コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

東芝の第三者割当増資と物言う株主の勢ぞろい

話題になっている東芝の増資に関して、先日、東芝の第三者割当増資の割当先が発表されました。

第三者割当増資とは、特定の既存株主に対して、新株を発行することです。これにより、バランスシートの資産の部の現金・預金が増え、これとバランスする形で純資産の部の株主資本(資本金と資本準備金)が増えることになります。株主資本ということは、自己資本ですから、経営の安定度が高まると解釈されます。報道によれば6,000億円の大規模増資になるということです。

さて、ここまでは良いのですが、問題は割当先です。発表及び新聞報道によれば、多数の物言う株主(アクティビスト)が株主に入っているというようです。

エフィッシモ、エリオット、サーベラスサードポイント、オアシスなどの名前が出ております。ソニー内田洋行、京セラ、西武鉄道はじめ過去に日本企業と対峙した物言う株主がすらりと並んでいます。

物言う株主は、保有する株式の価値を上げてそれを売却することで売却益を得ることを目的としています。平たくいいますと1,000円で株を購入して、株価2,000円の時点で売却してキャピタルゲインを得ることを目的としています。

つまり、物言う株主は、東芝の株式価値(=株価)が将来上昇する、より正確には物言う株主が株価を上昇させる、ことを期待して投資しています。

株価が上昇する要素は色々とありますが、要は東芝の株式の需要が高めることですから、東芝が利益を出せる体質になり、理論株価が市場株価より高い状態になることです。

物言う株主は、アセットオーナーから資金を預かり運用しているわけですから、株価を上げて売却益を得るには、株価を上げるべく徹底したコスト低減、より高収益な体質強化に向けて事業売却や再編ななどを強行に東芝に提案していくことになることは容易に予想できます。

このように物言う株主がずらり勢ぞろいするということは普通なく、今後、東芝は厳しい対応が要求されることはたしかです。

一方で、普通の株主には、物言う株主が株式を保有することで東芝の業績改善が進むことが期待できるので大変嬉しいことと思います。物言う株主の提案に賛同する機関投資家、外国人株主、個人株主は多くなるのではないでしょうか。

窮地に陥っている東芝は資本増強を行ったものの、群がるのは物言う株主ばかりで、経営陣は苦難の道のりが待っていると思います。東芝が今後どのようなコスト削減策や事業再編を打ち出していくのか関心があるとことです。

政策保有株式の保有の合理性の開示の動き

11月6日の日本経済新聞に、「政策保有株の透明性確保へ 金融庁が開示巡り議論」とのタイトルがありました。

金融庁企業統治関連の会議で政策保有株の透明性を高める施策について議論をしたようです。新聞記事では、政策保有株式は経営者の地位の安定に資するものとの金融庁職員のコメントがあり、株式の保有を法令で禁止することも検討する必要性について触れているとのことで、金融庁は企業に保有の合理性を開示するよう要請し、投資家向けの説明資料を作成することを求めるとのことです。

政策保有株式については、従来、企業経営から緊張感を奪い、悪い影響があり、投資先企業の資本効率の悪化や財務基盤の不安定化につながるとして投資家より批判がなされており、コーポレートガバナンス・コードにおいても、政策保有株式の開示の強化を求めており、結果として保有の見直しを間接的に求める内容となっています。

具体的にコーポレートガバナンス・コードでの記載は次のとおりです。

 

【原則1-4.いわゆる政策保有株式】

上場会社がいわゆる政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で主要な政策保有についてそのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うべきである。上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準を策定・開示すべきである。

 

今回の新聞報道を見る限りにおいては、政策保有株式の削減を求めているものではないとは思いますが、コーポレートガバナンス・コードで「方針を開示すべき」となっていることよりも更に踏み込んで、合理的に説明することが必要になってくるような様子です。この点は引き続き注視して行きたいと思います。

企業年金連合会と大手金融機関4社による集団的エンゲージメント(対話)の開始

企業年金連合会三菱UFJ信託銀行三井住友信託銀行りそな銀行三井住友アセットマネジメントが共同での企業とのエンゲージメント(日本語では「対話」といいます)を行うことになり、企業統治の改善などを求め、連名での書簡を年内にも投資先に送るとの報道がありました。合計の日本株運用総額は30兆円を超え、日本株全体の5%を超えるとのことです。

集団的エンゲージメントとは、機関投資家が単独でなく、複数で協調して企業への対話を求めることです。共同対話は国際的な潮流で、日本においては、スチュワードシップコードにおいて、次のような記載があります。

「必要に応じて他の機関投資家と協同して対話を行うこと(集団的エンゲージメン
ト)が有益な場合も有り得る」

ちなみに、海外での集団的エンゲージメントについては、たしか米国では「適切に他の機関投資家と協同すべき」、EUは「適切な場合には、他の投資家と協調して行動すべき」とあります。文脈の全体を読んでいませんので、一概には言えないかも知れませんが、協同を義務付けているような様子で、日本よりもより積極的な印象を受けます。

