読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

経営企画担当の実務上の視点

東証1部上場企業で経営企画担当のマネージャー職にあるものです。経営・事業企画担当の立場から M&A、事業戦略、IR、戦略法務についてアカデミック+実務の視点からの気付いた点や考えることについて情報発信していきます。

必ずしも「買収防衛策=(イコール)機関投資家は反対」ではない

先日の日経新聞によれば、2017年1月~4月の期間に買収防衛策を廃止した企業数は14社になり、大きく増えているということのようです。さらに2日ほど前にも買収防衛策廃が増えているとの記事が日経新聞にまた出ていました。

買収防衛策は以前にブログで詳細に掲載しましたが、会社の発行済株式について大量に取得(10%~20%程度)しようとする買収者に対して、会社に意向表明書の提出を求める等して、企業価値を損なうものでないかどうかを会社が検討し、場合によっては株主総会に諮り株主の判断に委ねるので、それまで買収を開始しないようにというルールをあらかじめ株主総会の決議を経て導入しておき、そのルールに違反した場合には、買収者以外が権利行使できる新株予約権・新株を発行するというものです。この結果、買収者の取得した株式の議決権の比率を希釈化させるというものです。詳しくいいますと、もう少し色々とあるのですが、単純にいうとこういう感じです。

買収防衛策に対する機関投資家の議決権行使に対する見方は厳しくなり、株主総会での会社の提案する買収防衛策議案に対する反対が増えているということのようです。

しかし、私が実際に機関投資家と話をした限りでは、この反対には一定の条件をつける必要があり、この条件を充たして会社の買収防衛策に対しては、現時点では機関投資家は賛成しているという感覚をもっています。

2、3年前からも買収防衛策に反対という機関投資家はおりましたし、当時は賛成していた機関投資家の中には、厳しくなっているところも勿論ありますが、ROEが一定比率あり、業績も悪くない会社であれば、現時点においては2、3年から大きく行使基準は変わらないと思います。

実際に機関投資家20社程度とこういった討議をしてきました私の実務経験に基づきくものです。勿論、全体として厳しくはなってきているので、業績の低迷している企業や特にROEが低い会社には、数年前には賛成したいたのに、現在は反対というのはあります。

また、機関投資家に単に株主総会の招集通知を送付するだけで(買収防衛策の導入・継続は多くの会社が株主総会の普通決議事項にしています)、機関投資家に何ら事前の説明をしないというような会社には、機関投資家は反対を投じるケースも多いのもたしかです。

要するに、機関投資家との対話の機会を増やし、買収防衛策の導入・継続の趣旨を伝え、買収防衛策が経営陣の保身のためのものではないことをきちんと伝えれば、ROEが一定程度あるような会社であれば、買収防衛策議案は賛成となると思います。

どうしても新聞報道だけを見ると、こういった実務の話を飛ばして(記事を書いている新聞記者は、所詮は実務を知らない人ばかりだから仕方ありませんが)、「株主総会で買収防衛策を提案すること=機関投資家は反対」という書きぶりになり、「(機関投資家との対話を行わないで)株主総会で買収防衛策を提案すること=機関投資家は反対」という肝になる括弧の説明が飛んでしまっています。

新聞記事を読んでいて、「肝心のところの説明が抜けているのでは?」と思いました。

フェア・ディスクロージャー・ルールの成立

5月17日に改正金融商品取引法の改正法が成立しました。企業が重要な情報を開示する際に公正な開示を企業に求める制度で、フェア・ディスクロージャー・ルールというものです。

上場企業は、証券会社のアナリストと個別に面談して色々と情報交換をすることが一般的ですが、新しいルールによれば、アナリスト等に未公表の重要情報を伝えた場合、直ちにホームページ等に公表するということのようです。要は、アリストだけを特別扱いするのではなく、投資家には平等に情報を開示することを求めるということです。

フェアー・ディスクジャー・ルールの動向については、私も昨年から機関投資家やアナリストと何度か話をしましたが、アナリストの懸念事項は、このルールによって企業が開示する情報が制約を受け、結果、アナリストが十分な情報を会社から収集できないことになるのではということにあります。

私自身はまだこの改正法の詳細は見ていないのですが、新聞報道によると、未公表の重要情報がどこまで及ぶかはまだはっきりとしていないということのようで、実務上の扱いは今後、指針等が策定される模様です。

投資家との対話の強化という流れの中で、SR部(Shareholders Relationship)などを設立して企業の活動を積極的に投資家にアピールするというのが、最近のESG投資とも絡んで、最近の流れかと思いますが、これに対して今後どのような影響が出てくるのか興味深いところです。

