、ISS、グラスルイスの判断に依拠することも多いのですが、一方、ISS、グラスルイスは総会シーズンに大量の企業の総会議案を判断するため、形式的に判断し、場合によっては判断に誤りもあるケースもあると言われています。

助言会社の賛否推奨について、異論がある場合には企業サイドが反論を主張するケースも最近散見しますが、この反論を受けて、ISSが賛否推奨を見直したと言う事例は聞いたことはありません。このように機関投資家の議決権行使判断に大きな影響を与える助言会社の情報開示を強化するようです。

1などは日本の開示ルールは米国を大いに参考にしているので、米国で四半期開示を廃止となれば、当然ですが日本でも廃止という方向に向かうと思います。機関投資家は、四半期開示の廃止には反対しているようです。

 

「公正なM&Aの在り方に関する研究会」の第1回が開催

以前に経産省の「公正なM&Aの在り方に関する研究会」が開催されることを書きましたが、11月9日開催の第1回会議が経産省のホームページに掲載されていました。

議事録は公表されないようですが、事務局説明資料を読むと次のような事項が論点としてあげられています。

利益相反性、情報の非対称性
・検討対象取引の拡大の要否
・取引条件の公正さを担保することに資する措置
  -特別委員会
  -株式価値算定、フェアネス・オピニオン
  -マーケットチェック
     -Majority of Minority条件
  -情報開示 など

MBO指針策定後10年が経過し、裁判例や議論の蓄積や実務状況を踏まえて、MBO指針の見直しが必要か否かが討議のテーマのようです。MBO(マネジメントバイアウト)は、取締役の利益相反が最大の論点ですので、その点の討議がされるのかも知れません。

議事録は未公表のため議論の詳細は不明ですがMBOに関して従前より課題とされている論点がポイントのようです。

12月7日に第2回会議が開催されていますが、こちらは資料はまだアップロードされておりません。今後も継続してウォッチしていきたいと思います。また、MBO指針も一度きちんと熟読したいと思います。

ところで、MBOという名前だけは聞いたことがあるが、「これって何?」とう方もいるかも知れませんので、次回又は次々回あたりで、マネジメントバイアウト(MBO)の基本について書いてみたいと思います。

三東工業社への合同会社M&Sによる株主提案の結果

滋賀県に本社のある建設会社で三東工業社(東証JQS)という会社があります。時価総額15億円程度の中小企業ですが、投資ファンド合同会社M&S(以下M&S)が同社に株主提案をしていました。

M&Sのホームページを見ると、2016年6月から投資を開始しているようです。提案内容は、剰余金の処分、取締役の解任、取締役の選任になります。ちなみに、M&Sは「強く意思ある投資で、世界経済にインパクトを与える」と掲げており、私はこの言葉がとても気にいっています。

本年9月に三東工業社の株主総会が開催されましたが(この会社の決算期は6月末のため9月が株主総会です)、結果、M&Sの株主提案はいずれも否決されました。株主提案の賛成率については、10月3日に提出の臨時報告書で開示されています。

次のとおりになります。
剰余金の処分 25.33%
取締役の解任 24.15%
取締役の選任 24.23%

有価証券報告書で6月末の株主構成を見るとM&Sは12.23%保有しており、外国人は0.2%、個人55.66%、その他法人36.32%となっています。

M&S以外の賛成率が約12%程度ということになります。国内機関投資家保有比率は不明ですが、外国人が1%以下ということでなかなか賛同を得ることが難しかったと思います。

M&Sが10月4日付で「三東工業社第64回定時株主総会の結果について」とのレターを公表しております。一部抜粋しますと次のような内容が記載されております。

 

