コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた個人株主のアクティビズムの可能性(2)

今回より、個人株主の株主アクティビズムに関して、改訂コーポレートガバナンス・コード(改訂CGコード)との関係について検討をはじめたいと思います。

まずは、今回の改訂CGコードにおいては、14の原則及び補充原則の修正・新設がされていますが、該当する内容を要約すると次のとおりになります。

1 政策保有株式の縮減方針の開示

2 取締役会での政策保有株式の個別銘柄の検証及び検証結果の開示

3 政策保有株式の議決権行使基準の具体内容の開示

4 企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮

5 後継者計画に対する取締役会の関与・監督

6 経営陣の報酬について客観性・透明性ある手続による具体的報酬額の決定

7 CEOの選任・解任手続の整備

8 任意の指名・報酬委員会等の設置活用

9 十分な人数の社外取締役の選任

10 ジェンダーや国際性の面を含む取締役会の構成

11 資本コストの的確な意識の上での経営戦略の策定

12   事業ポートフォリオの見直し、設備投資、R&D投資等を含む経営資源の配分

上記の中で、まずは、投資先企業に対して、一番主張しやすいのは、政策保有株式関係の1~3の事項になります。

政策保有株式とは、バランスシート上の固定資産の中、「投資その他資産」にある投資有価証券の中で、企業が純投資以外の目的で保有する株式になります。

政策保有株式は、取引面などから真に必要不可欠なものを保有し、それ以外の保有の合理性ないものは売却・縮減をせよというのが改訂CGコードの内容になります。また、合理性があり保有するとしても、投資先企業に対しては、株主総会において適切な議決権行使をすることが求められています。では、株主アクティビズムの関係では何が言えるでしょうか。

バランスシート上、現預金と政策保有株式の金額が大きい企業に対しては、政策保有株式の売却によるキャッシュの創出と、元々保有する現預金とともに創出したキャッシュの株主還元の増加が主張できます。改訂CGコードでは、政策保有株式については、基本的に縮減を求めているわけですから、政策保有株式は原則として余剰資産となり、余剰資産は、株主に還元しなさいということになります。

政策保有株式の金額が多く、これに現預金を加えた金額から有利子負債を引いた金額であるネットキャッシュが潤沢にある場合には、このように株主還元を主張できます。ネットキャッシュが潤沢であるかどうかは、ネットキャッシュの株式時価総額に占める比率、ネットキャッシュの総資産に占める比率などが1つの目安になります。

ぱっと思いつく範囲で、改訂CGコードの政策保有株式関係で、個人株主が主張できる内容を論理立てて、かつシンプルにあげると次のようなところでしょうか。

①ネットキャッシュ(現預金+政策保有株式-有利子負債)が株式時価総額対比でXX%、総資産額対比でXX%と大きい。政策保有株式は、保有の合理性がある場合を除いて縮減することが改訂CGコードの趣旨であるが、合理性があって保有しているのか

②(合理性あって保有しているとの企業側の回答に対して)本当にそうか。改訂CGコードでは、個別銘柄について取締役会での保有の意義の検証が求められているが、取締役会における全銘柄の検証結果について開示・説明をせよ
③(検証結果が不十分と判断する場合)保有に合理性があるとは思えないので、政策保有株式を速やかに売却をして、売却代金を株主価値向上に使用すべきである。つまり、剰余金の配当を増やすべきである

シンプルですが、改訂CGコードに即して主張を考えると、このような順番になるかと思います。

実際には、株主提案を行う上では、①②の点について、投資先の企業に対して書面で質問をし、その結果、十分な回答が得られない場合には(十分な回答は得られないと思いますが)、③について、剰余金の配当増の株主提案を行う流れになると思います。

このように政策保有株式の縮減は、余剰資金の還元という観点で企業に提案するに極めて分かりやすい提案材料になると思います。勿論、株主提案を行うには、他の株主の賛同を得るために、より緻密に具体的な数値に落とし込んで分析して、その内容を踏まえて書面で提案をする必要があることは言うまでもありませんが、基本的な考えは上記のとおりです。

次回は、政策保有株式以外の改訂事項(一番上の「4企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮」よりあとの項目)について、株主アクティビズムの観点から説明したいと思います。

改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた個人株主のアクティビズムの可能性(1)

4月17日に改訂コーポレートガバナンス・コード案(改訂CGコード)に対する経済団体連合会経団連)の意見が経団連のホームページで公表されました。

改訂CGコードは、4月下旬締め切りでパブリックコメントを募集していますので、これに基づく意見になります。

経団連の意見の内容を見ますと、政策保有株式、企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮、CEOの選解任などについて変更を求める提案をしております。

経団連のホームページで一度見て頂ければと思いますが、企業で実務を行う私としては、いずれの意見も実務に即した合理的な意見と感じています。

今回のフォローアップ会議のメンバー構成についても意見が出ており、フォローアップ会議の討議が、コンサルや大学教授等が中心になっており、上場企業の実務メンバーが入っていないことが課題であるので、企業サイドの委員も入れるようにとの内容です。少し乱暴な言い方をすると、企業実務を知らないメンバーだけで議論して、方向違いの方針を決定することは非常に問題であるいう不満かと思います。

しかし、経団連の意見は出されてはおりますが、改訂CGコードは東証から3月30日に公表された案で決定するように思えます。パブリックコメントが4月末までの募集とされていますが、その一方で、既に改訂CGコードで東証による企業向けの説明会が開始されているからです。

企業の実態に即していないという経団連の意見があるにせよ、上場企業は改訂CGコードに向けた対応が今後必要になります。

ここから本題に入るのですが、今回の改訂CGコードは、個人株主にとっても企業に対するアクティビズム活動をする大きな材料になっていくかと思います。

株主アクティビズムとは、企業に直接働きかけて改革を促すことで、株主リターンの向上を狙うことをいいます。より端的にいうと、企業に不採算事業の分離を迫り利益率改善による株価向上や政策保有株式の解消によるキャッシュの株主還元を提案してインカムゲインの向上を目指すといったようなことです。

