コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

半導体の今後の予測は?-SEMIによる2019年の販売見通しは18%減

新聞でも報道されていましたが、半導体製造装置の減速が鮮明のようです。

7月9日に国際半導体製造装置材料協会(SEMI)が2019年の半導体製造装置の販売額見通しを公表していますが、2019年の半導体装置の販売額は527億ドル(約5兆7千億円)と前年比18%減とのことです。

従来予測は8%減でしたが、大きく下方修正したようです。理由はいうまでもなく米中貿易演奏による世界景気の減速懸念かと思います。

また、1ヵ月ほど前の6月4日には、世界半導体市場市場統計(WASTS)が2019年の半導体市場規模が4,120億ドル(約44兆円)と前年比12%減ということを公表しています。

半導体関連銘柄の代表ですと東京エレクトロンアドバンテスト、ディスコ、日立ハイテクニコンSCREENホールディングスなどがありますが、各社の2019年3月期の決算短信で2020年3月期の予想数値を見ると厳しい状況になっています。

東京エレクトロンは、2018年に発表した3年間の中期経営計画を見直し、達成時期を5年以内と先送りしています。

SEMIは、2020年の半導体装置販売は2019年比で12%増と予測しています。理由は、次世代通信規格の5Gの普及などをあげています。5GIOTにより、半導体は中長期的には明るいということは良く言われており、先ほどの各社も同じようなことを今後の見通しで言っています。2019年後半から回復との予想も多いです。

個人的にニレコ(6863)という会社(時価総額約70億円/7月12日時点)に関心があるのですが、この会社は鉄鋼、半導体FPDの影響を受けるので、半導体関連の今後の動向が非常に気になるところです。

株価が底になったところで買いたいのですが。ニレコはキャッシュリッチで技術力の評価の高い企業です。政策保有株式も潤沢にあり、アクティビストに狙われてもよい会社の気もします。アクティビストが取得した時点で買いを入れるということもありかと思います。

3月期決算企業の第1四半期決算が7月下旬から8月上旬にかけて始まりますが、半導体関連動向は引き続き注視したいと思います。

 

 

戸田建設と英国の投資ファンドであるシルチェスターの攻防の行方~買収防衛策の発動の可能性

今回は、私も株主である安藤ハザマのコーポレート・ガバナンスの観点からの課題(政策保有株式)を記載する予定でしたが、少し分量が多くなり、文章を作るのに結構時間がかかるので、週末に考えるとして、前回、少し触れたシルチェスターと戸田建設の買収防衛策について、本日は簡単に触れてみたいと思います。

アクティビスト(物言う株主)であるシルチェスターが戸田建設の株式を13.1%保有しています(2019年7月2日の大量保有報告書)。一方、戸田建設は、2017年に株主総会の承認を経て買収防衛策を継続更新しています。

買収防衛策の詳細は、プレスリリースを開示していますが、私がさっと斜め読みをしてポイントをあげると次のとおりです。

  •  対抗措置を発動できる場合は、20%以上の株式取得の場合(市場内外の取得問わず)
  • この場合には、戸田建設は大量買付者には一定の情報提供などを求める
  • 大量買付者が戸田建設企業価値・株主共同の利益を損うと取締役会が判断する場合、独立委員会の勧告を受け、取締役会で対抗措置発動の是非を決議する など

買収防衛策は大量買付者を含め全株主に新株予約権を無償で割当てるが、大量買付者のみが新株予約権を行使できず、結果、大量買付者の保有比率を稀釈化させるというものです。

しかし、買収防衛策の問題は(戸田建設のスキームは多くの企業の買収防衛策のスキームと同じですが)、有効性が必ずしも保証できないという点です。そもそも、極めて差別的な行使条件を付けた対抗措置であり、株主平等の原則の点で懸念があります。

勿論、2008年に発行された企業価値研究会レポートなどを踏まえての内容ではありますが、事前導入型の買収防衛策が裁判になった事例がなく、検証のしようがないのです。2008年前後のブルドックソース事件やニッポン放送事件等から、事前警告型の買収防衛策を、日本の大手法律事務所が策定したのですが、買収防衛策の適用事例がないため、裁判で争われた場合の有効性は不明です。

シルチェスターが20%以上の株式を取得することになり、戸田建設が買収防衛策を発動し、シルチェスターが裁判で差止めを求めた場合、どちらが勝つか分からないということになります。

 シルチェスターが13%まで株式を保有している状況下では、戸田建設は、買収防衛策に基づく対抗措置発動も視野に入れて、大手法律事務所と万一の発動に向けての詳細やりとりを進めているようにも想像できます。

これが発動になった場合、非常に注目を浴びると思います。

最近は、買収防衛策に対する機関投資家の反対も強く、株主総会での賛成が得られないことを理由に買収防衛策を廃止する企業も増えていますが、この行方にも影響を与えます。

戸田建設とシルチェスターの攻防は、安藤ハザマと香港の投資ファンドのオアシスマネジメントの攻防と同様に今後も注視したいと思います。

準大手ゼネコン各社のキャッシュの潤沢度合い-アクティビストに狙われる背景

少し前の週刊ダイヤモンドの記事にありましたが、ドメスティック業界の代表格である建設業界にアクティビストが入っています。

英国の投資ファンドであるシルチェスター・インベストメントが戸田建設、前田道路、奥村組に、香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントが安藤ハザマの株式を取得しているといった状況にあります。