公平な情報の提供となれば、機関投資家個人投資家を問わず、ホームページに情報開示する機会が益々増えるほか、投資家への説明会の開催頻度も現在のように決算発表の際だけでなく、定期的に開催する頻度も増えるように思えます。とすると、IR部やSR部という部署の果たす役割は益々重要になってくるように思えます。

社外取締役を目指してはいかがでしょう

コーポレートガバナンス・コードの影響もあり、社外取締役を複数選任する上場企業も多いと思います(なお、東証の要請があるのは当然のことながら上場企業であるため、非上場企業は社外取締役の設置は不要です)。

前々から社外取締役の報酬はいくらであるのか気になっていたのですが、少し前の日本経済新聞の報道で次のような報道がありました。


  100万円 ~    499万円  38%
  500万円 ~    999万円  36%
1000万円 ~ 1,499万円       14%

最多が100万円~499万円のレンジとのことで、一方、米国は2,000万円~3,000万円で欧州も1700万円とのことです。一方、三菱商事トヨタ自動車など超一流企業だと2,000万円とのようです。

これを多いと見るか少ないと見るかですが、社外取締役の業務として月1回で年間12回の取締役会の出席のみであれば、仮に500万円とすると約42万円/月となり、月1回1~2時間の出席と考えると時給にすると1時間20万円ですから大変多いですね。

知り合いのある外資系の投資銀行の方が勤務先の証券会社を退職して、現在数社の上場会社の社外取締役になったのですが、投資銀行というファイナンスのプロでなくても、役員になれない大手事業会社のサラリーマンは、他社で社外取締役を目指すのも1つの考えであるように思います。

大手企業、中堅企業を問わず、通常、役員になれない社員は50歳後半になると役職定年になり、それまでの部長・課長の肩書きがなくなり、さらには年収も3分の1、4分の1程度まで下がることがほとんどのケースです。年収が下がるのはやぬなしとしても、辛いのは肩書きがなくなり、指揮命令の権限がゼロになるので、社内での居場所もなくなります。

ここで考えるべきは、大手企業の部長クラスであれば、その会社では居場所はなくとも、それまでのノウハウや経験は中堅クラスでは貴重な財産になる可能性があるということです。

大手企業であれば、当たり前のこととしてなんら疑問に感じていないことでも、中堅企業では、出来ていないことが多いということを前職の証券会社勤務時代に知り合いの元銀行員に良く聞きました。この方は50歳で取引先に出向した方です。自分のキャリアをこれまでの勤務より小さい会社で活かせる場は沢山あるのです。その可能性の1つが社外取締役です。

ただし、大手事業会社の部長クラスと言っても、本を沢山執筆している、大学で客員教授をしてるなどの場合を除けば、世間では全くの無名の人です。毎日会社で仕事して、家に帰るだけという人生を送っている方に「是非うちの社外取締役に就任して下さい」などと言われることはまず100%有りえません。

とすると、何をすべきかですが、遅くとも40代後半には、積極的に自分のノウハウを情報発信し、中堅企業の社長・役員クラスとの交流の場を探し、自分の能力をアピールしてネットワークを早い段階から形成しておくことが大事になります。

50歳半ばを過ぎて、担当部長として、担当社員時代と何ら変わらず、一生懸命働く方もいるかと思いますが、その姿は、「真面目な人」という点では大変すばらしいとは思います。しかし、役員になれない以上は年収激減という人生最大のリスクが数年後にせまっているのであり、それを考えると真面目にコツコツ頑張るより、社外の有力者に自分を売り込み、「究極のゴール」として社外取締役に就任することを目指ことも大切と思います。

そもそも冷静に考えると40歳前後で同期の平均的な昇格より2年も遅れている人は確実に役員にはなれず、場合によっては部長にもなれません。人によっては40歳前半から社外にも一定程度の目を向けて活動をしてネットワークを構築していけば、大手企業には勤務しているものの、残念な思いのまま定年を迎えるより、同期より高収入を得ることが出来る可能性もあるかも知れません。

いずれにせよ、自社にいればただのシルバー人材になってしまうところ、知恵を絞って常に高いアンテナをはって社外に目を向けて行動をすれば、中堅上場企業で社外取締役に就任して、それが更なるネットワークの拡大につながり、定年後も大いに活躍できる可能性もあるのではないでしょうか。

会社役員の巨額損害賠償リスク

4月28日の新聞報道で、オリンパス粉飾決算事件に関して旧経営陣陣に対する株主代表訴訟東京地裁の判決があり、590億円の賠償命令が出たとのことです。過去2番目の高額の賠償額とのことのようです。