<以下、レターからの一部抜粋>

「結果として前回より多くの議決権数を集めることができましたが、否決された要因として、上位株主に位置する元会社関係者や三東工業社取引先等の賛成票を得られなかったことが挙げられます。今回の提案に際して、多数の株主とコンタクトを取り元会社関係者や三東工業社取引先等から一定数の議決権を獲得する等、弊社提案内容に理解を示していただきましたが、法人や従業員を中心に三東工業社との関係上、賛同できないといった回答をされる方もおられました。一方で、三東工業社との利害関係が薄い個人株主様や一部取引関係のある法人からも、直接お会いし弊社の説明に納得いただいたうえで、ご賛同いただくことができました。
また、この度の委任状勧誘に際して、弊社提案理由の正当性をご理解いただくべく、三東工業社の株主にお会いしたところ、一部の株主から「三東工業社側から株式を取得の上、会社側に賛同するよう求められた」といった意見が複数ありました。これが事実であれば、上場企業としてあってはならない経営陣の保身と見受けざるを得ない行動です。株主総会における質疑応答の際に、会社関係者に対して持合い株式の取得を迫ったことに関して、事実関係と認識の有無について質問したところ、「取引関係を円滑にするための協力会というものはあるが、株式の追加取得及び会社側への賛成を直接的には促していない。しかし、間接的には影響しているかもしれない。」という回答をいただきました。コーポレートガバナンス・コードが改定され、上場企業の持ち合い株式の縮減が推奨されている中で、上記のような行動をとることは、企業価値向上の観点から、到底容認できるものではなく、今後も一株主として積極的に経営陣に改善を要求していく所存でございます。また、三東工業社の株主の皆様が今一度企業価値向上のため、どのような基準に基づき議決権を行使する必要があるのかを再考できるよう、株主として行動してまいります。」

 

この中で気になるのは、三東工業社は与党株主を集めるため株式を持ってもらったという箇所です。詳細は不明ですが、第三者割当増資をしたわけでもないと思いますので、市場で流通する株式をあらたに買ってもらって賛成する株主を増やしたということでしょうか。

三東工業社の株主が上場企業の場合(仮にA社とします)、会社提案に漫然と賛成する
ことは、A社が、自社の株主から賛成の理由を求められます。安定株主対策のため、株式を引き受けた先が上場企業であるのか関心のあるところです。

ちなみに、三東工業社の2018年3月期の有価証券報告書を見ますと、大株主の第3位に滋賀銀行(4.08%)があり、三東工業社も政策保有株式として滋賀銀行株式を保有しています。相互保有です。

銀行による政策保有は厳しく見られ、メガバンクは売却の方向かと思います。地銀の動きはウォッチしておりませんが、地銀も同様に政策保有株式の売却の動きにあるとすると、今後はM&Sの動きにプラスになるのかも知れません。

スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議が再開

金融庁スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議が11月27日から再開されました。

フォローアップ会議は、本年3月13日開催の第15回会議で「投資家と企業の対話ガイドライン」が公表されてから開催されていませんでしたが、約8ヶ月ぶりの開催です。

金融庁のホームページでは、現時点では資料しか公表されていないため、議論の詳細は現時点では不明ではありますが、色々と情報を集めますと、次のような点が今後議論される模様です。

<今後の会議での論点>
- 本年6月1日改訂のコーポレートガバナンスコードを踏まえたコンプライ・エクスプレインの状況のフォローアップ
-  現在パブコメ中の有価証券報告書の開示についての整理
-  スチュワードシップコードについて昨年の改訂(議決権個別開示、集団的エンゲージメント等)からの成果及び未達成事項の整理 など

改訂コーポレートガバナンス・コードに基づくコーポレートガバナンス報告書の提出期限は本年12月末までとされており、既に提出している上場企業もありますが、提出した報告書の記載が妥当かどうか、きちんとコンプライされているかを会議で検討していくのでしょう。

ちなみに、私もいくつか他社例を見ていますが、金融庁及び東証が当初求めている開示と比較すると、依然として抽象的な内容の開示が多いという印象をもっています。基本的に企業は開示については、「右へならへ」の風潮が強いことが要因ですが、今後のフォローアップ会議では、この開示では「課題あり」となるような印象を受けます。

また、有価証券報告書に関しては、役員報酬の開示の見直しなど今後色々ありますが、政策保有株式の開示が企業には大きな関心事項の1つになるかと思います。現時点で来年の有価証券報告書での政策保有株式に関する開示の主な変更内容をいいますと、次のような点になります。

-  開示銘柄数が60銘柄に拡大
-  投資有価証券のうち、純投資とそれ以外の区分の基準・考え方の開示
-  政策保有株式の保有方針・検証方法、取締役会の検証内容の開示
-  増加・減少銘柄の詳細等の開示