いずれも準大手クラスのゼネコンです。清水建設大林組などスーパーゼネコンに入っているとの報道は目にしていません。

週刊ダイヤモンドの記事によれば、取得の背景は、ゼネコン各社がキャッシュリッチであるということです。

実際にどうなのか、先日の日曜日に各社の2019年3月期の有価証券報告書保有するキャッシュの状況について調べてみました。以下は、ネットキャッシュの一覧になります。

なお、 ネットキャッシュは、「現金・現金同等物(キャッシュフロー計算書の数値)+有価証券+純投資目的以外の投資上場株式(いわゆる政策保有株式)-有利子負債」で算出しています。つまり、政策保有株式も加えております。また、政策保有株式の金額と保有銘柄は括弧内に表記しております。

  •  安藤ハザマ 1,410億円(政策保有株式  191億円、58銘柄)
  • 長谷工    1,122億円(政策保有株式  169億円 6銘柄)
  • 戸田建設   1,181億円(政策保有株式 1,535億円、118銘柄)
  • 前田道路     860億円(政策保有株式  138億円、20銘柄)
  • 熊谷組      786億円(政策保有株式   90億円、11銘柄)
  • 前田建設     427億円(政策保有株式  853億円、97銘柄)
  • 西松建設     122億円(政策保有株式  668億円、75銘柄)

目につくのは、戸田建設の政策保有株式の金額の大きさです。戸田建設は買収防衛策も有しております。これだけの政策保有株式があれば、シルチェスターが狙うのも分かります。7月2日の大量保有報告書によれば、シルチェスターの戸田建設株式の保有比率は13.1%です。

戸田建設は2017年に買収防衛策を継続更新していますが、20%以上の株式取得にならないと発動できないスキームになっています(一般的なスキームかと思います)。従って、シルチェスターが20%取得した場合には防衛策を発動できるので、買収防衛策の有効性が争われるはじめての事例になるよう、個人的には、シルチェスターには20%超を取得して欲しいところです(多分取得しないと想像はしますが)。

 では、次にネットキャッシュが、各社の総資産(2019年3月末時点)に占める比率を算出しました。資産全体の中でどの程度の割合を占めるかです。

安藤ハザマ 40.3%、前田道路 29.7%、熊谷組 22.2%、戸田建設  17.7%、長谷工 14.5%、前田建設 5.9%、西松建設 2.6%、

安藤ハザマは、上のとおり算定する限りでは、キャッシュ保有比率がとても潤沢といえます。資産の半分近くを余剰資産が占めるということです。

資産が大きいということは、総資産回転率が低下し、これがROAの低下、ひいてはROEの低下に結びつきます。

新聞報道によるとオアシスは3万株程度を保有しているというようです。3万株とは安藤ハザマの発行済株式総数の1%以下ですが、株主提案が出来る最低の保有株式数(300単元)です。現にオアシスは本年の安藤ハザマの株主総会で株主提案をしております(内容自体は、一見するとくだらない提案ですが、これには狙いがあると想像します)。

 オアシスが今後株主価値向上に資する施策を積極的に取り組むことと、今後、どういう提案をしていくのかにとても関心があり、私はオアシスの取得後に、安藤ハザマの株式を購入しました。

さすがに1個人で安藤ハザマの株式30,000株を購入するには、資金が約2,000万円超必要になるので、現在の投資銘柄を全て売却しても少し厳しいので(安藤ハザマ銘柄の1点集中という極めてリスキーな考えもありますが)、オアシスの提案に今後機関投資家が追随し、株価が上昇することを期待して、私の想像するオアシスの株主提案の狙い、安藤ハザマのコーポレートガバナンス上の弱点について株主として考えるところを次回のブログで紹介したいと思います。

多角化事業を行う上場企業の事業ポートフォリオマネジメントのあり方~経産省「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」より

先日、経産省の「グループ・ガバナンス・システムの実務指針」(ガイドライン)が制定されたことを紹介しました。

今回は、このガイドラインの中で規定されている事業ポートフォリオマネジメントのあり方について紹介したいと思います。

ガイドラインでは、複数の事業セグメントを持つ多角化企業の事業ポートフォリオマネジメントのあり方について、会社が行うべき内容として、次のような事項が規定されています。

  •  グループ全体の事業ポートフォリオについて、定期的に見直しを行い、最適化を図るべき
  • 自社のコア事業を見極め、強化のためのM&Aとノンコア事業の整理を通じ、コア事業に対する集中投資が重要
  • グループ本社の取締役会において、経済合理性に基づく冷静な議論が行われるよう、社外取締役の主体的な関与が重要など

要は、現在の事業ポートフォリオを「良し」としたままにするのではなく、撤退を含む見直し基準を策定して、それに沿って経済合理性の観点から、冷静な判断を行うべきであり、そのためには、元社長経験者をトップとする社内のサラリーマン組織のしがらみを気にすることなく意見が言えるは、社外取締役しかいないため、社外取締役にその役割を強く期待するということかと思います。

なかなか厳しいことを要求していると思います。ガイドラインの中では、撤退時機の機を逸して事業が赤字転落すると売却も困難となるため、ノンコア事業の撤退は早めに判断することが肝要であるというようなことも規定されています。

これは、上場企業を対象としたガイドラインですので、勿論ですが、拘束力はありません。

しかし、経産省が作成したものですから、「所詮ガイドラインですから当社は関係ありません」と無視するわけにもいきません。特に投資家は、この内容にそって企業に対応の是非を質問してくるとことが容易に想像できます。

企業としては、事業ポートフォリオの見直しをしないのであれば、現状のポートフォリオが十分であることを説明する必要があります。

アクティビストは、バランスシート改善に絡めて株主還元、政策保有株式の売却をここ数年は要求し、最近は、取締役の交代を求める動きが本年の株主総会では多かったですが、これからはこのガイドラインを根拠にノンコア事業の売却を求める動きが増えるように思えます。