株主代表訴訟とは、役員が会社に対して損害賠償義務を負う場合に、会社に代わって株主が訴訟を提起して、役員に会社に対して損害を賠償することを求める訴訟です。会社法上、役員(取締役や執行役です。ちなみに「執行役員」は、各社自由に制度設計できる「擬似役員」であり、会社法上の役員ではありません)は会社との間では委任関係にあります。従って、受任者として善管注意義務に基づき職務を行う必要があるところ、業務上、不正行為を行ったり、または役員としての業務監督責任を怠り会社に損害を与えたような場合には、会社に対して損害賠償義務を負います。

そして、本来であれば、監査役または監査委員が会社を代表して役員に対して損害賠償請求をするのですが、実務上、身内に対して賠償請求をすることは期待できません。そこで、登場するのが、会社の株主です。つまり株主は、会社が損害賠償請求を行わないのであれば、自らが会社に代わり、役員に損害賠償請求をして、損害について会社に補填するよう裁判を起こすのです。裁判で勝っても株主にはお金は入るわけではなく、会社に訴訟で負けた役員からお金が支払われることになります。これが、株主代表訴訟の構図になります。

では、役員はこのような巨額の賠償を支払うことが出来るのでしょうか?

オリンパスでは6名の元役員が訴えられているようですが、単純に6人で590億円を割ると1人当たりの賠償額は100億円近くになります。まず個人では払えない金額かと思います。もっとも、通常は、地裁の判断はこのような天文学的な数字の賠償命令が出ても、訴えられた役員サイドが控訴して、高裁で和解に至ったり、またはまともな高裁判決が出て賠償額が下がるケースが多いのですが、それでも総額で数十億から数億円という金額になります。

大企業の役員クラスでも会社のサラリーだけを生活の糧としている場合、数千万円の支払は、個人としては間違いなく大変大きい負担かと思います。仮に支払えたとしても、個人の人生設計が破綻するか、大きく人生設計の変更が必要になります。

そこで役に立つのが、会社役員損害賠償責任保険です。つまり、会社が予め役員の賠償責任に備えて、保険会社との間で役員が損害賠償を負うことになった場合に保険でカバーできるよう保険会社との間で締結する保険契約です。通称、D&O保険と呼ばれており、上場企業では、多くの会社が保険会社と締結していると思います。従い、株主代表訴訟で損賠賠償義務を命ぜられても役員はD&O保険でカバーされます。

しかし、D&O保険も万能というものではなく、保険内容によって異なるかと思います。
私の経験上は、自ら不正行為を行った役員は付保されない、つまり保険でカバーされないケースが多いような印象を持ちます。とすると、オリンパスのような巨大企業では当然D&O保険は結んでいるかと思いますが、今回の対象者全員が付保されるのかはなんとも言えないようにも思えます。

サラリーマン人生では、会社の大小の規模はさておき、自分の所属する会社組織という「村」において役員になることが1つの成功であることは間違いないですが、このように役員になると、損害賠償義務を会社法上負うリスクが生じます。

従い、役員になる場合には、そこで得られる報酬とリスク、そしてリスクのカバーがどうなっているかをしっかりと理解されることが大切と思います。

上場企業と言っても、売上高が数兆円を超える大企業から、売上高十億円から数百億円規模の中小規模クラスまであり、中小規模クラスの役員は(オーナー一族は別ですが)、大企業の課長クラスを下回る年収しかないというケースもだいぶ多いと思います。中小規模クラスで50歳を過ぎて役員になり、ようやく大企業の課長クラスの年収程度になっただけなのに、株主代表訴訟が提起され、仮に年収の10年分の損害賠償義務を負わされたら全く割に合わないですね(ちなみに、2016年度の中小企業白書を見ると日本の会社数は、約380万社あり、東証での1部上場企業はこの中でも3500社程度です)。

役員であれば自社のリスクや不祥事など世間には言えない内部情報に接する機会も多いと思います。そのような情報に接した場合には、自分を守るには、そのリスクを摘み取る努力をすることが自身のリスクヘッジとして大切になります。

経理や経営企画等の管理部門出身の方は、株主代表訴訟などについて十分に認識されているケースが多いですが、営業や技術の経験しかない方は、通常は株主代表訴訟といわれても、全く門外漢であるのが通常です。とすると将来会社に損害を与えるきっかけとなる情報の端緒を認識しながらも、自分の担当外だから放置しようという考えを抱く方もいると思います。

しかし、役員である以上は、部長クラスといったような一般従業員とは異なり、会社の経営全体への監督義務というものがあり、問題の端緒を放置して、それが後日大きな問題に発展した場合には、自分が株主代表訴訟の被告になる可能性もあり得るのです。

特に、数年前に会社法制度が変わり、株主は金銭的な負担を強いられることなく簡単に株主代表訴訟を提起できますので、他人事と思わず、十分な注意を払う必要があると思います。