フォローアップ会議の議事録の開示はまだ先になるかと思いますが、議事録が公表されたタイミングでまた書いてみたいと思います。

企業の資金調達としての劣後債の発行が増加

先日の日本経済新聞社債である劣後債の発行が増えているという記事がありました。

劣後債とは社債の1つで普通社債よりも返済順位が低い社債です。普通社債に比べて返済順位が低いので、格付が下がるため高い利回りが求められます。

劣後債を発行した企業として、野村ホールディングスサントリーホールディングス楽天などが記事に掲載されていました。記事によれば、劣後債の発行が増えている背景として、①超低金利で調達コストを抑えられること ②資本コストとROEへの高まりということが書かれていました。

①は、市場金利が低いので、劣後債でも利子(クーポン)を低く抑えられるということですので、分かりやすいと思います。次に②ですが、これについて少々説明いたします。

上場企業の資金調達手段としては、金融機関からの借入や社債の発行以外に新株発行があります。この場合、株式を発行することになりますので、当然、発行済株式数が増えます。

資金調達にはコストがかかります。借入や社債であれば利子ですね。一方、株式での資金調達のコスト(株主資本コスト)とは、株主の期待するリターンであり、社債による資金調達コストより高いです。

そして、株主資本コストとの比較で検討される株式指標はROEですが、新株発行で資金調達を行うと資本金やこれに加えて資本準備金が増加します。

つまり、株主資本が増える結果、ROEが低下します。株主資本コストは高く、一方、ROEが下がるというのは好ましくないですよね。そこで、社債で資金調達を行えば、コストも低く、またROEにも影響が出ないので劣後債で資金調達を行う企業が増えているということかと思います。

以上、簡単に触れてみました。

IR優秀企業をその会社の株主はどう見ているのでしょうか?

先日の日本経済新聞に日本IR協議会が2018年度のIR優良企業14社を発表したとの記事がありました。優秀企業大賞はエーザイが受賞しました。

エーザイはIR活動に力を入れている企業で有名です。新聞記事によれば、トップが経営方針や戦略の説明に積極的で、情報開示レベルを引上げている点が評価されたとのことです。要は開示が上手と評価されたようです。

しかし賞はそれとして、エーザーイのステークホルダーである株主は、エーザイをどう評価しているのでしょうか。

投資家が会社をどう評価するかの指標の1つは株価です。投資の魅力がなければ、株式を売り、結果株価が下がりますし、魅力や将来性があると考えれば、株式の買いが増え株価が上がります。しかし、株価は短期投資の目線で変動するので、必ずしも中長期目線からの会社の評価にはそぐわない気がします。

では他に何があるかといいますと、株主総会の会社提案議案に対する賛成率があります。会社提案議案は、取締役会が決定するものですが、その経営陣の判断に反対する場合は、議案への反対率が高いということです。

では、エーザイの場合はどうでしょうか?

株主総会議案の賛成率は、上場企業が株主総会後にEDINETに提出する臨時報告書を見れば分かります。本年はエーザイは取締役選任議案を提案しており、2018年6月21日付でエーザイは臨時報告書を提出しております。本年の株主総会では、取締役11名選任の件が付議されています。

勿論全員承認可決はされていますが、取締役11名各人によって賛成率にバラツキはありますが、賛成率は、最低が74.30%で、最高が89.69%となっています。11名の賛成率を単純合算して11名で割った場合、84%です。74.30%の最低賛成率は、内藤晴夫氏という方でエーザイの経営トップの方になります。また、70%台の賛成率にとどまる方が3名もいます。

さて、この結果を高いと見るか低いと見るかですが、これは明らかに低いといえます。不祥事があった企業であれば、その企業の取締役選任議案への賛成率が低いのは良くあるのですが、そうでない企業は90%台はないとかなり低いといえます。

エーザイは賛成率が低い理由は開示しておりませんので分かりません(というか開示している企業などまずありませんが)、推測するに、買収防衛策のスキームによるものではないかと思います。エーザイは買収防衛策を導入しており、そのスキームは株主総会の承認を経ることなく、取締役会の決議で導入・継続できるものです。買収防衛策を有する企業の経営陣に機関投資家が反対することは良くあることですので、これがエーザイの経営陣の選任率が低いことに関連しているように推測します。