ノンコア事業の売却資金をコア事業への投資に向けることで会社の営業利益率の改善による株価の向上、事業売却代金の株主還元などです。

 さて、次回ですが、少し前の週刊ダイヤモンド投資ファンドがゼネコンを標的にしているという記事がありました。これを受けて、ゼネコン各社(アクティビストが狙っている準大手)のキャッシュ、政策保有株式等の状況を各社の有価証券報告書から分析しましたので、これについて紹介したいと思います。

上場子会社とその親会社が今後留意すべき事項-経産省の「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」の制定を受けて

 

済産業省のCGS研究会(第2期)でこれまで議論が進められてきた「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」が6月28日に策定・公表されました。

2018年のコーポレートガバナンス・コードの改訂は、単体としての在り方に重点が置かれていましたが、今回の実務指針(ガイドライン)はグループとしてのガバナンスの在り方について規定されています。

その中で、上場子会社に対するガバナンスのあり方も規定されています。

2018年度に支配株主がいる上場企業は628社で、親会社が上場企業である上場子会社は311社とのことですが、このガイドラインでは、上場子会社のあり方について規定されています。上場子会社は欧米では極めて少ないところ、日本では上場子会社の数が多いところ、上場企業でありながら、少数株主の意見が経営に反映されないことが批判を受けているところです。

ガイドラインでは、親会社における対応の在り方と上場子会社におけるガバナンス体制のあり方について次のとおり規定されています。

 <親会社における対応の在り方> 

  • 上場子会社として維持することが最適であるか定期的に点検するととともに、合理的理由や上場子会社のガバナンス体制の実効性確保について取締役会で審議し、投資家に情報開示をする

<上場子会社におけるガバナンス体制の在り方>

  • 上場子会社の独立社外取締役は、親会社からの独立性も求められる
  • 上場子会社の独立社外取締役は、10年以内に親会社に所属していた者を選任しないこととすべき
  • 一般株主の利益を保護するという重要役割を担える人物であるかを確認の上、指名・選任が行われるべき
  • 取締役会における独立社外取締役の比率を高めること(1/3以上や過半数等)を目指すことが基本。これが直ちに困難な場合にも、重要な利益相反取引については、独立社外取締役(又は独立社外監査役)を中心とした委員会で審議・検討を行う仕組みを導入することを検討すべき

上場の意義は資本市場からの資金調達ですが、ガイドラインによれば、企業アンケート結果として、上場企業としてのブランドやステータス維持などをあげる企業が多く、資金調達目的は少数とのことです。

私は、これに加え、上場子会社は親会社の幹部クラス社員の受け入れとしての要素も強いのではと考えます。

親会社で役員になれず、部長クラスで昇格がとまった一般従業員が、役員に昇格した同期や後輩に不満を持たないよう、子会社の中でも上場している子会社の役員又は理事ななどの肩書きを与えて不満を解消させるということです。

しかし、資本市場の論理から、このようなくだらない理由が上場子会社を有する意義として認められるかと言えばもはや難しいでしょう。

上場維持するということは多大なコストがかかります。上場先の証券取引所に費用を払うほか、IRや決算、総会準備などの社内の人件費がかなりの額になります。上場廃止すればIR、決算関連業務、総会関連業務にかかわる人員は全て不要になり、リストラできるのです。

役員になれず出世から外れた一般従業員の受け入れ先とする、単にブランドを維持する(意味不明です)という理由は、投資家には全く説明はつかないと思います。

結局のところ、このガイドラインでは経済産業省は上場子会社の非上場化を求めていいることと思います。

いずれにせよ上場子会社を持つ場合には一定の対応が求められることになります。

このガイドラインでは、事業ポートフォリオの見直しについても詳細な内容が規定がされました。営業利益率の低い事業を持つ複数事業セグメントのある企業は、不採算事業の見直しについて、ガイドラインを根拠に今後は、機関投資家から厳しく問われるケースが増えます。

今週末はこれについて紹介したいと思います。

余剰キャッシュの使途としてM&Aを理由にする場合の投資家の受けとめ方

先週で上場企業各社の株主総会も終わったことと思います。本年の株主総会では、過去に比べてかなりの数の株主提案があったようですが、政策保有株式の売却等による資金の捻出とそれを原資とする配当増提案もあったかと思います。

この動きは来年以降も継続すると思いますが、余剰キャッシュの使途としてM&Aを理由にあげる企業も多いのではと思います。本日はこれについて、投資家はどのように受けとめるのか、また、個人投資家はどのように受けとめる必要があるのかについて触れてみたいと思います。

一定規模の上場会社によるMAは対象会社の規模にもよりますが、買収金額だけでも数十億円から数百億円かかるケースが多いです(これ以外に弁護士等の業者の費用がプラスされます)。従って、溜め込んだキャッシュの使途としてM&Aをあげるのは一応合理的です。しかし、問題は漫然と「M&Aをします」との説明だけでは投資家は納得しないということです。

特にM&A(他社の買収)をほとんどしたことのない会社(以後「M&A初心者企業」といいます)が決算説明会資料などで「M&Aの資金使途」とだけ書いていても、その実現度合いの信憑性は乏しいと受けとめられる可能性が高いです。

6月26日の日本経済新聞でPWCアドバイザリーの調査結果として、過去10年で海外M&Aに取り組んだ国内上場企業86社を対象に集計したところ、買収した海外企業の業績が当初計画を下回っていると回答した企業が約36%とのことです。実際にはもっと高い比率ではないかなと推測します。この結果だけに限らず、海外企業のM&Aは失敗の確率が非常に高いと言われております。

上場企業のM&Aというと海外M&Aを意味するところが多いかと思いますが、海外M&A成功の難易度が高いため、M&A初心者企業が「M&Aをやります」といっても、機関投資家からすると「どうせ失敗するのでは」と考えてしまいます。