今回の改訂CGコードでは、企業の配当性向を「〇〇パーセントにせよ」といったようにそれ自体が直ちに株主リターン向上に直結する改訂は入っていませんが、いずれの改訂事項も株主リターンに間接的には結びついていく内容と思います。そもそも改訂CGコードの前提として、上場企業の約700社がPBR1倍割れという現状の課題の改善があるかと思います。つまり企業の時価総額向上(=株価向上)を目指したものです。

改訂コードの十分な対応が出来ていない企業に対しては、個人株主も、有価証券報告書コーポレートガバナンス報告書、事業報告書などの開示書類から対応不十分な点を洗い出し、対応改善と企業価値向上を絡めて論理的に整理して株主提案をすれば、他の株主の賛同を得て、株主リターンの向上も期待し得ると言えます。

株主提案には、300単位の株式(1単位100株の企業の場合、30,000株です)が必要ですが、時価総額の小さい中小型銘柄企業の株式は、個人株主も複数名でお金を出し合えば、300単位を取得することもそれほど高いハードルではないと思います。

これらの企業は、必ずしもガバナンス体制に関する意識が高いわけでもないので、コーポレートガバナンス体制の整備も今後必ずしも十分には出来ないものと予想します。結果、政策保有株式なども特段の意識なく従来どおり保有継続する、または、意識はあるが対応の取り組みを行わないなどの結果、株主アクティビズムの材料を抱えることになります。

株主の立場の目線から、今回の改訂コードをもとに改訂コードの主な項目と株主リターンの向上の提案をどう結びつけることが出来るかの大まかな考え方を今週末を目途に、ブログで掲載してみたいと思います。

逆に上場企業サイドからいうと、特に中小型銘柄企業にとっては、このようなリスクが現実のものとしてあるということを認識して、しっかりとした対応を考える必要があると思います。

日立製作所が800社を超えるグループ会社の約4割を今後削減する方向

4月14日の日本経済新聞に「日立製作所が2021年度を目途にグループ会社を約4割を削減する方針」との記事がありました。

800社程度ある傘下のグループ会社を統廃合して、500社程度にまで削減するということです。日立製作所は800社もグループ会社があるということがそもそも驚きです。

日立製作所に限らず、伝統のある日本の大手企業は、多くのグループ会社を抱えていることが多いかと思います。グループ会社を保有する理由には、雇用の継続という大きな狙いが1つあるかと思います。

つまり、親会社本体で役職定年を迎えた社員の受入先としていることがあります。親会社で一定年齢を超えた社員を本体から子会社であるグループ会社に出向又は転属させて、給与を下げ、子会社で部長又は役員の役職を与えて雇用するというのは、伝統的な大手日本企業の慣行かと思います。

今回の日立のグループ再編では、間接部門を抱えて効率の悪さが目立っていたとのことで、これを解消することが狙いとあります。

機関投資家から見た場合には、役職定年後の50半ば過ぎの高齢社員をグループで雇用するためにグループ会社を持つということは、とんでもないという意見が出そうですが、この意見もどうかなとは思います。

そもそも企業の役割の1つは「人の雇用を継続する」ということがあります。企業の存続の根本は、従業員の雇用にあり、従業員のために存続するのが企業です。日本電産の永守会長も、雇用の場を提供するのが企業の役目ということを前に言っていたのを何かの記事で読んだ記憶があります。であれば、雇用を継続するため、本体から外してグループ会社で採用するということも一理あるようにも思えます。

しかし、上場企業の場合、コーポレートガバナンス改革の動きの中、株主の声が最近は非常に強く、株主価値向上、つまり利益増加にプラスにならないことは許されないというのが最近の風潮です。

日立の営業利益率は18年3月期には7.1%の見込みですが、海外の競合会社並の10%を目指すということのようです。

不採算事業の再編、カーブアウトは昨今のコーポレートガバナンス改革の目玉であります。不採算事業を抱えるということは、この事業の営業利益率の低さが会社全体の営業利益率に悪影響を与え、ひいては、ROEといった経営指標にもマイナス影響を与えます。

日本企業にはPBRが1倍を下回る企業は約700社存在するといわれており、これが問題であると言われています。投資家から見た場合、株価が低いので問題ということです。

PBR=ROE×PERで、ROEの構成要素の1つが売上高当期純利益率ですので、利益率の悪い事業を抱えるということは、ROEにマイナス影響を与え、PBRにも影響を及ぼすことになります。

改訂コーポレートガバナンス・コードでは、資本コストに見合った利益を生み出せない事業の撤退を検討することを促しています。また、経産省が進めているコーポレートガバナンスシステム研究会(第2期)では、グループとしての管理体制の見直しが検討されています。

日立がグループ企業の大幅削減を決定した背景は、新聞報道以外には分かりませんが、これらの最近のコーポレートガバナンス改革の動きも背景にあるように思えます。

不採算事業を抱えることは、アクティビストからもつつかれるリスクを抱えることになりますので、株主総会シーズンに入るこのタイミングで、将来、アクティビストが「物言う」に先立ち(アクティビストである投資ファンドが日立の株式を保有しているかどうかは私は知りませんが)、会社としてグループ会社の削減を公表したということであるかも知れません。

 

 

オーナー企業は一般企業(サラリーマン社長の会社)より収益性などが高い

4月14日号の週刊ダイヤモンドに「外国人投資家が熱視線 オーナー社長」とのタイトルの記事がありました。

さらっと読んだところ、海外機関投資家日本株投資では、オーナー社長を高く評価しているということです。

オーナー社長の反対語がサラリーマン社長ですが、記事では、日本経済大学大学院の後藤俊夫氏(聞いたことのない大学ですが、後藤氏は、東京大学ハーバード大学卒のようです)という大学教授の調べた結果として、上場企業の約6割がオーナー企業であり、比率でいうと、同族経営53%、単独経営10%、一般企業37%ということになっています。単独経営とは、創業社長以外に経営に関与しているファミリーがいない企業をいい、そして、一般企業の社長がサラリーマン社長ということです。