いずれにせよ、エーザイの株主は役員選任議案に相当数反対しているといえます。IR大賞により開示は評価されているが、肝心の経営陣には、株主、の一定数が反対しているということです。

これは私の個人的な考えですが、役員の経営体制に反対している中、大賞受賞というのは少し違和感を感じます。開示というものは、会社の事業運営の結果を書面にして公表するものであり、経営陣に反対する株主が多い中、経営陣による事業経営の成果を書面で開示した内容が評価されるというのは、見方によっては、とてもおかしな話です。

最近は何でも開示せよという動きにあります。開示が上手な会社は評価され、開示がうまくない企業は評価されないということもあります。開示が、外部のよくわからない大学の教授や評価機関に評価されるより、会社のオーナーである株主に評価されることを会社はまず最優先に考えることがとても大事かと思います。

一般の方は、臨時報告書などを目にすることはないので、全く気にとめていないかも知れませんが、このように整理していくと疑問に感じることも色々とあるかと思います。

金融庁のディスクロージャーワーキング・グループ報告の概要

少し前になりますが、2018年6月28日に金融庁ディスクロージャーワーキング・グループが報告を公表しておりますので、本日はこれについて少し触れてみたいと思います。内容は有価証券報告書の開示に関する考え方をまとめたもので、おおむね次のような内容が記載されていります。

<経営戦略・ビジネスモデルの開示>
依然として開示内容が不十分な企業が多い。英国の例を参考に、企業構造、事業市場と関連付けて、事業計画・方針を明確に説明し、企業成長、業績、将来見込みの評価に資する情報が提供されるべき

<リスク情報の開示>
リスクの羅列となっており、数年間記載の変化のない企業も多い。英国の開示例を参考にリスクの重要度の順に、発生可能性・事業に与える影響等企業固有の事情に応じた実効的なリスク情報の開示をする必要あり

<分かりやすい開示>
諸外国(米国・英国)の取り組みも参考に、投資家にとって重要な情報を十分・正確に提供するため更なる取り組みが必要

<政策保有株式の開示>
・合理性検証方法や取締役会における議論状況について開示すべき
・個別政策保有保有目的・理由について、定量的な効果も含めての具体的記載を求める
・有報開示基準に満たない銘柄も含め、売却・買い増した銘柄の詳細の開示
・開示対象銘柄の拡大
・純投資と政策投資の区分の基準や考え方の明確な説明
・純投資株式についても一定の開示

<重要な契約>
米国では、契約書の内容が開示されているが、日本では開示が不十分。投資家の判断で重要と考える契約内容について、海外の実態を把握しながら適切な開示を促す

<ガバナンス情報の提供>
役員報酬の考えの分かりやすい記載。算定にKPIがある場合、KPIの選定理由、業績連動報酬反映方法の記載。報酬決定プロセスの客観性・透明性のチェックを可能にするため、報酬委員会の具体的活動内容の開示。日本は役員報酬が低いので、個別開示の対象拡大は必ずしも重要でない

などです。

色々と書いてありますが、目的は、「企業情報の開示は、資本市場における効率的な資源配分を実現するための基本的インフラであり、投資判断に必要とされる情報を十分かつ正確に、また適時にわかりやすく提供することが求められる」とあります。

たしかに、色々な投資先企業の有価証券報告書を見ますが、リスク情報の開示、重要な契約の開示、政策保有株式の開示は、各社の書き方がひな型的との印象は受けます。

上場企業は開示が大変になる一方です。詳細開示をすれば投資家から質問が出るし、また、開示が不十分であると、開示の不十分性が問題と指摘されるということのような気がします。物言う株主からのも指摘を受ける可能性もあります。

以前にもブログで書きましたが、上場の意義は資本市場からの資金調達ですが、この必要のない企業はMBOによる非上場化するということを真剣に考えないと、無題にコストばかりかかることになるような気もいたします。開示のための準備、開示を踏まえた対応といったコストです。