失敗するのであれば、M&Aで強化するよりも、「強化しなければならない事業」は、強化することを努力するのではなく、価値のあるうちにさっさと売却して、その資金を株主に還元せよと投資家はいいたいところです。

M&A初心者企業が、余剰キャッシュについてM&Aの使途を主張するのであれば、①あえて難易度の高いM&Aを実施する具体的な領域・規模感、②M&Aを成功させるための社内体制について十分に説明することが必要ということになります。

①のM&Aの対象分野を具体的に説明するのも重要ですが、しかし、あまり具体的に開示することになると、競合他社に手の内をあかすことになるので限界があります。そこで、個人的には、②の点について、M&A部署の社内体制整備を示すことが投資家への説明に説得力があるのではないかなと思います。

具体的には、投資銀行出身者を中途採用したりしてM&A部門の強化を図り、それを説明することなどがあると思います。M&A初心者企業でM&Aの部署があるといっても、投資銀行出身者が「ゼロ」となると、本当に「大型のM&Aなどできるの?」という疑問を投資家は持ちます。

「うちは少数精鋭の部署です」といっても、M&Aの部署は、そもそも普段はほとんど仕事がないわけですから、見方によっては暇な人の集まりの部署と見られることになります。このような中で投資銀行銀行出身者がいないようだと、「本当に大型のM&Aなど出来るの?」という疑問を持たれることになるわけです。

個人投資家の方は、投資先銘柄の決算資料や中期経営計画資料でM&Aの取り組みとある場合、その一方で、株主還元が十分でない中、キャッシュが十分な場合には上記のような視点で投資先銘柄に質問をしてみるとよいかも知れません。

取締役候補者のスキルマトリックスを機関投資家が求める理由

数日前の日本経済新聞の記事によれば、取締役候補者の「スキルマトリックス」を作成する上場企業が増えているとのことです。

2019年の株主総会で20社がスキルマトリクスを導入し、2018年の6社から3倍超に増えているようです。とはいっても、上場企業全体数から見たらまだまだ少ないですが。

スキルマトリックスとは、取締役全員の名前が縦軸に記載され、横軸に専門分野・領域(設計、開発、購買、営業、財務、企画など)が記載され、各候補者毎に該当する箇所に「〇」が記載されているマトリックス表です。

これは何に使うのかというと、株主総会の取締役選任議案で使います。

取締役選任議案では、候補者の氏名以外に、略歴と候補者とした理由について記載することになりますが、多くの企業では数行にわたって文章で選任理由が人数分、書かれています。

しかし、機関投資家は総会シーズンには、膨大な数の投資先企業の招集通知を短時間で見て、取締役選任議案に賛否の判断をすることになりますが、文章だと読むのに時間がかかるので、簡単なマトリックスで時間をかけずに判断したいということが背景にあります。

米国では、記事によれば、2018年時点でS&P500採用銘柄の中、100超がマトリックスを導入しているようです。 

 元々が米国で主流の方法ですので、日本ではまだ数は少なく、現時点では躊躇する日本企業も多いように思います。その理由は良く分かりませんが、役員選任という重大な理由を単純なマトリックスという図にしてしまうことになんとなく違和感を覚えるのかも知れません。

しかし、現実には多くの日本の上場企業の招集通知を見ると、一般的なことしか記載されていません。私の投資銘柄のある小型銘柄の本年の株主総会の招集通知の取締役選任議案を見ると、次のような内容になっていいます。

「XXXX氏は、主力事業であるベントナイト事業に関する幅広い知識と豊富な経験を有するとともに、長年の営業経験から取引先からの信頼も厚く、それらの専門的見地を当社グループの経営に活かしていくため、引き続き取締役候補者といたしました。」

 他の候補者も基本的にこれと同じようなことが書かれています。

人数分の候補理由の文章を最後まで読んでもこの程度しか記載されていないのであれば、読む時間は可能な限り短くしたいというのが、機関投資家の切実な願いかと思います。

「信頼も厚く」と書かれていても、信頼の程度などはそもそも何ら客観的な判断ができない事項であり、ましてや個人商店でもないので、個人の信頼の有無どうのこうのを記載するのではなく、取締役会でどのような役割を果たせるかを記載すべきです。

纏めますとこの程度のことを文章でつらつら書くのであれば、短時間で議案の賛否を決めるためには、マトリックスにして、取締役全員のスキルが分かるようにしてくれというのは当然な考えかと思います。

 なお、ごく一部の企業は、個人毎の過去に関わった具体的なプロジェクト、達成した内容などを記載している会社がありますが、こういう企業であれば文章にして読んでもらいたいという意識は良く分かります。

基本的にコーポレートガバナンスは、米国の動きが数年後には日本でも一般的になるのが常ですから、来年の株主総会ではスキルマトリックスはさらに増えるかも知れません。

隠れたチャンピオン企業-投資先候補として

6月17日に経済産業省が「世界に活躍するグローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題」を公表しました。

グローバルニッチトップ企業(GNT企業と経済産業省はいっています)とは、2014年3月に経済産業省が選定した100社で、20%以上の世界シェアを保有し、利益をあげており、シェアの持続性があるなどの企業で上場・非上場企業になります。今回は5年後のGNT企業の現状と課題について纏めた内容になります。

色々と書かれてはいるのですが、全体的にアンケート結果で終わっており、特定の企業にフォーカスしたものではなく、正直、銘柄選定にはほとんど役に立たないレポートですが、2014年3月に経済産業省が公表したGTN企業100社のレポートの方は100社の特徴・事業内容が各社A4版の1枚にまとっまっているので、こちらは銘柄選定で結構有用かと思います。