オーナー社長とサラリーマン社長の違いは、記事にも書かれていますし、誰でも常識的に知っていることですが、事業戦略、事業撤退といった大胆な戦略を策定・実施できるか否かが両者の大きな違いになります。

サラリーマン社長はどうしても任期があるので、OBなどに配慮して大胆な戦略を打ち出すことが出来ないが、オーナー社長は自分の思い通りの行動がとれるということです。本や雑誌に書かれていることで、特に目新しいことではないかと思います。

それよりも、この記事を見て少し驚いたのは、オーナー企業の方が、ROAROE流動比率といった点で一般企業を上回るというデータがあるという点です。

ROAとは総資産事業利益率であり、バランスシートの資産をいかに効率良く活用して利益を上げているかの指標になります。この数値が高いほど良いと言われています。

この明確な理由は、たしか記事には書いてありませんでしたが、オーナー企業の方が、不採算事業をカーブアウトするなどして、資産効率の改善を図ることが比較的容易にできる一方、サラリーマン社長である一般企業は、カーブアウトといった大胆な施策が打てないため、ROAも低いままにあるといったことが理由でしょうか。

コーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議では、不採算事業のことをゾンビ事業と指摘されている委員もいましたが、このゾンビ事業をなかなか切り離せないのが、一般企業であるということになるのかも知れません。

しかし、今は事業撤退といった事業ポートフォリオの見直しについて経産省金融庁
など政府が促進する動きにあります。であれば、一般企業であっても、この政府の後押しもあり、オーナー企業と同じように大胆な事業撤退、事業ポートフォリオの組み替えなどが今後は進んでいくのかも知れません。

 

物言う株主の投資先企業であるGMOインターネットの定時株主総会での熊谷社長のコメントからの気付き

物言う株主であるオアシス・インベストメンツがGMOインターネット株式会社(以下「GMO」)の定時株主総会で株主提案を行い、結果としてGMOでの株主総会では否決されたことは以前にブログで書いていますが、4月6日にGMOのホームページで熊谷社長が総会当日に株主総会で行ったプレゼン資料及び動画がアップロードされました。

買収防衛策の株主提案は、否決はされたものの高い賛成率であったことから、機関投資家の買収防衛策に対する反対姿勢が非常に高まっていることが判明した案件ですが、指名委員会等設置会社への移行の株主提案もあり、結果としてはこれも否決されたのですが、熊谷社長の説明を聞いて気付いた点があります。

指名委員会等設置会社とは、執行と監督を分離して、社外取締役を中心にした機関設計ですが、これをオアシスは提案していました。これに対して、熊谷社長のコメントは、次のような内容になっています。

GMOの3月12日の定時株主総会での熊谷社長のコメント(GMOのホームページからの一部抜粋)>

「2017年3月31日に経済産業省が公表した「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務方針」などの、いわゆるガバナンスの教科書には、監督と執行の分離、即ち執行部門の責任者が取締役になるのは望ましくないと書かれています。しかしながら、変化の激しいインターネット業界において「勝つ」ためには、その環境の変化に応じて猛スピードで意思決定を行い、猛スピードで組織として自走しないと勝てないと考えています。当社グループは上場9社、連結104社からなるグループ経営を行っています。各分野のプロフェッショナルが集まり、権限を分散して競合よりすばやく意思決定し、実行に移しています。仮に監督と執行機能を分離した場合、社外取締役だけでこの速い業界の迅速な意思決定ができるでしょうか。変化の激しいインターネット産業と当社グループの強み、この両方を知り尽くしている社外取締役は、残念ながら私にはどうしてもイメージが沸きません。教科書に書いてあることが、すべての企業に当てはまるとは限りません。実績の出ている組織や仕組みを、「教科書と違う」ということだけで否定し、壊すことは避けなければならないと強く思っています。」

 私はこれを読んでなるほどと思いました。

米国型のコーポレートガバナンス体制を最近の日本のコーポレートガバナンス改革では採用を促進するような風潮もあり、取締役会は、戦略的意思決定及び監督機能の強化に注力すべきであり、そのためには社外取締役を増員し、その関与度合いを強くせよというのが最近の動きです。

しかし、GMOのようにインターネットという非常に事業のスピードの速い業界では、社外取締役は必要かというと「必ずしも必要ではない」と思いました。

インターネット関連企業の成長は、時代の先を読む能力に非常に長けた経営トップに依存するところが大きく、いわゆる重厚長大型の企業とは大きく産業構造が異なります。このような中で、事業経験、特にインターネット事業に精通していない弁護士、大学教授などのずぶの素人が社外取締役に入っても、かなりの高い確率で役には立たないといえます。また、他業界の大手企業の経営トップの元経営者であっても、そもそも年齢も高齢の上、事業スピードの全く異なる業界の経験者などでは、ほとんど役に立たないというの現実かと思います。

とすれば、GMOといった業種には社外取締役が入ることは、事業のスピードを遅くすることにつながり、かえって弊害が多く、事業戦略の立案に全く寄与しないことになると思われます。

この熊谷氏のコメントを見て、私はなるほどと納得しましたが、同じように事業環境の変化の早い業界も他にあるかと思います。こういう企業では、異業界の大手企業の元経営トップが社外取締役に入ったような場合、とんちんかんな発言をするとスピードある経営判断に支障をきたします。人は、自分の存在意義を示すために自分の得意領域に議論を持っていく傾向があると良く言われますが、特に地位やプライドの高い人であれば、そのような傾向が強いのではないでしょうか。