フェアディスクロージャー・ルールもそうですが、欧米は先行しているので、多分、欧米の方がより積極的と思います。いずれにせよ、日本も欧米にならう方向に向かっていることは確実です。

では、集団的エンゲージの効果は何でしょうか。

単独で企業と対話をするのではなく、機関投資家が複数で企業との対話を行うことで企業への発言力が高まるということになります。企業としても、運用機関各社と個別に対話をするより、纏めて対話をすることで対話の労力が減り、効率が高まるということはプラスの側面かと思います。

一方、企業には留意すべき点があります。それは、運用機関が企業に要求する事項が共通する内容であれば、その要求内容を充足しない企業は、株主総会での議案の反対率が増えるということになると思われます。

統一的な基準を機関投資家が要求するのであれば、それを充足する企業にはプラスに働き、それを充足しない企業にはマイナスに働くということです。

報道では、株主総会の議決権行使は各社が独自に判断し、共同の株主提案はしないということのようですので、これだけ読むと、各社独自の基準により総会で議決権は行使するということですが、集団で企業との対話に臨む以上は、各社とも考えのベースは同じになると理解すべきかと思われます。

今回の集団的エンゲージメントは、日本では初めての試みのようですが、企業にとっては、機関投資家との対話をこれまで以上に充実させ、対話を踏まえて企業統治を見直すなどの改善が必要になります。

P&Gの事例に見るアクティビストの提案と個人株主対策を考えることの重要性

11月6日の日本経済新聞の「経営の視点」において、「P&Gに求めたのは」とのタイトルでP&Gに対して米国ファンドが役員受入の提案をしたものの、結果として、本年10月の株主総会でアクティビストの提案が退かれたことについて記事がありました。株主提案が退かれた最大の要因は、個人株主の多さであったと書かれています。P&Gは個人株主比率が40%を超えて米国企業としては極めて高いとのことのようです。要は、アクティビスとが株主提案をしたものの、個人株主はこの提案に賛同しなかったということです。

一方で、日本の株式市場における個人株主比率を見ますと、東証全体に占める個人株主比率は約17%です。

私は以前は個人株主を増やすことに何の意味があるのか良く理解できていませんでしたが、アクティビストの活動について投資銀行と議論をする中で、企業の「準安定株主」として個人株主は大切であると最近考えるようになっていましたが、この記事を見てあたらめてその通りと思いました。

前にもブログで同じようなことを書きましたが、個人株主は機関投資家と異なり、必ずしも短期利益にのみに目を向けているのではなく、ブランドや企業の製品への愛着などが強いとされています。

勿論、BtoBの商売をしている企業については、個人株主は製品を直接手にすることはありませんので、製品の愛着というのは、この場合には必ず当てはまりませんが、要するに、企業のイメージ全体に対する愛着が強いということです。個人株主の企業に対する愛着を高めることが出来れば、アクティビスによる増配要求の株主提案や公開買付提案があっても、個人株主はこれに応じることなく、安定株主とできます。

コーポレートガバナンス改革の中、持合株式である政策保有株式が売却される中、売却された株式の受け入れ先を個人株主とすべく、個人株主施策は企業にとって今後、大変重要になってくると考えます。

では、個人株主を増やすには、どうすればよいでしょうか。これは簡単ですが、株主優待をすることが1つ効果的です。しかし、単にこれだけでは、継続対策としては十分でないと考えます。

一旦、個人株主数を増やした後、事業所見学会等を開催し、経営トップなりマネジメント層が個人株主を事業所に案内して、企業の概況を説明したりすることが大切になってくると考えます。

これらの活動を通じて、個人株主は、自分が企業から大事にされているという印象を持ち、それが長期的に株式保有を継続しようとするインセンティブに繋がるのです。現在個人株主比率が少なく、一方で持合株式比率の高い上場企業は、持合は今後確実に解消される動きにあるので、個人株主を増やし、かつ安定株主とするための対策を真剣に考える必要があるかと思います。

 

企業に埋もれた知的財産の有効活用策の検討会議

先日の新聞報道によれば、内閣府は、企業に埋もれた知的財産の有効活用策を検討するための産学連携の会議を11月16日に新設するとのことです。

先日のブログでは、この連休中に伊藤レポート2.0を読むと書きましたが、この記事も少しだけ気になりましたので、本日はこの記事に関して少しだけ触れてみたいと思います。

未利用の知的財産(以下「知財」といいます)の有効活用については、メーカーを中心に以前より課題の1つとして指摘されていることですが、政府がその具体的な対策検討を開始するようです。 

メーカーなどの企業は多数の知財を有していますが、実際に自社の事業で活用しているものはそのすべてではありません。いわゆる持っているが使っていない未使用の知財も各社多く抱えています。では、なぜでしょうか。