さて、今回の調査結果はぱっとしないのですが、1点だけ面白い情報がありました。

それは「隠れたチャンピオン企業」です。

知っている方もいるかも知れませが、私は今回はじめて知りました。戦略・マーケティングのコンサル会社のサイモンクチャー&パートナーズの会長であり、北京の対外経済貿易大学の名誉教授であるハーマン・サイモン氏が、「Hidden Champions of the 21th Century(2009)」という書籍の中であげている言葉で、「世界各地で大成功を遂げているのに、目立たない存在としてカーテンの陰に隠れて、時には意図的に秘密のままでいようとする企業が多数存在する」と記しており、隠れたチャンピオン企業の定義は次のとおりです。

  • 世界市場で3位以内に入るか、大陸内で1位
  • 売上高が50億ユーロ(約6200億円)以下
  • 世間一般には知られていない

 この定義の下でグローバルで該当する企業をあげています。

書籍を読んでいないので、この単純な定義の下で、どうやって企業を探し出したのかは全く分かりませんが、経済産業省のレポートによれば、日本企業14社ほどが同書の中であげられています。その中で株価が約1000円前後の上場企業をあげると次のとおりです。

  •  オプトエレクロトニクス(6664):レーザー、バーコード、スキャナーで世界NO2
  • 東邦チタニウム(5727):チタンで世界NO1
  • 日本写真印刷(7915):小型タッチパネルで世界NO1

これ以外には株価が高いのですが、ジャムコ、日本高純度化学、アルバックなどがあげられています。

 隠れた企業は、その名のとおり世間にあまり知られていないので、株式の売買高は少ないかと思いますし、それもあって割安ということもあります。

最近は、テーマ投資もしていますが、一方で、中長期投資の観点からは、高い技術力があるが、世間ではあまり知られていない中小型銘柄投資に重点をおいており、海外投資も含めて、隠れたチャンピオン企業は1つの投資の選択肢になるかと個人的には思います。

 オプトエレクトロ二クスについて早速如四季報オンラインで調べてみると時価総額60億円で、株価も1000円をきっており業績も順調のようです。

ただし、6月21日に米国のHoneywell International社から特許侵害の訴訟を提起されたことを開示しており、訴訟費用による販管費が増え、2019年11月期(通期)決算予想は、営業利益が350百万円から165百円と大きく減少する下方修正をしています。

米国企業との特許係争は、場合によっては大きな金額へと発展するケースもあることから、売上高70億円程度の小さい企業であれば、訴訟費用で今後大きな財務上の影響が出る可能性があるかも知れません。

もっとも万一、財務への影響が大きくても、技術力の高い企業であれば、困ったときは、日本企業が資本参加をするケースもあり、最終的には大きな問題にはならないかも知れません。

訴訟金額が明らかになると株価に一定程度の影響はあるかと思いますので、株価をウォッチしつつ、株価が下がったところで買いを検討したいと思います。

 

野村ホールディングスの指名・報酬委員会の委員長の変更の検証-投資家の目線

野村ホールディングス株主総会の招集通知で指名、報酬委員会の委員長が古賀会長であったところ、これに対して議決権行使助言会社が反対推奨をしたことから急虚、委員長を社外取締役の方に変更するという報道がありました。

本日はこれについて、投資家の目線から検証をしたいと思います。

指名委員会、報酬委員会は、野村のような指名委員会等設置会社においては、その役割は決まっており、株主総会に提出する取締役候補者の決定、取締役・執行役の報酬の決定です。

このように重大な役割を果たすため、委員長はこの役割を果たすに十分な経験と能力が求められます。そのためには、社内を知り尽くしている経営トップが委員長になるのが本来は望ましいのですが、経営トップが委員長になることは、恣意的な運用がなされる可能性があるため「ノー」というのが資本市場の意見になります。

社外取締役を委員長にすることを資本市場は求めるのですが、それとともに、委員長としての資質も問われることになります。

役員人事や役員報酬を決めることに大きな関与をするわけですから、委員長には社内役員の人物性、能力、業績などについて判断する能力が求められます。

委員長を社外取締役にしてはみたものの、月1回開催する取締役会しか出ておらず、社内役員の様子を知らないのでは、「名ばかり委員長」であり、結果として、委員会にいる経営トップの意見で役員人事・報酬が決まることになり、委員長がCEOであることと実質において同じと投資家は見ます。

では、野村ホールディングスの場合について見てみましょう。

野村ホールディングスの2018年3月期と2017年3月期の有価証券報告書を見ますと今回委員長となる社外取締役の木村宏氏は、指名・報酬委員会の委員をされており少なくとも2年間は経験を積まれていることになります。

従って、委員としての経験があることから、委員長として適切な判断が出来ると機関投資家にも合理的な説明ができると一応言えるかと思います。

 ただし、委員の経験があるだけでは不十分で、社内のどういう重要会議に出て、社内役員のパフォーマンスを実際どのように把握しているのかまで投資家は求めることも多いと思います。

野村の有価証券報告書の詳細やアニュアルレポートは一切読んでいませんので、どういう開示がされて野村いるのかは私は知りませんが、投資家は、こういう目線で評価すると思います。

中小型銘柄の企業などでは、良く分からないけど、とりあえずお飾りでもいいので社外取締役を委員長にしておこうと安易に考えている場合、認識をあらためる必要があるかと思います。そうしないと、委員長を社外取締役にしたが、株主総会で経営トップの選任議案の反対率が高くなるという事態になるかも知れません。

経営判断の原則の適用を受けるための役員会の進め方

回のクローバック条項に関する紹介のブログの中で、経営判断の原則について少しだけ触れましたが、本日は、経営判断の原則が適用される上で役員会の討議などの進め方について、触れてみたいと思います。

 前回ブログで、「企業経営の判断は、不確実かつ流動的で複雑多様な諸要素を対象にした専門的、予測的、政策的な判断能力を必要とする総合的判断」と書きました。

株主の利益を図るには経営陣は果断な経営判断を行う必要があり、結果、判断に誤りがあり会社に損失を与えた場合に責任を負うとなると経営判断に萎縮するため、通常の経営判断の下で損失が発生しても法的責任は問われないというものです。

それでは、経営判断の原則はどういう場合に適用されるのでしょうか?