要は、社外取締役が戦略策定において有用であれば増やせばよく(重厚長大産業の大手企業のように事業基盤がしっかり出来ていて、更なる業務管理の改善やコーポレートガバナンス体制の充実に取り組む企業など)、そうでなければ、会社法で定める最低限の人数を置いておけばよいのです。

自社が社外取締役に何を期待し、その期待を果たせる能力・経験のある人がいれば積極的に起用すれば良く、いなければその理由をきちんと機関投資家に説明すれば、資本市場関係者の理解は得られはずです。

もっとも、とりあえず世間の動きに合わせるために無難に社外取締役の数だけを増やしておこうという考えも1つあるかと思いますが、この場合には、「意識の高い元気な方」などを間違って起用しないよう注意する必要もあるかと思います。

ダイバーシティ2.0行動ガイドラインが改訂の方向で検討開始

2週間ほど前にある新聞で、経産省が「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」を改訂する方向で本年4月中を目途に検討会を立ち上げるとの記事がありました。

このガイドラインは、2017年3月に経産省が公表しており、同ガイドラインによれば、「ダイバーシティ2.0」とは、「多様な属性の違いを活かし、個々の人材の能力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み出し続ける企業を目指して、全社的かつ継続的に進めていく経営上の取組み」をいいます。

新聞報道によれば、今回の金融庁コーポレートガバナンス・コードの改訂案で取締役会の構成で「ジェンダー」と「国際性」が盛込まれたことを受けて、取締役会の多様性向上をより強く求める内容にする方向で検討するということのようです。

併せて情報開示に関する内容も拡充をするようで、投資家へのアピール向上を促すということです。

ちなみに、2017年3月の「ダイバーシティ行動2.0ガイドライン」においては、ダイバーシティーが企業価値向上にもたらす主な効果として、次の4つがあげられています。

1 グローバルな人材獲得力の強化
2 リスク管理管理能力の向上
3 取締役会の監督機能の強化
4 イノベーション創出の促進

ダイバーシティーとは、従業員だけに限定されるものではなく、取締役も対象とするものと思います。従業員にだけダイバーシティーを行っても、最終的にはマネジメントがそれに理解を示さないとダイバーシティーが進まないため、結果、マネジメントサイドにもダイバーシティーを要求することになります。

多くの日本の上場企業(特に大手企業になるほど)の社内取締役は、①50代 ②入社時から社内一筋の経験のみ ③男性である といういわば「三種の神器」が社内取締役の条件かと思います。

この点が問題であるというのが、最近のコーポレートガバンナンス改革の背景であり、経産省ダイバーシティーの活性化に向けて、更なる取組みを進めるということのようです。

しかし、前にもブログで書いたように取締役のダイバーシティーなどというものは、必要ある企業のみが真摯に取り組めばよく、そうでない企業は取り組む必要は全くないと思います。海外機関投資家は、私の印象ですと、日本の機関投資家よりはダイバーシティーと国際性に関心を持つ傾向にあると思います。

したがって、外国人株主比率が20%を超えるような企業は、海外機関投資家の声を聞き、これにきちんと対応をする必要がありますが、上場企業の多くを占める中小型株銘柄にあたる企業は、外国人株主比率は数パーセント程度の企業が多いと思います。

このような企業は、少々乱暴な言い方ですが、ジェンダーや国際性など無視しても全く困らないのであり、「ダイバーシティー2.0」など関係なく、従前どおり収益向上に邁進し株価向上を目指せばよいのです。

ダイバーシティーの言葉は最近の流行ですが、そもそも業績・株価向上とダイバーシティーの直接の因果関係などどの程度あるのか怪しいものであり、自社の株主構成なども見て、対応する必要があるのかどうかの本質を見極めて進めることが必要かと思います。

 

ESG投資家が企業の株価に及ぼす影響

先日の日本経済新聞に「物言うESG投資家」のタイトルの記事が掲載されていました。

記事の内容は、フェイスブックが利用者の個人情報が不正に第三者に渡っていた疑惑を受けて、海外のある運用会社が、運用するESG上場投資信託で3.9%と上位組入銘柄のフェイスブック株を除外すると発表したようで、約5億円分の売りが出る計算になるとのことです。

ここでいまいちどESG投資について整理します。

ESG投資とは、ESG(環境・社会・ガバナンス)に積極的な企業に投資する投資です。個人投資家がESG情報にそれほど注目しているとは思いませんが、一部の運用機関はESGに注視して投資をしており、これが「ESG投資家」ということになります。

今回のフェイブックもそうですが、ESGに積極的に取り組む場合には、運用機関の投資対象になりますが、その後、不祥事があったような場合には、ESG対象銘柄から外されることになります。

外されるということは、投資金額にもよりますが、今回のように5億円の売りが出ると株価は需給のバランスで決まるので、株価が下がることになります。

ESG投資は世界規模で2016年に約23兆ドルと言われているようで、地域で見ると欧州の投資規模が最大ですが、日本でも着実に増えるといわれてはいます。しかし、日本の運用会社の中には、ESG情報は企業の業績とは必ずしも関係なく、そのため消極的に見ているところも多いような印象を持ちます。

一方、GPIFのように国民年金を運用するところでは、超長期的視点で運用するため、そのためには、短期的な企業業績よりも長期での企業の本当の体力を測るESG情報が重要といわれています。

短期目線で運用をする運用会社にとっては、企業の株価があがるかどうか、つまり業績が良いか悪いかに関心があるのであり、一方で、10年、20年のスパンで運用する運用会社は、投資先企業の業績がこの先2~3年絶好調であっても、その先の業績は読めないのが通常であり、となるとその判断の拠り所はESG情報ということかと思います。

しかし、よく考えると、企業のESG情報を見ても企業が将来長期に亘って存続するのかどうかの判断はとても難しく、その上、運用会社は事業運営の経験・ノウハウがない中で、企業のESG情報をどこまで判断できるのか疑問があります。ガバナンスがしっかりしていれば、企業が長期に亘って存続するというものでもないかと思います。