まず、企業が知財を取得する目的は、自社防衛があります。つまり、自社で開発する製品の技術について、他社から知財侵害を主張されると、設計変更を行う、最悪のケースのは開発を中断することにもなります。このため、開発段階で、他社特許に抵触しないか十分な調査をするのですが、必ずしも完全な調査が出来るものでもありませんし、また、開発の途中でいろいろと設計を変えるケースもあります。

そこで、将来、他社から特許攻撃を受けるのを防ぐため、幅広に特許を取得します。このため、実際に利用しないままのものも多くなります。他にも色々と理由はあるかも知れませんが、このような状況と思います。

一方、知財は取得した後も維持する場合には、維持費がかかります。維持する期間中、特許庁に維持費を払う必要があり、大手企業であれば、毎年数億円から数十億円かかる場合もあると思います。つまり、使わないけど、多額の維持費は払うことになります。

では、使わないのであれば、他社にライセンスをしてライセンスフィーをとればよい
ということになりますが、これも難しいところです。

理由は、知財部には特許のライセン先を見つけることの機能をはなく、そもそも、知財部は企業の防衛のために、技術部門の指示に従って知財を取得するのであり、勿論外部企業からライセンスの要請があれば検討はしますが、自ら能動的にライセンス先を探すということはしません。これが、いわゆる埋もれた特許、つまり保有してはいるけど活用できておらず、維持コストだけがかかる知財の問題になります。

報道によれば、今後、半年程度の議論を行い報告書を纏め、企業への支援策の成果は2018年度の「知的財産推進計画」に盛込むとのことです。

伊藤レポート2.0が公表

経産省より10月26日に「伊藤レポート2.0」が公表されました。以前にもブログで書きましたが、2014年に公表された一橋大学教授の伊藤氏のレポート(伊藤レポート)の第2弾になります。

経産省のホームページからレポートの紹介のページを読みますと、要するに、2014年の伊藤レポートにより日本企業のROEは改善したが、今回はPBR(=株式時価総額÷純資産額)に着目すると、日本企業は長年に亘り1倍前後という解散価値に等しく、株価が低迷しており、これを問題として捉え、企業のビジネスモデルや戦略、ガバナンスについて投資家と対話するためのガイダンスとして今回レポートにまとめ、投資家、企業サイドはじめ関係者はこれを対話のベースにして良く読んでくださいというものです。

伊藤氏が関与して、経産省が中心になりここ数年の間に日本企業の企業統治コーポレートガバナンス)改革は進んできたわけですが、今後の予定について同レポートの参考資料である「伊籐レポート2.0 参考資料」(2017年10月26日 経産省 産業資金課)の資料に記載されていますので、記載します。

1.2019年前半を目途として、国際的に見て最も効果的かつ効率的な開示の実現(制度
開示の見直し)

2.①グローバルな観点から最も望ましい対話環境の整備を図るべく、情報開示を充
実させ、株主の議案検討と対話の期間を確保する方策等について、更なる検討や取組
みを進め、対話型株主総会プロセスの実現 ②企業が株主総会の日程や基準日を合理
的かつ適切に設定するための環境整備

以上の2つが日本再興戦略2016の残りの主な取り組みとなっています。いずれも、現在、検討中のようですが、近い将来、企業の開示制度や株主総会の運営について大きく見直されていく方向にあるようです。

さて、肝心の伊藤レポート2.0の内容ですが、まだ読んでいませんので、この3連休中に読んでブログで簡潔に紹介したいと思います。

 

ISSが議決権行使ポリシーの改定案を公表

2017年10月26日にISS議決権行使助言会社)が株主総会での議決権行使ポリシーの改定案を公表しました。

内容は2点で次のとおりです。

1.指名委員会等設置会社および監査委員会設置会社の取締役会構成要件の厳格化
・ 社外取締役(独立性問わない)が1/3未満の場合、経営トップである取締役の選任議案に反対

2.買収防衛策の総継続期間要件の導入
・ 買収防衛策の賛成推奨の基準に、最初に買収防衛策を導入してからの総継続期間が3年以内であることを追加

ISSは、従来より買収防衛策議案には賛成推奨することはなく(ちなみにISS議決権行使助言会社であり、自ら議決権を行使することはなく、機関投資家が議決権を行使するに当たって、企業毎の賛成・反対推奨をする機関です)結論には変化はないのですが、「総継続期間3年」を設定したことで影響が大きいような気がします。

これまでは、一定の要件を充足すれば形式基準はクリアすることが理論上は出来る建付けでしたが、今回の改訂案では、企業は期間最大3年とする1回の導入についての賛成となるということは、これまで継続更新していた企業は、賛成推奨の形式基準をクリアしないことになります。

要するに、買収防衛策は1回だけに限定し導入することは出来るが、1回導入した企業は今後は更新することに反対しますということを言っていることになります。

国内機関投資家は、議決権行使に当たって、必ずしもISSの基準に準拠して判断をするわけではありませんが、昨今、機関投資家の買収防衛策に対する反対が強まる中、このISSの基準は反対方向の更なる追い風になる可能性があります。