違法行為を会社が行った場合には適用されないことは容易に想像できるかと思いますが、それ以外の経営陣の意思決定はすべて経営判断の原則が適用されるのかといいますと、それは違います。一般的には次のような条件が必要と言われています。 

  1. 判断の前提となった事実認識(情報収集・分析)において、不合理さがないこと
  2. 事実認識に基づく意思決定の課題及び内容が著しく不合理でないこと

つまり、十分な情報を集め・分析をして、きちんと社内で意思決定プロセスを踏んで合理的な判断をした場合、その判断が失敗し、会社に損害が生じても経営陣は責任を負わないで済むということです。つまり、十分な討議もつくさず、会社に損失が発生した場合には経営判断の原則の適用ケースではないのです。

そこで、会社とした重要なことは、十分な資料に基づく討議をするとともに、その結果を詳細な議事メモに残しておくことかと思います。

通常の社内会議のメモは、会議の議題、結論、その結論に至るポイントのみを簡単に記載しているところも多いかと思います。会社によっては、場合によったら、経営会議、要務会といった会議体のメモも簡単に済ませてしまっているケースがあるかも知れません。

しかし、大きな損失が発生した場合に合理的な資料に基づき、合理的な意思決定を行ったことが必要になるので、討議資料も詳細な分析(程度問題はありますが)の上、どういう討議がなされたかが分かる詳細メモを作成しておくことが、万一の訴訟に備えて必要のような気がします。

特に社外取締役の方などは、求められる役割も大きくなる中、取締役会以外の会議体にも参加するケースも増えているかと思います。この場合、自分の発言などを詳細に議事録に記載しておかないと訴訟になった場合には、責任を負わされることにもなりかねないと思われます。

ちなみに、経営判断の原則は米国では次の場合に適用されるようです(西村あさひ法律事務所「M&A法大全(上)P531)」より)

  • 取締役が実際に意思決定を行ったこと
  • 取締役が十分に情報を有した上で、当該意思決定を行ったこと
  • 当該意思決定が誠実になされたものであること
  • 当該意思決定について取締役が経済的な利害関係を有していないこと

議事メモの詳細化もそうですが、社内の経営の意思決定プロセスが合理的になされていることが一番重要ですので、その意味で、社外取締役は、ビジネスに精通した企業経営経験者、ファイナンスに精通した専門家(投資銀行などの金融出身者)の存在は不可欠になってくるように思います。

クローバック条項(役員の業績連動報酬の返還)は今後増えるか

先日の日本経済新聞でクローバック条項の記事がありました。

武田薬品工業シャイアーの買収に関連して「武田薬品の将来を考える会」が色々と活動していますが、同会が株主提案として、クローバック条項を定款に規定することを武田薬品に求めたようです。

クローバック条項とは、支給済の業績連動報酬を会社に強制返還させる仕組みで、投資に伴う大きな損失、大幅な下方修正、不祥事が発生した場合に適用できるとされています。 米国では、製造業の90%が導入しているようです。

新聞の記事によれば、これを導入することで、経営陣は経営判断に躊躇することになり良くないという意見もあるとたしか書かれていました。

 会社法上の役員には経営判断の原則というものがあります。企業経営の判断は、「不確実かつ流動的で複雑多様な諸要素を対象にした専門的、予測的、政策的な判断能力を必要とする総合的判断」です(西村あさひ法律事務所の「M&A法大全(下)(全訂版)」より引用)。

株主の利益を図るには経営陣は果断な経営判断を行う必要があり、結果、判断に誤りがあり会社に損失を与えた場合に責任を負うとなると経営判断に萎縮するため、通常の経営判断の下で損失が発生しても法的責任は問われないというものです。

とすると、会社法上の責任は負わないが、報酬が減るということは、実体としては経営判断の原則が適用されていないに等しいのでおかしいということもいえそうです。しかし、一方で、経営判断をして大きな損失が発生した場合には報酬を返還せよと株主が言いたいことも分かります。

業績連動報酬が最近強く言われているのは、役員であれば、株主と同じ目線で経営に立つべしというのが発想の根底にあります。

会社の業績が悪く当期純利益が悪化すると株主の配当が減る可能性があります。経営の意思決定を行う主体(=経営陣)と意思決定の影響を受ける主体(=株主)は利害を共有することが必要ですが、業績が悪くても株主だけが影響を受け、役員のお給料が固定報酬として減らないのはおかしい。そこで、一定程度は、業績にお給料を連動させよということです。これが業績連動報酬の背景になります。

 日本では、アサヒグループHDコニカミノルタヤマハ横河電機、野村HDなどがクローバック条項を導入しているようです。 

武田薬品株主総会でクローバック条項の導入を求める株主提案が決議されると、今後、クローバックを役員報酬に入れることを求める動きが増えるかも知れません。

世界経済の悪化の影響から、業績も低迷し株価もぱっとしない以上、TSR(総株主利回り)の観点から株主の不満も高まっているかと思います。

クローバック条項の株主提案の際に、これを否決するための株主の賛同を得るため、企業は政策保有株式などを売却して、配当を増やして、株主の不満を緩和する必要があると思います。

(最後に話は変わりますが、文章中で少し触れた「西村あさひ法律事務所の『M&A法大全(全訂版)』」ですが、上・下の2巻が出ていますが、公開買付規制、買収防衛策をはじめM&Aに関することが詳しく書かれており名著です。同事務所の弁護士は、ほとんどが東京大学法学部出身で、仕事を一緒にするととても頭の優秀な方ばかりと私は日頃感じております。M&A、投資の業務に少しでも関わりのある企業の実務担当の方は、お手元においておくと便利かと思います。)