そのためには、企業がESG情報を開示するのも重要ですが、開示した情報を十分に理解できるよう運用会社のアナリスト等の担当者の能力向上も同時に必要になります。

今の運用会社は、新人でさえ「来期の着地見通しは?」というように数値しか投資先企業との対話で質問しないことがほとんどで、このため、企業の事業について理解できる能力を持つアナリストが極めて少ないということも時々耳にします。

事業を良く理解していない運用会社が、良く分からないESGのインデックスを設定して、それに企業が引きずられないようにするには、企業も運用会社との対話を通じて、事業の戦略、事業の方向性等を積極的に開示し、ある意味、「運用会社を教育していく」ということが自社が適切に資本市場から評価される上において、今後重要になってくるのかも知れません。

金融庁がコーポレートガバナンス・コード改訂案及び投資家と企業の対話ガイドラインを公表

3月26日に金融庁コーポレートガバナンス・コード改定案、投資家と企業の対話ガイドライン案を公表しました。

金融庁のホームページを見ますと、対話ガイドラインについては、本年4月29日までにパブリックコメントを受け付けるということのようです。

コーポレートガバナンス・コードの改訂案は、第15回のフォローアップ会議で公表されたものとほぼ変わりありませんが、今回の改訂において上場企業にとって大きな課題になるのは、次の事項の開示が求められることかと思います。

① 政策保有株式の縮減方針・考え方
② 個別銘柄別の保有目的の適否に関する検証
③ 政策保有株式の具体的な議決権行使基準
企業年金のアセットオーナーとしての人事面・運営面における取組み内容
⑤ 経営陣幹部の選解任の方針・手続

改訂案では、これらの事項について、上場企業は開示することが求められます。金融庁の公表を受けて、東証では、上場企業に対する説明会を開催し、今回のガバナンスコートと対話ガイドラインに対する企業の実務対応について説明をするようです。

政策保有株式の縮減やアセットオーナーとしての取組みなどは、多くの企業にとってすぐには対応できないものであるとは思いますが、実務上は今後対応して行かざるをえないことになります。

ちなみに、コーポレートガバナンス・コードは、私的自治を基本とする、いわゆるソフトローになります。企業にはコーポレートガバナンス・コードのコンプライ又はエクス
プレインが求められ、コードで規定する原則が実施できない場合には、その理由を説明することが求められます。

ただし、理由の説明といっても、「実施するつもりはありません」といった単純な説明では、株主・投資家には説明がつかないことと思います。上場企業の規模や種類にもよりますが、基本的には上場企業には、コードの遵守が求められるのであり、それが実施できないということであれば、しかるべき理由を説明する必要があります。

オアシス・マネジメントによるGMOインターネツトに対する株主提案が否決

物言う株主のオアシス・マネジメントが総合IT企業のGMOインターネットに対して3月21日に開催された定時株主総会において株主提案をしていましたが、株主総会では、株主提案は否決されました。

株主提案は、買収防衛策の廃止、買収防衛策の導入方法の株主総会承認スキームの変更などになります。

株主総会の議案別の賛成比率については、発行体企業は、EDINETで関東財財務局宛に臨時報告書を提出することになるところ、株主総会翌日の3月22日にGMOインターネットは、臨時報告書を提出しており、株主提案議案に対する賛成率が開示されていました。

<主な株主提案>
買収防衛策の廃止                賛成率  44.8%
買収防衛策の導入方法に関する定款変更案     賛成率  44.3%
指名委員会等設置会社への以降に関する定款変更案 賛成率  15.8%

これを見ると、買収防衛策の廃止、仮に継続するとしても導入方法を取締役会決議から株主総会決議に変更するという手法に関する株主提案は否決されたものの、40%を超える賛成率があったことが注目すべき事項になります。

機関投資家GMOインターネット株式の保有比率は不明ですが、議決権行使の個別開示の動きの中、株主提案であっても買収防衛策議案は廃止する声がかなり高いことがこれで分かります。

本年の定時株主総会で買収防衛策の更新期を迎える企業も多いと思いますが、更新しないことを決議した企業のプレスリリースも最近時々目にしております。3月決算期の株主総会が6月下旬ですので、おそらく4月下旬から5月中旬頃にかけて買収防衛策の廃止に関するプレスリリースが増えていくのではないでしょうか。

今回のコーポレーガバナンス・コードの改定案では、買収防衛策に関する原則は見直しをされていません。

しかし、買収防衛策は、2007年頃に経産省企業価値向上に関するガイドラインを出して既に10年以上が経過し、当時は、スティールパートナーズなどが50%以上の株式を取得し経営権を支配するのが物言う株主の動きでしたが、今は、物言う株主が少数の株式を取得した上で、他の一般株主や機関投資家の賛同を得て企業に提案を行うというスタイルに大きく変化しています。

2007年頃は私は買収防衛策に全く関わっていませんでしたので、当時の企業価値研究会の出した企業価値ガイドラインは読んでいないのですが(今となってはガイドラインは古いですが)、今後は、買収防衛策の廃止が増える中、買収防衛策のあり方に関して経産省が何らかのガイドラインの策定に取り組むことになるのか関心があります。

グループ会社間でも企業統治の透明性が求められるか

3月23日の日本経済新聞スクランブルに「身内」提案も真剣勝負とのタイトルで同じグループ企業からの株主提案の動きについて記載されていました。

株式会社UACJの筆頭株主である古川電工(24.9%出資)がUACJの役員人事案に対して見直しを提案しており、同じくUACJの第2位株主である新日鉄住金(7.7%出資)も古川電工の株主提案に同調しているのことです。

また、記事によれば、昨年、ある大手総合商社が、上場グループ企業に対して、役員人事に関する株主提案を検討していたとのことです。

これまでグループ会社の株主総会における会社提案議案に対して、親会社などのグループ会社が株主提案という法的措置を講じるということは、あまり聞いたことがありませんでしたが、企業グループ内での真剣勝負が増えているという記事の内容です。