とすると日本企業に与える影響がどうかですが、これで買収防衛策を廃止する企業が増えるとアクティビスト(物言う株主)には好都合になります。

また、ここ数年のコーポレートガバナンス改革での政策保有株式の売却の動き、日本の機関投資家の協調行動の容認、スピンオフ税制、2018年度税制改正での経産省の要望している事業ポートフォリオ転換の円滑化措置などを考えると、どう見てもアクティビストには都合の良い環境に向かっているとしか思えません。

買収防衛策は、東芝川崎汽船三陽商会などは廃止した後、アクティビストが株式取得したことを考えると、企業は2007年頃に盛んだった外資の投資会社による日本企業の買収を真剣に対策をする必要があるのではないでしょうか。

とすると当たり前ですが、企業は自社の株主と日々接する機会を増やし、理解して貰うというSR活動が今後重要になってくると思います。

ガバナンス改革-独立取締役の会の提言

10月16日の日本経済新聞で、「独立取締役の会」が独自のガバナンス改革案を纏めたとの記事が掲載されていました。

旭化成IHI旭硝子伊藤忠商事などの大手企業の元経営トップのメンバーを中心に構成される昨年秋に結成された会のようです。主要メンバーの方は、現在も他社の社外取締役を兼務されており、豊富な経営実務経験を踏まえて、より実態に即した提言をされたということです。

新聞に掲載の提言内容についてポイントをあげると次のような内容です。

<ガバナンス体制>
・取締役会はいざという時に社長を解任できるよう、社外取締役の員数を過半数とするか、指名委員会に社長解任権限を付与するのが望ましい

<取締役会の重要な役割>
・社長の評価
・社長の後継者計画
・経営戦略の策定と実施状況の監督
役員報酬制度の設計
コンプライアンスと危機管理

<顧問・相談役制度>
・在任期間の定めのない終身の顧問・相談役や明確な役割のない顧問・相談役は廃止すべき など

内容の詳細までは掲載されていませんでしたので、詳細なコメントは出来ませんが、ガバナンス改革では、私は前々から実務の経験者の視点がとても重要であると考えていました。経産省金融庁、大学教授などの専門家の意見は、他国の法制度、会社法や資本市場の意見を踏まえたあるべき姿から論じられており、それは勿論重要とは思います。

しかし、コーポレート・ガバナンスを実行するのは、事業会社であることを認識する必要があります。「こうあるべき」という姿を作っても、それが日本企業の実務からかけ離れていると意味がありません。

例えば、社外取締役制度を1つとっても、よく3分の1以上の員数が必要とか言われていますが、単に人数を増やすこと自体には、あまり意味があるとは思えません。

役割として監督機能を強化するのであれば、いくら人数を増やしたところで、普段業務に携わっていない以上、不正を見抜くことはできません。実際に不祥事のあった企業でも社外取締役は導入されていますが、不祥事を未然に防げなかったことを見れば明白です。

通常、社外取締役は取締役会に上程された事項しか知り得ないのであって、企業の不正を探し出すことは難しいし、また、それは社外取締役の役割ではないと言えます。

この点、独立取締役の会の提言では、社外取締役過半数の確保をあげておりますが、その目的は社長の解任とあり、なるほどと思いました。

仮に経営トップが不正をしたとしても、社長を解任をするということは、社長をトップとしたピラミッドの下層にいる社内取締役にはまず期待できないところ、それを出来るのが社外取締役であり、従って法的にも解任できる権限を持てるよう員数を過半数以上にするという論理かと思います。暴走した経営トップを法的にストップをかけることを狙いに掲げており、非常に実務に即した視点かと思います。

コーポレート・ガバナンスの策定には、先に言ったように幅広い見識が必要になり、その観点からは、役所や学者が青写真を描くことは賛成です。しかし、細目は、日常の実務の運営の視点を入れる必要があり、その観点からは、企業の経営者の視点も十分に反映させる必要があると思います。このような独立取締役会の会といった企業サイドの目線に立つ会は非常に有益かと思います。

インターネットで、「独立取締役の会」のキーワードで検索したところ出てきませんでしたが、この提言が今後、日本企業のコーポレート・ガバナンスにどのような影響を与えることになるのか関心のあるところです。

書評:「企業価値を創造する会計指標入門」(ダイヤモンド社)

だいぶ以前に書評をブログに掲載しましたが、久しぶりに会計・ファイナンス関連の書籍について書いてみたいと思います。

企業価値を創造する会計指標入門」(ダイヤモンド社 )という書籍があります。

少し古いのですが2005年に発行された書籍です。著者は、大津 広一 氏で、㈱オオツ・インターナショナル代表の肩書で、慶応義塾大学理工学部を卒業、富士銀行、外資系証券などを経て独立し、現在、経営コンサルタントをされています。

この書籍は、ROEROA、ROIC、EBITDAマージン、株主資本比率といった会計指標について、根本的な考え方や各指標毎に武田薬品工業ソニー、米国ウォルマートなどの大手企業の例をあげて説明しています。