上場廃止すると優秀な学生がこないという声も聞きますが、そもそも、上場していても中堅規模以下の企業であれば、どの道、偏差値の高い大学(ざっくりといいますと、東大・一橋・旧帝大早慶上智クラスでしょうか?)の学生が来ることは想定しがたいのであって、そんなことに悩むよりも(そもそも優秀な学生の判断基準である大学の「偏差値」の差など仕事の上では、東大・京大・一橋大学の一部の優秀な方を除けば、偏差値の高い大学も低い大学も、知織ゼロベースで会社に入り、「よーいどん」で競争すれば、たいして違いはないはずです。要は、仕事に対する意識が高いか低いかで差がつくのではないでしょうか)、非上場化して、うるさい株主の目を気にすることなく、企業価値向上に邁進できるような気がします。

経産省が「M&Aの在り方に関する研究会」を設置

経済産業省が、11月7日にM&Aの在り方に関する研究会の設置を公表しました。

経産省は平成19年9月に、「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」(MOB指針)を公表していますが、今回、この指針の見直しの要否を含め、公正なM&Aの在り方について検討するようです。

経産省のホームページに、次のような記載がされています。

「MOB指針の策定から既に10年が経過しており、その間、実務、裁判例や議論の蓄積が見られます。また、社外取締役の選任の増加をはじめとするコーポレートガバナンス改革の進展や株式保有構造の変化等、上場企業を取り巻く社会経済状況にも変化が生じており、こうした状況を踏まえて、MBO指針の見直しについて検討する時期に来ているとの指摘があります。また、MBO指針は、利益相反構造のあるM&Aのうち、MBOを中心に提言を行ったものであるところ、親会社が上場子会社を完全子会社化する場合をはじめとする支配株主による従属会社の買収等、MBO以外の利益相反構造のあるM&Aについても論点整理を行うべきとの指摘もあります。以上を踏まえて、MBO指針の見直しの要否を含めて、我が国の公正なM&Aの在り方について検討を行うため、今般、「公正なM&Aの在り方に関する研究会」を設置することとしました。」

平成19年公表の指針は、名称だけは知っていましたが、内容は読んだことはありませんでした。

MBOと言えば上場廃止の1つの手段でもあります。MBOの課題としては、マネジメントが自社を買収する上で、適正価格を下回る買収価格を設定した場合、対象会社の役員と買収する会社の役員ということで利益相反が起こり、結局は、対象会社の株主が損害を被るのではないかという点です。

この研究会は、11月9日(金)に第1回会議が開催され、今後、毎月1回程度開催し、来年春を目途に議論の取り纏めを行う予定のようです。

この研究会もどこまで資料や議議事録が公表されるものかは分かりませんが、MOB指針を読むとともに、情報をウォッチして行きたいと思います。

スマホゲーム関連銘柄の紹介:株式会社GameWith(6552)

本日はゲーム関連銘柄について紹介したいと思います。

銘柄は、東証マザーズに上場している株式会社GameWith(証券コード6552)になります。同社は、2013年6月設立、2017年6月に上場したスマホゲームの攻略情報メディアサイト「GameWith」を運営している企業です。

同社の業績は、次のとおりになります(単位:百万円)
  
          売上高  営業利益 営業利益率 当期純利益 ROE

15年5月期     389   127 32.6%   92   21.3%
16年5月期     994   330 31.9%  220   26.0%
17年5月期   1,581   657 41.6%  465   39.0%
18年5月期   2,677 1,168 43.6%  816   41.1%
19年5月期(予)3,154   905 28.7%  623 
         
2015年5月期以降、毎期、増収増益となっていますが、2019年5月期は増収減益の予想となっています。

同社の2019年5月期(つまり2018年6月1日から2019年5月31日までの期間)の第1四半期決算説明資料を見ますと、次のような記述があります。ちなみに、決算説明資料とは、決算を公表した後にアナリスト説明会を開催する企業が決算の概況等をまとめた資料です。

・戦略投資期間と位置付けた今年度は引き続き新規事業・海外展開に資源投下の方針
・2018年から2020年の事業構想
 ①海外展開の本格化:英語圏に本格算入し、海外展開を加速
 ②新規事業領域への挑戦:既存のメディア事業以外の様々なゲーム関連領域に展開
・eスポーツ関連で参入したのプロチーム運営は、1stシーズンはアジア2位と躍進
・積極的な人材採用を推進。2018年5月期の第1Qと比較すると69名増加
 <人材関連費用>(単位:百万円)
 18年5月期1Q 203
       2Q 215
       3Q 240
       4Q 312
 19年5月期1Q 348 → 前年同期比で71%増加