この背景はどこにあるのでしょうか。

これは企業統治改革(コーポレートガバナンス改革)による、投資先企業に対する議決権行使の適切化の流れにあるように思えます。

コーポレートガバナン・コードの改訂案においては、政策保有株式に対する議決権行使基準の開示、議決権行使基準に基づく適切な議決権行使が求められています。これがさらに発展し、政策保有株式として投資先企業の会社提案議案に対する「反対」「賛成」といった単なる議決権行使のみならず、さらに一歩踏み込むと株主提案まで向かうということになります。ただし、コーポレートガバナンス・コードでは、議決権の適切な行使を超えて株主提案の行使までは求められていませんので、UACJのようなケースが一般化するとは思えません。

ところで、政策保有株式ですが、この言葉自体を知らない方はいないと思いますが、正確な定義は理解しているでしょうか。

金融庁のホームページに詳細が掲載されていますが、バランスシートに計上されている「投資有価証券」に該当する株式のうち、保有目的が「純投資目的」以外の目的であるものを政策保有株式といいます。有価証券報告書においては、その銘柄数及び貸借対照表計上額の合計額を開示します。

なお、「純投資目的」とは、専ら株式の価値の変動又は配当の受領によって利益を得ることを目的とすることをいいますが、これは会社の主観の問題であり、より具体的な中身、基準や運用については、各企業社の経営判断に従うことになります。

グループ企業であっても上場企業である以上は、大勢の少数株主が存在しており、不祥事を起こした企業には、機関投資家は反対票を投じることから、政策保有株式として投資するグループ企業で不祥事があった場合には、会社の提案する役員人事案に対しては「反対」票を行使することが今後は求められます。

 

対決型株主総会の増加を踏まえた上場企業の本年の株主総会での準備の視点

3月21日の日本経済新聞の19面に「3月総会 増える対決型」との記事がありました。物言う株主の活動の活発化により、株主提案が3月総会で過去最高になっており、企業と株主が対峙するケースが増加しているということです。

ブログでも何度も書いていますが、スチュワードシップ・コードの改訂により、機関投資家の議決権行使の個別開示が求められることになり、機関投資家は、株主提案が合理的な内容であればこれに賛成を投じるケースも増え、物言う株主の力が増加していることが背景にあります。

米国では、物言う株主が提案をして、これに賛同する機関投資家も多く、結果、株主提案が可決されるケースも多いですが、新聞記事の中で早稲田大学の教授の宮島英昭氏という方の意見として、日本も「米国型総会まであと一歩のところまで来ている」とありました。

3月中旬に入り、6月の株主総会に向け準備に本腰を入れ始めた上場企業も多いと思います。

本年はコーポレートガバナンス・コードの改訂(以下「改訂CGコード」)も予定されており、6月の定時株主総会シーズンからこの改訂CGコードが適用されるとの報道もなされていたります。2015年のコーポレートガバナンス・コードの制定の際には、適用までに6ヵ月の猶予期間がおかれましたが、今回は5月の改訂後に直ちに適用されるのではないかということです。

もし、そうであれば、6月の定時株主総会において、「改訂CGコードの対応はどうなっているのか?」という指摘が株主から出る可能性もあります。政策保有株式の縮減方針や保有の意義の見直しなどが改訂CGコードの目玉と思いますが、このあたりは企業にとってつつかれると嫌な箇所と思いますが、上場企業は本年の株主総会の準備の中で改訂CGコードの対応準備も必要と思います。

念のためですが、土産目的で株主総会に出席している、定年した一般サラリーマン株主や個人株主などの素人はこんな高度な質問はできないし、仮に質問をしても、所詮は素人に毛が生えた程度なので適当にあしらえば済むのですが、問題は物言う株主であるプロのアクティビストが出現した場合です。ファイナンスコーポレートガバナンスに精通した物言う株主は、大手法律事務所を起用することもあり、十分に注意する必要があります。

上場企業は、3月末の株主が確定した時点で、株主の実質株主判明調査を行うと思いますが、その結果がゴールデンウィーク前後で出てきて、その時点で物言う株主が株式を保有しているということが判明することもあります。しかし、この時点でばたばたと改訂CGコード対応などをはじめると大変です。

従って、物言う株主が存在しているという前提で、まだ余裕のある今の段階から準備することが重要になってくるように思えます。

野村アセットマネジメントなどは株主提案に賛成するケースを明確に議決権行使基準に規定していますので、物言う株主が存在し、仮に野村アセットの基準に即した株主提案をして来た場合に、企業としてはどういう反論をすべきかというように、機関投資家各社の議決権行使基準を確認した上で、きちんと整理しておくことが重要と思います。

各国の上場企業の女性取締役比率

前回、コーポレートガバナンス・コードの改定案が公表されたことを書きましたが、改定案では、取締役会の構成としてジェンダーや国際性も明記されています。

金融庁のホームページから、第14回フォローアップ会議の議事録を見ますと、女性の委員から、ジェンダーと外国人の取締役の登用の話が出ており、それもあって、第15回会議で公表された改定案に盛り込まれたものと思います。

そのような中、3月17日の日本経済新聞に54ヵ国の上場企業を対象にした女性取締役の比率の統計データが掲載されていました。各国の上場企業で統計のとれる限りにおいて女性取締役が1名以上いる企業の比率のようです。

Quick・ファクトセットの協力を得て、日本経済新聞が調べたようですが、次のような内容です。

第1位 ノルウェー89%、第2位 インド 88%、第3位 中国 86%、

第11位 米国 69%、第49位 日本 20%、第50位 ヨルダン19%、第51位 クウェート 16%、第52位  アラブ 14%、第53位 韓国 13%、第54位 サウジアラビア 6%