各指標について深く触れており、会計指標について書かれた書籍は数多くあるのですが、この書籍では指標の持つ意味などまで深く分析されており、個人的には良書と思っております。ただし、各指標の説明であげている企業各社の説明が少し細かく、自分と関連のない業界の概況などまで細かく触れている点が結構くどいのですが、このあたりは飛ばして読んでもよいかと思います。

なお、著者の書いているほかの書籍としては、「ファイナンスと事業数値化力」(日経ビジネス人文庫 / 2010年)が分かりやすいです。

これは文庫本ですが、ファイナンスの基礎について、学生と教授の会話形式で書かれており、内容も分かりやすいです。初級者向けです。

ただし、この書籍も全くの初級者には難しく、また、「企業価値を創造する会計指標入門」は、中級レベル以上の人でないと理解は確実に不可と思います。フリーキャッシュフロー、DCF法といったことを一度実務でやった上で読むとよいかと思います。

内田洋行の株主総会での株主提案議案の賛成率

前回のブログで、10月14日(土)開催の内田洋行の定時株主総会においてストラテジックキャピタルの株主提案が否決されたことを書きましたが、定時株主総会での議決権行使結果(議案の賛成率)について、10月18日に内田洋行の臨時報告書が開示されました。

株主提案議案については、次のような結果でした。

第3号議案  定款変更の件    賛成率 20.10%
第4号議案  剰余金の処分の件  賛成率 18.47%

第3号議案は、政策保有株式を速やかに売却することを定款に規定せよという提案になります。

2017年7月末の内田洋行の主な株主構成は、次のとおりになります。

金融機関 :36% 個人その他:31% 外国法人等:19% その他法人:13%

ストラテジックキャピタルの7月末の保有株式数はたしか約5%でしたので、第3号議案に関して言えば、株主提案に賛同した株主が他に約15%ほどいたことになります。株主別の賛否は開示されませんので、どの株主が賛成を投じたかは不明です。

私が勝手に想像するところ、外国人株主の多くは株主提案に賛成する方向に流れたのではと思いますが、これを前提とすると、個人株主の多くは、株主提案に反対したという結果であったかと思われます。

内田洋行が個人の大口株主にどう働きかけたのかは不明ですが、少なくとも多くの個人株主は、株主提案に賛同しなかったということかと思います。

株主提案の定款変更が承認されれば、政策保有株式の売却により内田洋行の現金が増え、増えた現金は配当に回せという流れになりますが、それよりも安定的に配当を貰えることを株主は優先したのでしょう。

ストラテジックキャピタルの出現後に、たしか内田洋行は一回増配をしていた記憶がありますが、これにより個人株主は現状のままでも不満がなく、結果、株主提案に賛同するに至らなかったということなのかも知れません。

機関投資家内田洋行株主総会に対する議決権の行使結果の詳細が後日開示されますが、国内機関投資家はどういう判断をしたのか興味のあるところです。

 

内田洋行に対する株主提案の結果から考える個人株主対策の必要性

投資ファンドのストラテジックキャピタルが内田洋行の本年の株主総会において定款変更等の株主提案を出しており、先日、10月14日(土)に株主総会が開催されました(内田洋行は7月決算)。

内田洋行のホームページを見ますと、会社提案が可決され、株主提案は否決されたという結果に終わったようです。株主総会の議決権行使結果は、臨時報告書で報告することが必要になりますが、本日時点では、臨時報告書は開示されておらず、ストラテジックキャピタルの提案の賛否比率の詳細などは分からないところではあります。

しかし、内田洋行の株主構成と株主提案が否決されたという結果から、個人株主対策の重要性について思うところを少し述べてみたいと思います。

まずは、2017年7月末の内田洋行有価証券報告書で主な株主構成を見ると次のようになっています。

金融機関:36%、個人その他:31%、外国法人等:19%、その他法人:13%

投資ファンドの株主提案が企業価値向上に資すると考えて賛成に回る株主は通常誰かというと、一般的に言って、外国人株主と国内機関投資家が考えられます。

有価証券報告書では、金融機関の比率は36%とあるだけで、この中に国内機関投資分がどの程度あるのかは不明ですが、仮に36%全てが国内機関投資家であると仮定して話を進めます(大株主状況を見ると、りそな銀行三井住友信託銀行があり、この2社だけで6%ほどになるので、36%全てが国内機関投資家ということはありえませんが、話の便宜上そう考えます)。

今回、ストラテジックキャピタルが提案した定款変更の議案(政策保有株式の売却規定の新設)は、会社法上の特別決議事項に該当するため、3分2以上の賛成、つまり67%の賛成が必要になります。とすると、外国人株主と国内機関投資家分だけを合算すると、55%のため10%程度足りないことになります。

従い、ストラテジックキャピタルは個人株主の31%のうち、10%を自社の味方につけることができるかがポイントになります。なお、繰り返しになりますが、「金融機関36%=国内機関投資家」との前提を置いた仮定での話になります。

今回の定款変更の株主提案は、政策保有株式の売却を定款規定に盛込むという内容で、最終的には配当増に繋がる内容であり、それだけを見ると個人株主には都合のよい話になりますので、個人株主は賛同する方向に向かうように思います。

では、これに対して会社は何をすべきでしょうか?