高い質を持った社外取締役を選んでいますか?-経済同友会「経営者及び社外取締役によるCEO選抜・育成の改革」レポートより

2019年5月17日に経済同友会の企業経営委員会(委員長 富山 和彦 氏)が「経営者及び社外取締役によるCEO選抜・育成の改革―多様なガバナンスに応じた最良のサクセッションの追求―」を公表しました。

このレポートは、ガバナンスの本質・本丸は、大き環境変化の中で不断の変革をリードする立場にあるCEOの選解任で、CEOの選解任、選抜・育成についての取り組み方法、考えられる選択肢等を整理した内容になっています。

CEOの選抜・育成の先進事例に見る共通項として以下が記載されています。

  1. 企業理念を共有し、実践する
  2. CEO の選抜 ・育成 に現社長 、会長と取締役が 共同で真摯に取り組む
  3. CEOに求められる資質、選任の基準を明確化する
  4. CEOの任期について公明正大に議論できる環境をつくる
  5. 高い質を持った、意欲ある 社外取締役の獲得と活用を目指す など

 興味深いのは、上記の「5」で、ここでは社外取締役に求められる役割・心構として、詳しく次の事項が記載されています。

  •  執行側との摩擦、衝突を恐れず企業価値向上ためにCEO と是々非々で議論する(裏返しとて社外取締役がその役職に経済的に依存していないことが重要)
  • 社外取締役の強みを活かし、複数の社外取締役を、外部の知見に基づき経営課題の解決策を提案するチームとして機能させる。
  • CEO の選抜・育成作業の重要な部分を担ってもらうに足りる経営的な経験、知見、コミットメントを期待できる人材であるべき
  • 指名委員会、報酬委員会において相当の時間とエネルギーを注ぎこめること
  • 状況や空気に流されず、 第三者としての客観的視点を維持するセルフ・ディシプリンを持つ
  • 社外取締役の退任後も数年間はそ企業経営業績に対し責任を負う長期的な視点と覚悟を持つ
  • 経営者経験者が積極的に他社の 社外取締役をつとめるべき など

 いかがでしょう。参考になるかと思います。まとめますと、CEOの選任・解任(選任したけど、能力が足りなかったことが判明した場合には解任しなければなりません)には、社外取締役の果たす役割が大きく、そのためには、その役割を果たすに足る資質を有する社外取締役を選任すべしということです。

最初の「CEOと是々非々に議論する(裏返しとて社外取締役がその役職に経済的に依存していないことが重要)」の箇所などは、社外取締役としてのお給料が生活の糧になると、サラリーマン役員と同じで、自分を雇ってくれたCEOに物を申すことは出来ないので、経済的に余裕のある人が社外取締役に就任すべきと明確に言っています。

最近、取締役の選任の株主提案を行うアクティビズムも増えています。またその取締役が適切な能力を持つと合理的に判断される場合、その提案に対する一般の機関投資家も増えています。

アクティビストから、取締役選任の株主提案などなされる前に、自社の社外取締役を上記資質がある者を真面目に選任しておくか、それが困難であれば、そういう資質などなくても、対外的には「資質がある」といえるような説明材料を事前に準備しておくことが重要かと思います。

 

PMI(購買担当者景気指数)について

PMIという言葉を新聞報道で見かけることがあるかと思います。Purchasing Manager's Indexの略で、日本語では購買担当者景気指数です。PMIがあがった下がったなどが新聞でよく報道されているかと思います。

PMIとは、原材料や部部品を調達する購買担当者にアンケート調査などをすることで作ります。

購買担当者は材料や製品を仕入れる際に、販売需要を見極めるため(仕入すぎると在庫を抱えることになるため)PMIの数値は数ヶ月先の景気動向を映す先行指数となります。以前にも紹介したかも知れませんが、景気の改善・悪化の分かれ目は50で、50を越えると改善、50を下回ると悪化と考えられます。

つい先日ですと、5月31日に中国国家統計局が5月のPMIを公表し、40.4でした。4月の中国のPMIは50.1ですが、前月を大きく下回りました。

新聞報道などによれば、項目の内訳では、新規輸出受注指数が悪化しているとのことです。2018年4月頃からの推移を見ると下がっており、米中貿易問題の影響もあり、今後の動きが気になるところです。 今回は非常に短いですが、PMIについて簡単に紹介しました。

次回以降ですが、少し古いですが、中小型銘柄への投資の参考として2014年に経産省が公表した「グローバルニッチトップ企業100選」、中国経済の展望ということで大手シンクタンク中国経済の見通しあたりを紹介したいと思います。

 

ESGを役員報酬の指標に入れることの意義

本年6月以降に有価証券報告書で改正される各社の役員報酬を理解できるよう、役員報酬制度について少し勉強をしていますが、約1ヵ月前の4月28日の日本経済新聞ESG評価を役員報酬を算定する基準に組み入れる企業が世界的に広がってきたとの記事がありました。

 ESGを重視する投資家が増えているということで、報酬にESG目標を組み合わせる主な企業としてオムロンコニカミノルタ日本航空フェイスブックロイヤル・ダッチ・シェルユニリーバなどがあげられていました。