日本は54ヵ国中、第49位ということで主要経済国の中では最下位のようです。また、韓国が非常に低いことも少々驚きました。

この数字をあらためて見ると、日本では、1986年に男女雇用機会均等法が施行されてから30年が経過するのに上場企業は何をしてきたのかという意見にも納得できます。

たしかに女性が総合職になれる道は出来たのですが、結局、出産後も勤務が継続できるよう男性のサポートを促進するような制度を全く真剣に考えていなかったことが、問題の根本にあるのではないでしょうか。男性の育児休暇制度も各社ありますが、馬鹿正直にこの制度をフルに活用する男性社員は、私の友人はじめ誰からも聞いたことはありません。

女性取締役の起用については、過去の何度かこのブログでも書いていますので、繰り返しになるので詳細はもう書きませんが、女性社員が、2人以上の子供を出産しても普通に仕事が出来る環境を日本の上場企業は早急に整えることが迫られそうです。

なお、ここで1度良く考えるべきことは上場の意義です。

そもそも上場企業でいるがゆえに、上場企業に限定して適用されるコーポレーガバナンス・コードの対応などが必要になるので、自社の上場の意義をあらためて考え直し、今後とも資本市場での資金調達の必要のない会社、つまりデット・ファイナンスで十分にやっていける、または過去にエクイティーファイナンスなど一度もやったことのない上場企業は、上場を廃止することが最も効率的であるかも知れません。

この点、上場を廃止すると優秀な学生が来ないので採用において困るという話も決まって話題にでます(なお、何をもって「優秀な学生」というかですが、短時間で大量の学生と面接する企業の新卒採用においては、学生の本当の頭の良さなどは、かなり高い確率で判断は不能であるため、優秀な学生=偏差値の高い大学を出た学生ということと思います)。

しかし、冷静に考えると上場していても、例えば、中堅規模以下の企業には、そもそも偏差値の高い優秀な大学を出た学生が新卒で来ることは非常にレアです。とりあえず大学は出ているけど、名前も聞いたことのない私立大学の文系の学生などしか採用出来ていないのが中堅規模の上場企業の多くのような気がします。別に統計データを見たわけではないのですが、証券会社の投資銀行時代に中堅上場企業と会話をする中で、そういったランクの大学出身者であったことが多かった記憶があります。

このようにランクの低い大学の新卒の学生しか採用できない企業の規模であれば、上場など思い切り廃止して、かわりにCMはじめマスメディアへの露出をばんばん増やし、企業PRした方が、新卒の学生の採用にあたっては効果的なような気がします。

コーポレートガバナンス・コードの改定案が公表

先日の日本経済新聞金融庁が企業指針改定案公表との記事が出ましたが、これは3月13日開催の第15回の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」において、コーポレートガバナンス・コードの改訂案が提示されたことをいっています。

金融庁のホームページから、コーポレートガバナンス・コードの改定案を見ますと、政策保有株式、企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮、CEO解任手続きの確立、取締役会の多様性、事業ポートフォリオの見直しを含む経営資源の配分についての株主への分かりやすい説明等が改定内容となっています。

この中で企業の実務に一番大きな影響を与えるのは、政策保有株式になるのではないかと思います。コーポレートガバナンス・コード改訂案での政策保有株式に関する記述を抜粋すると次のとおりになります。

 

「上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。」

 

簡単にいいますと、政策保有株式の縮減方針を開示するとともに、保有する政策保有株式は個別に保有の適否を検証するとともに、検証内容を開示し、政策保有株式に関する具体的な議決権行使基準を開示せよということです。要するに、資本・業務提携等の理由なく保有する関係は解消せよということです。

企業にとっては、政策保有株式の縮減により安定株主が大きく減るわけですので非常にインパクトが大きかと思います。

政策保有株主の比率は、当然ながら企業によって異なりますが、少し記憶が曖昧ですが、日本企業の平均は35%程度あるという資料も見たことがあります。これが崩れるということは企業にとってインパクトが非常に大きいと思います。

つまり、安定株主が減るということは、株主総会の議案について会社提案について賛同を得らないケースも出てきますし、アクティビスト等の物言う株主の提案に対して賛同する株主も増えることになるということです。

以前に一橋大学の伊藤教授が何かのセミナーで「2018年はアクティビスト元年になる」と言っていた記憶もありますが、その通りの方向に向かっているとこの改訂案を見て感じました。

では上場企業としては、どうすればよいかというと、①資本市場での資金調達も行わないのであれば思いきって上場を廃止する(これにより、IR部門や経理部門の決算業務にかかる人員が不要になるので、この部門の人員をリストラすることで大きくコスト削減もできます)、②上場を継続するとした場合には、自社の経営について、常に資本市場関係者の目線に立ち客観的に分析し、機関投資家との対話を十分に行い、機関投資家を「準安定株主」とすることが大事になります。

いわゆるSR活動(Shareholder Relations活動)を今後は益々重視していく必要があるのではないでしょうか。

日本ペイントホールディングスが取締役選任に関する株主提案に賛成

2018年3月1日に日本ペイントホールディングス(以下「日本ペイント」)が、シンガポール大手塗料メーカーであり、日本ペイント筆頭株主であるウットラムからの株主提案に対して、取締役会は賛成する旨のプレスリリースを出しました。

株主提案が出された場合、これに反対する場合には、株主総会の招集通知に取締役会は反対するということで取締役会は反対の理由を記載して、株主提案への賛同を株主総会での株主の判断に委ねることになります。

日本ペイントのプレスリリースによれば、日本ペイントは、株主提案に記載されている取締役候補者を会社提案の取締役に含めて取締役議案として株主総会の招集通知を発送することになります。

ウットラムの推す取締役は、日本ペイントの取締役10名の中、日本ペイントの取締役であるゴー・ハップジン氏を含め6名を占めることになります。

ウットラムの日本ペイントへの出資比率は39%ですので、株主総会での議決権を通じて日本ペイントを支配することはできませんでしたが、取締役会の決議は、出席取締役の過半数で決議されるので取締役会の過半数を自社サイドの取締役が占めることで、ウットラムは取締役会、つまり経営を支配することができます。