会社としては、長期的な観点から株を持つことが株主の大きなリターンにつながることを説明する必要があります。さらにブレークダウンして、具体的に何をすればよいかという点になると、日々株主に自社の魅力を伝え、ファンになって貰うことが重要になります。そのためには、株主優待を実施する、定期的な個人株主を対象とする事業所の見学会を開催するといったことが重要になるように最近思っております。

株主優待は、自社製品を配布することも多いですが、私の感覚ですと、金額は3,000円
~5,000円相当が多いように思えますが、額が小さいからと馬鹿に出来るものでははないと思います。

個人株主は、「個人」ですので、会社から定期的に商品を貰うということは非常に嬉しいものです。実際に株主優待を開始して個人株主数が大きく増えたという話や、逆に、株主優待を廃止したところ個人株主が大きく減ったということは良く耳にします。

機関投資家は、アセットオーナーから預かった資金を運用するプロであり、投資に対するリターンにのみ関心があり、優待などは関心は全くありません。しかし、個人は、そ少額の自己資金で少ない株式を保有するのであって、安定配当が関心事ではありますが、株主優待として投資先企業の製品を貰えるということは、結構重視しているように思います。

株主見学会も同じです。自分の投資先企業が、個人である自分を事業所に招いてくれて、投資先が大手企業であれば、普段会うことのない企業の経営層が丁寧に会社の概況を説明し、案内してくれるということは、お金に代えがたいものと受け取るのではないでしょうか。

アクティビスト株主(物言う株主)対策としては、安定株主増ということがありますが、その観点から個人株主対策に力を入れるということを会社はあらためて考える必要があるのかも知れません。

勿論、個人といってもプロ並みの資金で自己運用している方もいますが、そのような方は個人全体で見るとごくわずかであり、個人株主の圧倒的多数は、一握りの富裕層ではなく、数十万円から数百万円を投資する少額投資の個人です。そうであれば、こういう一般の方にどういう対応をすれば、長期で株式を保有してくれるのかを企業はあらためて真剣に考える必要があるように最近感じています。

内田洋行株主総会の議決権行使結果は、暫くすると臨時報告書が開示されますので、それが分かり次第、またブログで書いてみたいと思います。

米国名門企業がアクティビストの標的になっている

10月12日の日本経済新聞で「物言う株主 名門狙う」とのタイトルで米国のP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)がアクティビストの標的になっていたところ、P&Gでは委任状争奪戦を実施し、結果、P&Gが辛勝したとの報道が大きく掲載されていました。

カリフォルニア州の教職員退職年金基金のカルスターズはじめ公的年金が、アクティビスとの支持に回り、当初はアクティビストが有利との観測が出ていたようです。

10月10日には米国でGEがアクティビストの提案する役員を受け入れるなど米国ではアクティビストの動きがだいぶ活発化しているようです。

アクティビストの話は何度もブログで書いていますが、アクティビストの提案内容も単なるバランスシートからキャッシュ・リッチによる株主還元増を主張するだけでなく、それを裏付ける精緻な分析を行った上での提案に変わってきているため、それを支持する機関投資家が増加しているようです。

では、日本企業にも増えるのかということが関心のあるところですが、この点は、米国では経営効率が改善されている企業が多い中、日本では経営効率の改善が進んでいない企業が多いという大きな違いに着目する必要があります。要するに売上高営業利益率や総資産回転率が米国に比べて低いのです。

とすれば米国ではアクティビストの獲物はそれほど多くなく、日本企業に目が向けられる可能性が高くなるように思えます。同新聞記事によれば、ニューヨーク在住の市場関係者の声として、「再び米アクティビストの日本企業への関心を呼ぶ契機になる可能性がある」ということが書かれていました。当然の想定になるかと思います。

前にもブログで書きましたが、ストラテジック・キャピタルパートナーズが内田洋行の10月14日(土)の定時株主総会で株主提案をしており、昨日、株主総会が開催されました。インターネットで内田洋行株主総会の招集通知に記載の株主構成を見ると、株主構成比率は、外国人等が19.4%、金融機関・証券会社 37.0%、個人・その他が27.7%などとなっていました。

株主総会の結果が気になっており、昨日からネットで探しているのですが、土曜日の株主総会ということであるためか、内田洋行のホームページは本日現在、総会の結果が開示されていません。分かった時点でブログで取り上げてみたいと思います。

 

大学年金基金等の投資ファンドへの資金流入の増加

10月5日の日経新聞で「投資ファンド膨張」との記事がありました。低金利が続く中で、年金基金などの機関投資家が高い利回りを当て込んで投資ファンドに資金を提供しているということです。