海外企業は詳細を調べるのが少し面倒なので、オムロンコニカミノルタの報酬について、各社のコーポレートガバナンス報告書でざっと眺めてみました。

役員報酬の開示は表現が細かいので、大まかな内容のみごく簡単に紹介します。

 オムロン

業績連動部分の株式報酬は、中期経営計画に基づき設定した売上高、EPSROEの目標値に対する達成度、および第三者機関の調査に基づくサステナビリティ評価を組み入れる(サステナビリティ評価 Dow Jones Sustainability IndicesDJSI)に基づく評価。DJSIは長期的な株主価値向上の観点から、企業を経済・環境・社会の3つの側面で統合的に評価・選定するESGインデックス)

 コニカミノルタ

執行役については、「固定報酬」の他、年度経営計画のグループ業績及び担当する事業業績を反映する「年度業績連動金銭報酬」と中期経営計画の業績達成度を反映するとともに中期の株主価値向上に連動する「中期業績連動株式報酬」で構成。年度業績目標は、業績に関わる重要な連結経営指標(営業利益・営業利益率・ROA等)とし、執行役の重点施策にはESG(環境・社会・ガバナンス)等の非財務指標に関わる取組みを含める。

 

とりあえず、ESGを業績評価の指標に入れているようです。

さて、ここからが問題ですが、報酬の全体割合でどの程度がESGが占めるかです。これは私の推測ですが、恐らくESGの評価が報酬に占める割合は非常に小さいのではないでしょうか。

ESGの取組みでお給料が大きく左右されるとなると役員は困りますよね。学校の勉強で、国語・算数・英語(=会社でいう本業)の成績が悪いけど、道徳(=ESG)の成績が良ければ、それが大いに評価され偏差値の高い高校に入れるというようなものです。

しかし、ESGという言葉は何かにつけて開示するのは重要ではあります。

最近流行りのSDGsもそうです。そういう言葉を開示資料に入れていることが評価に大きく関連するのです。どういうことかというと、ESGインデックスに組み入れられるためには、ESG等の文言を開示資料に入れておくことが有用ということです。

ということで、ESGについて、世間に自慢できるほど真剣に取り組むつもりなどなくとも、ひとまず報酬について、顧客満足評価、環境評価などを変動報酬の指標に入れていますというこにしておけば、この会社はESGに取り組んでいるという良い印象を与えますので、大事です。

勿論、入れることで投資家からは非財務情報のエンゲージメントの際に「この内容は何?」ということは聞かれる可能性はありますので、適当にお茶を濁した回答程度は出来るようにしておく必要はあります。

もっともアナリストは決算数値にしか興味なく、役員報酬ESGなど関心ゼロですので、アナリストとの面談しかしていない会社には関係のない話かとは思います。

「社外取締役には元投資家・アナリストがお薦め」と思います

数日前の日本経済新聞に「社外取にアナリストお薦め」との小さい記事がありました。みずほ証券の「元投資家・アナリストの社外取締役としての活用」というレポートで、社外取締役(社外取)には、現役を退いたプロのファンドマネジャーやアナリストが向くというような内容のようです。この記事を見て、全くもってその通りと思いました。

 東証コーポレートガバナンス白書2019を出しており、その中で、上場企業の社外取の属性が記載されていますが、次のとおりです。

  • 他の会社の出身者 59.1%
  • 弁護士        16.0%
  • 会計士        10.0%
  • 税理士         2.8%
  • 学者                            6.8%

 これを見ていかがでしょうか。他の会社の出身者とは、企業経営者を含むビジネス経験者であると思いますが、これが60%近くいるのはとても好ましい結果と思います。

しかし、弁護士が16%、学者が6.8%もいますが、これは如何なものか?という素朴な疑問があります。

弁護士は基本的にコーポレートファイナンスの知織経験は持っておらず、ビジネスの経験もゼロで、ビジネスにどこまで有用なアドバイスが出来るかが甚だ疑問なところです。

取締役会は会社の経営戦略を立案・審議する場であり、事業を議論する場です。とすると、事業を知っていること、事業と数値は表裏一体ですので財務・会計がわかること、そして上場企業であれば常に資本市場からの目線にさらされているので、コーポレートファイナンスや資本市場を分かるメンバーが取締役にいる必要があります。

弁護士に「自分は社外取締役であるから何か発言しないといけない」などと思い、余計な発言をさせると、「コンプライアンス上は懸念がある」など自分の存在感を出そうとして、逆に事業遂行の妨げになるケースもあるかと思います。

そんなことは法務部に必要に応じて外部の法律事務所に確認すれば足ることであり、社外取に弁護士や大学教授が参画する必要はないのではないでしょうか。

金融業界を除く製造業や小売など多くの事業会社では、投資家やアナリスト的な視点が取締役会に欠けているといわれます。経理は知っていても、コーポレートファイナスを理解出来ていない会社は相当多いはずです。

であれば、元機関投資家やアナリストといった方を社外取に起用するのはとても大事なことであると感じます。

 私が投資している会社でクニミネ工業(5388)という銘柄があります。長年PBR1倍割れの時価総額120億円程度の小型銘柄ですが、この会社の2018年3月期の有価証券報告書を見ると、取締役9名中、社外取が3名です。

社外取の比率は33%あるのですが、問題は構成です。社外取の構成は会計士1名と弁護士2名です。弁護士が2名もいて毎回の取締役会で何を議論しているのか不思議でなりません。まさか毎回、コンプライアンスについて議論しているのでしょうか?

それよりも、長年PBR1倍以下が続く中、政策保有株式の検証、企業価値理論株価、配当性向、TSRについて社外取はどのような意見があるのか聞いてみたいところろです。ちなみに、この会社は政策保有株式も潤沢にあり、キャッシュリッ割安なのでアクティビストがつけいりやすい銘柄とも言えます。

業績が好調に推移している優良ニッチ企業ですので、昨年12月から株式を少しずつ増やしているのですが、、本年、更に買い増しをして、来年の株主総会に出席して、コーポレートガバナンスの観点から株価向上について色々と質問をしてみたいと思っています。