日本経済新聞におけるゴー氏の記者会見でのコメントが、「(取締役候補者の)5人は自分の言いなりになる人物ではない」と強調したようです。普通であれば、半数以上の取締役を派遣すれば支配しているのと等しいのですが、あえてそうではないと強調しています。「乗っ取りではないのか?」との風評を気にしてのことと容易に想像します。

あらためて5名の経歴を見ますと、大手法律律事務所の弁護士などもおり、たしかにゴー氏のコメントも一理あるかも知れませんが、ウットラムが推す取締役が、ウットラムの総帥であるゴー氏に反対や異議を述べるということは通常は考えにくいように思えます。

新聞報道によれば、日本ペイント社外取締役5名のうち、3~4名にとどめる方向を摸索していたようですので、その後の交渉でやむなくこの人数の取締役を受け入れたこになります。

今回の株主提案に対しては、法的には日本ペイントの取締役会は反対するということも可能でした。しかし、既にウットラムが39%の株式を保有しており、ウットラムが残り11%超の賛成票を獲得するには、委任状争奪戦に発展することになりますが、日本ペイントは勝算も低く、争った場合の世間からの印象も考えるとメリットはないと判断したことによるのではないでしょうか。

先日、村上ファンド社外取締役を送り込んだ黒田電気はその後、上場廃止となりましたが、日本ペイントの今後の行方も気になります。

ROEは約7%ですが、このあたりが今後株主還元を増やして、向上するのか経営指標を時々見て行きたいと思います。

香港投資ファンドのオアシスがGMOの株主に対して株主提案を推奨

先日、GMOインターネット(以下「GMO」)の株主提案に対してGMOの定時株主総会の招集通知において、取締役会の反対意見が掲載されていることを紹介しましたが、これに対して、3月9日付けで投資会社であるオアシスより、取締役会意見に対する反論が報道関係者宛として公表されました。

報道機関宛に公表することでマスコミを通じて周知し、最終的にはGMOの株主にオアシスの株主提案への賛同を促うことを狙いとしています。

オアシスの反論をかなりコンパクトに纏めると次のような内容になります。

GMOは、買収防衛策は株主共同の利益を重視するといいながらも、GMOの大株主である熊谷氏の意思で支配された取締役会において、熊谷氏以外の株主利益に配慮した判断がなされる可能性は低い

②買収防衛策の発動を検討する独立委員会に委員の独立性がない

しかし書いてはみたものの、少しコンパクトすぎるので、オアシスの意見書からの抜粋も次のとおり記載します。

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「オアシス株主提案に対するGMOインターネット株式会社の取締役会意見について」
(平成30年3月9日付)より一部抜粋

GMOインターネットは、大規模買付行為を受け入れるか否かは最終的には株主によって判断されるべきと説明しているにもかかわらず、現在同社が採用する買収防衛策は、その導入に際して株主の意見を確認しておらず、更に、実質的には株主の意見を確認する事なく取締役会の判断で発動する事ができる仕組みです。これは、GMOインターネット取締役会意見における対外的な説明とは大きく実態が乖離しているとオアシスは考えます。

GMOインターネットは、株主共同の利益を重視していると説明しているものの、弊社が従前のプレスリリースで指摘した2007年当時の外資系ファンドからの買収提案を熊谷氏が独断で断ったという対応に代表される様に(その他の熊谷氏の公私混同の疑義のある取引については下記の通り)、根本的な問題として、最大株主且つ代表取締役会長兼社長である熊谷氏とその他の株主の利益が相反する場合が存在します。熊谷氏が非常に大きな影響力を及ぼす事ができる同社の現状のガバナンス体制下においては、同社の取締役会において、真に熊谷氏以外の株主の利益に配慮した判断がなされる可能性は極めて低いとオアシスは考えます。

・加えて、以下の観点から、GMOインターネット社外取締役2名と社外の専門家2名(そのうち1名はGMOインターネットの元社外監査役)で構成される特別委員会が真に独立した立場にはなく、その勧告内容に客観性は認められない(熊谷氏の意向を尊重するバイアスがかかっている)とオアシスは考えます。
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オアシスの意見を読む限り極めて的を得たものとなっていると私は感じます。

特に独立委員会の独立性は、機関投資家が強く要求するところであり、オアシスの資料によれば、独立委員会の委員である社外取締役が、過去14年間GMOの役員であったとあります。社外取取締役も任期が長いと独立性がないと機関投資家は判断するケースが多いと思います。

GMOでは、何故このような方を独立委員会の委員にしていたのでしょうか。

これは私の推測ですが、恐らく、これまで株主総会で買収防衛策を導入・更新するというスキームになっていなかったので、買収防衛策に対する世間の動きにGMOは疎かったのではと考えます。

買収防衛策を株主総会で更新継続する企業は(このタイプが圧倒的多数ですが)、更新の際には機関投資家を事前に訪問して議案説明をしますが、GMOの独立委員のような構成では反対されるということは容易に分かるはずです。

従って、買収防衛策の導入・継続更新を株主総会で議案上程する場合には、独立委員会の委員の独立性には十分に配慮することになります。

おそらく今回の株主提案に賛同する機関投資家は、かなり多いのではないでしょうか。より具体的にいいますと、議決権行使結果の個別開示が必要とされる現状の環境下では、オアシスの「株主提案」に対して、機関投資家は「反対」との議決権行使は出来ないのではないかということです。

勿論、機関投資家保有比率が不明ですので、もし比率が低ければ、いくら賛成しても結果には影響を与えることにはありません。

ちなみに、このオアシスの提案書では、冒頭に「日本法大手法律事務所と共に精査しました」と記載されています。大手法律事務所というと、通常は、西村あさひ法律事務所、森・濱田松本法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所あたりを指します。どこの法律事務所を業者として起用したかは不明ではあります。