機関投資家もアセットオーナーから資金を預かり、それを運用して、リターンをあげる必要がありますが、自らの投資では運用リターンが小さいので投資ファンドに預けて運用を任せるということかと思います。

投資ファンドの手法はいわゆるアクティビストのような手法をとることが多く、従来の伝統型のヘッジファンドの手法の運用利回りより投資ファドによる利回りは高いというのが米国での実績になります。

ある公表資料によれば、米国での2013年から2017年までの機関のヘッジファンドの運用利回りは約7%である一方、アクティビストによる運用利回りは約10%ということのようです。

新聞報道によれば、米カリフォルニア州職員退職年金基金カルパース)は投資ファンドの運用が資産全体の8%を占めており、また、テキサス大学基金はファンドへの投資比率を資産の40%に高めているようです。

この記事が出る前から投資ファンドに年金基金を預けるケースが米国では増えており、米国のイエール大学が大学の年金基金において“Absolute Retrun”(絶対リターン)という投資を開始し、これは所謂アクティビストの投資手法ですが、投資リターンが米国大学基金の運用パフォーマンスを大きく上回るため、これを契機に他大学もYaleを見習えということでAbsolute Returnを開始したということを何かで見たことがあります。テキサス大学イエール大学の例に倣ったのでしょうか。

また、物言う株主(アクティビスト)である米国のエフィッシモの受託資産の6割以上が北米の年金・大学から長期の資金を受託しているようです。

要はアクティビストファンドのパフォーマンスが好調なのでこれに対する資金の流入が続いているということになります。

日本でもスチュワードシップコードの改訂により、「必要に応じて他の機関投資家で協同で対話を行うことが有益な場合もある」と規定されており、今後は、集団的エンゲージメントが認められたことになります。また、日本では、スピンオフ税制が制定され、今後は、企業再編がし易くなりました。2018年税制改正では、事業ポートフォリオ転換の円滑化措置を経産省は要望しているようです。これは、自社ノンコア事業の分離とセットで、自社コア事業強目的の事業買収を行う場合、分離に当たっての譲渡益課税の繰延措置を認めるものです。経産省は、コングロマリット企業の収益性が低いことを課題として考えており、企業が再編によって利益率の改善が容易に出来るよう税制面の措置を検討しているといったところかと思います、

こういう環境の変化もあり、①年金基金が運用を高い運用利回りが期待できるアクティビストファンド(投資)に任せ、②アクティビストファンドは不採算事業を持つ企業に対して、スピンオフ税制の存在も背景に切離し等の再編による利益率などの改善を提案し、③これに対して、他の機関投資家も巻き込み株主の提案が承認されるケースも今後は増えていく可能性があるかも知れません。

企業の機関設計である指名委員会等設置会社の導入企業数が少ない理由

先日、あるシンクタンクの外部レポートを見たところ、米国企業と日本企業の取締役会の運営の議題についてのアンケート調査結果がありました。

日米ともに売上高が約5,000億円以上の大手企業のアンケートですが、米国企業は、戦略策定に多くの時間が割かれている一方で、日本企業はこの領域の討議が弱く、執行サイドに日常の業務執行権限は委譲して、取締役会で戦略策定に時間を費やす必要があることを課題として考えている企業が多いという結果でした。

今回は、企業の機関設計について、指名委員会等設置会社制度を中心に少し書いてみたいと思います。

ご存知の方も多いと思いますが、米国の取締役会は監督機能に特化しており、業務執行は執行部門が行うことになっておりますので、必然的に取締役会は戦略策定と執行の監督が中心になります。一方、日本企業の多くは米国企業と異なり、執行と監督が分離しておらず、取締役が日常の業務執行を兼ねています。

しかし、従前より、取締役会の機能として監督と執行が一緒になると、自分の執行を自分で監督することになり矛盾が生じ十分な監督が出来ないこと、また、環境の変化の中、執行には益々スピードが要求されるところ、執行に十分に専念できないという課題があげられています。

これに対して、2003年頃に会社法で委員会等設置会社が設置され、取締役とは別に会社法上の役員として執行役が設けられ、日常の業務執行は執行役に委任し、取締役会は重要な業務の決定を行うとともに、執行サイド(執行役)の業務執行の監督に専念することとなりました。

その後、会社法の改正があり、委員会等設置会社は、現在は、指名委員会等設置会社となっていますが、この指名委員会等設置会社は東証全体で80社程度しか導入しておらず以前として少ない状況にあります。

しかし、前述のように、指名委員会等設置会社以外の会社であっても、業務執行のスピードアップのため、執行の多くを執行サイドに権限委譲して取締役会は重要な意思決定と監督に専念したいというのが各社の最近の動きかと思います。