決算短信は数値の羅列ですが、決算説明会資料は関連情報もよくまとめられており、見たことのない方はじっくり読むと良いかと思います。

2019年5月期の予想は、トップラインである売上高は引き続き増加の予測ですが、今後の更なる成長のための投資費用が増えたため営業利益は一時的に減少ということかも知れません。

eスポーツにも力を入れているようです。eスポーツに関しては、少し前にTBSの番組「情熱大陸」で、たしか東京大学を出てプロゲーマーを職業としている方が紹介され、米国ではeゲームが市民権を得ており、市場規模も大きいということでした。

eスポーツがオリンピックの競技となるかどうかという話題もありますが、市場は拡大しているようです。市場規模などの詳細まではまだ調べていませんが。

個人的には、小学生以来、ほとんどゲームをしたことがなく、勿論スマホでゲームなどしたこともないので、ゲームの何が面白いかは全く理解できないところではありますが、この会社の株価は年初来高値が2,450円で年初来安値が913円で、自己資本比率も良いことから、先週、投資をしました(ちなみに本日の終値は923円です)。

今は市場全体で株価が大きく下がっているので、個人投資家にとっては色々な銘柄を仕込むに良いタイミングかも知れません。

機関投資家協働対話フォーラムが買収防衛策の必要性に関するレター送付を開始

機関投資家協働対話フォーラムが「資本市場の評価を下げるリスクを踏まえた買収防衛策の必要性」のレターを、2019年に防衛策の更新期限が到来する企業を対象に送付開始(10月10日頃より順次)したとのことです。

機関投資家協働対話フォーラムとは、2017年にスチュワードシップコード改訂で集団的エンゲージメントが規定されたことを受け、機関投資家のスチュワードシップ活動に資するよう、機関投資家による協働での企業との対話を支援する目的で同年10月に設立された一般社団法人になります。

本フォーラムに参加する機関投資家は、企業年金連合、三井住友アセットマネジメント、三井住友トラストアセットマネジメント、三菱UFJ信託銀行りそな銀行で、意見を取交し、対話に係るアジェンダを設定、共有の見解をまとめ企業に提示するという活動をしています。

フォーラムによるレターの提示は、今回が第4弾ということで、これまでに、①不祥事発生企業に情報開示を要求するレター ②経営トップの取締役選任議案に相当数の反対のあった企業に原因分析の要求を求めるレターなどを送付しています。

レターの内容ですが、買収防衛策は次のような理由で問題であり、資本市場からの評価を下げるものであり、仮に継続するのであれば、継続による投資家からの信頼低下をどう考えるか、また、企業価値の評価を下げるリスクがある中での継続理由は何かなど、必要性について招集通知や適時開示資料で開示することを求めるというものです。

<問題>
・防衛策導入の理由である濫用的買収のリスクは、金融商品取引法が整備され、今や小さい
・海外競合会社による技術の海外流出の未然防止のため買収防衛策を有する企業もあるが、この場合、正当目的の買収は防止できない
・買収防衛策を持つことで、経営陣の経営に対する規律性が弱まり、株主による付託への緊張感が薄れ、経営に甘さが出る
・防衛策を有することで投資家はガバナンス評価をディスカウントして企業価値を評価する など

フォーラムに参加の機関投資家が共同でレターを提示しますが、投資先企業の回答を踏まえて各社が買収防止策議案をどう評価して、賛成・反対のいずれの議決権行使をするかは各機関投資家の判断に委ねられることになります。

レターの内容は、フォーラムのホームページにアクセスすれば見ることができます。

買収防衛策議案への反対率の高まりも背景にあり、来年防衛策の更新期限を迎える企業は年明け頃から機関投資家を訪問して、防衛策に関して賛成が得られるのか感触を探ることになると思います。

フォーラムに参加する機関投資家を訪問する際には、当然ながらレターの内容の質疑応答が求められると思いますので、十分な事前準備が必要になってきます。