では、そうであれば、法的に執行への業務執行が委譲される指名委員会等設置会社に移行すればよいのですが、どうして導入企業数が増えないのでしょうか。

この点は、執行権限が奪われることの社内での権限を巡る綱引きと社外取締役の確保が困難である点にあると思います。

私自身は、当時の勤務先がたしか2004年頃に監査役設置会社から指名委員会等設置会社に移行したのですが、その際の商事法務担当として、当時、ソニーオリックスHOYA等の例を研究し、指名委員会等設置会社の移行作業の実務を全面的に担当した経験があります。

当時、取締役会の業務執行の決定権が執行サイドに法的に移行することから、取締役会の機能が監督という、いわば「閑職」になるということで、当時の社長と取締役会の議長である会長の人事の問題もあり、揉めた記憶があります。

指名委員会等設置会社に移行する企業が少ないのは、こうした執行の権限の点で社内の綱引きがあり、つまり、法的にも業務執行が執行サイドに完全に移行してしまうことの社内での抵抗が理由にあると考えます。

これに加えて、指名委員会等設置会社で必要になる指名・報酬・監査委員会の委員の過半数は、社外取締役で構成されるところ、社外取締役の人選に苦労するという点もあるように考えます。委員会を構成するのであれば2名以上の社外取締役が必要です。報酬委員会、指名委員会といった組織の設置が必要になり、各委員会は半数以上の社外取締役が必要になり、この委員会で役員の報酬・役員人事を決定することになりますので、これに抵抗を示す経営陣も多いと思います。

以上の2つが指名委員会等設置会社の導入が進まない大きな理由のように思います。

最近、東証の指導で複数の社外取締役の設置が義務化される動きにある中、社外取締役の人選が十分でないという声も聞かれます。とすれば指名委員会等設置会社も大きくは増えないかも知れません。

しかし、売上高が5,000億円以上もある大手企業であれば社外取締役の人選で苦労することもそれほどないとは思いますので、権限を大きく委譲して経営のスピードをあげたいのであれば、指名委員会等設置会社に移行するのが極めシンプルであると思います。

2004年頃に指名委員会等設置会社への移行実務を担当した者として思うところを書いてみました。

 

上場企業のサクセッションプラン(後継者計画)の意義は?

先日の新聞報道で、上場企業のサクセッションプラン(後継者計画)を開示した企業が17社あるということでした。企業を見ますと、東京エレクトロンコニカミノルタキヤノン日本ユニシスなどの会社が開示しているようです。

背景は、東証企業統治方針において、「取締役会は後継者の計画について適切に監督すべき」と定めていることによるもので、機関投資家の中には後継者計画の詳細について要望があるようです。東証の上場企業3500社のうち17社しか開示していないということは、まだまだ開示している企業数はかなり低いようです。

上場企業といってもオーナー社長の企業とサラリーマン社長の企業に分かれますが、オーナー社長の企業は自分の子供、親戚が社長を継承するので、このタイプの企業が後継者計画をどこまで作成する必要があるかは疑問ですが、これ以外の多くの企業では、何らかの基準は内規としては保有しているのではないでしょうか。

新聞記事によると次のような内容のようです。

<2017年9月17日 日本経済新聞より抜粋>
コニカミノルタ
 社長が後継者候補を推薦。指名委員会が仕事うぶりを評価し判断
日本ユニシス
 「真摯さ」「先見性」「洞察力」など7項目で評価

ネットで詳細を検索したところ出てきませんでしたが、新聞報道での記載を読む限りは、特に驚くような内容ではないように思えます。具体的にこの程度の基準であれば、明文化しているか否かは別として、オーナ系企業は別として、通常の企業であればこうった基準は内規として、または、明文化されていなくとも当然の前提として考えているかと思います。そういう意味では、あえてこの程度の抽象的な内容のものを開示することの意味はないと考える方もいるかも知れません。

しかし、ここで考えなければならないのは、機関投資家は、企業が考えるより、企業の状況がなかなか分からないということです。抽象的な内容であっても、明文化され、開示されていないと、機関投資家は判断のしようがないのです。

先日、ある海外機関投資家のセミナーに参加したところ、まずは開示をしないと対話のきっかけがつかめないといっていました。このように、例え抽象的であっても明文化してそれを開示することにより、機関投資家との対話のきっかけになるのではないでしょうか。少なくとも何らからの基準があるということを資本市場にアピールできることにはなります。

とはいっても、個人的には、後継者計画を機関投資家はどのようにして評価するのかそもそもの疑問があります。

企業の役割は収益をあげて、利益をステークホルダーに還元することにあります。とすれば、いくら精緻な後継者計画を作成しようが、結果ありきで、選定された経営トップが業績を上げられず、結局配当も増やせない、株価も上げられないということになれば、機関投資家は十分なリターンを得ることが出来ず、結局はその経営トップは不適格であったと評価されることになります。

これを考えると、後継者計画を作成しても、どこまで意味があるのか疑問があります。

それとも、経営トップの選任基準ととともに、退任の基準も計画書で明確に定めておけば、機関投資家も納得するようにも思えるのですが、機関投資家が後継者計画に何を期待するのか少し分からないところがあります。