以上、オリンパス株主代表訴訟の新聞報道も見て思うところを書いてみました。


事業提携交渉において「将来のお別れ時」の条件も十分に検討することの重要性

4月に入って以降もほぼ時間がなく、ブログの更新が出来ていませんでしたが、3週間ぶりに更新をします。

東芝について、監査法人を変更するなどの報道や銀行から訴訟が提起されたとの報道が続いていますが、1週間ほど前に、半導体分社にあって米国ウエスタンデジタル社(WD)が合弁契約の違反を東芝に主張しているとの報道がありました。

フラッシュメモリの生産について東芝とWD間で合弁会社保有しており、東芝がこの合弁会社の持分を東芝メモリに移行することが合弁契約違反とのことのようです。

合弁会社とは、2社以上の会社が共同出資して設立する会社ですが、合弁契約においては、当事会社が自己の持分を第三者に売却する際には、合弁相手方の同意を得るとの規定が規定されています。合弁とは相手方を信頼して一緒になって事業をやって行こうというものですから、勝手に自己の知らない第三者に持分が移転することは通常制約されます。

合弁を「結婚」と考えると、夫が、妻に飽きたからと言って夫の地位を妻の知らない赤の他人に勝手に移転できるとなったら妻は困りますよね。それと同じことです。

東芝のケースでは、持分譲渡について、合弁契約上の売却の制約に縛られないという東芝の主張と縛られるというWDの主張に対立が生じているようです。合弁契約の内容は分かりませんので、どちらの言い分が正しいのかなどは推測がつきませんが、ここから思うところは、合弁はじめ事業提携を開始するに当っては、やはり契約で、事業提携の解消、つまり「お別れ」のケースも想定して明確に規定しておくことが重要であると今更ながら思いました。

合弁などの事業提携を開始するときには、当事会社は互いバラ色の前向きのことを考えており、従って、提携解消(「お別れ」)時の解消条件や手当てについてあまり深く考えないことも多いと思います。「お別れ」は将来、少なくても数年以上経過して起こることであり、交渉担当者には案件を纏めるということしか念頭になく、遠い将来に発生するかも知れない後ろ向きのことを考えるインセンティブはないといえます。

従い、最終的には、「お別れ」の際の重要事項は、お決まりの文句である「別途協議して定める」ということで終わることになります。

しかし、問題は数年後または十数年後に「お別れ」を検討する時です。合弁という「結婚」をして事業を共同して進めてみたものの、相手会社と相性があわず合弁や事業提携の解消を検討するという局面です。この場合にはじめて、契約上の「お別れ」に関する規定が大きくクローズアップされることになります。明確に規定をしていない時には、誰が責任をとるのかという議論にも発展します。

しかし、当時担当した事業部門や企画部門の方は、数年も経つと人事異動していることも多いので、責任を負わないことになります。となると、後は人事異動の範疇から外れている法務部の人間が「どうしてこんな契約を作成したんだ」と言われることになります。ちなみに、法務部の社員は、一度法務部に入ったら、他の部署に異動することもなく、ビジネスや計数との縁もないまま法務部という地味な部署でサラリーマン人生を終えるという人もかなり多いと思います。従い、事業部や企画部門の方のように、異動で担当が変わり自分は知らないと言えないことが多いのですが、責任を問われた時は「自分はNGと主張したが、交渉責任者の強い意向でこういう規定にしたのです」という逃げ文句を使います。

法務部は、交渉担当者が決めたことをきれいな表現で契約に書き起こすという文書作成がすべての仕事ですから、もっともな理由になります。

とすると、責任を取る人間はおらず、結局は、その時の担当者が大変な苦労をすることになります。

このことを考えると、交渉を担当する事業部門や企画部門の方は、交渉を開始するときには、交渉成立という強い圧力がかかる中でもきちんと「お別れ」のケースも想定して、提携の段階で決めておくべき重要事項は経営トップにも明確に伝え、交渉合意のセットとなる合意事項とすることが大切かと思います。

株主総会の事務局の方は本質を理解して業務をしていますか?

業務でドタバタしており、2週間ぶりにブログを掲載します。さて、3月期決算の企業は、株主総会の時期が近づいていると思いますが、各社とも総会実務ご担当の方はこれから大変忙しい時期に入るのだろうと思います。私も最初の会社に入った時は、商事法務業務全般を担当しており、定時株主総会も3年ほど事務局として経験したことがあります。総会の実務担当の多くの方と同様に、4月中旬頃から土曜日の出社は当たり前で、毎年ゴールデンウィークの最初の3、4日間はフルで上司と一緒に仕事という日々でした。

さて、今日書きたいのは、「総会の事務局担当の方は総会業務に過度に力を入れすぎていませんか?」ということです。
 
5月、6月の総会時期直前になると各社とも役員や事務局の方が非常にお忙しい様子ですが、本当に必要な作業であるのかを考える必要があります。何故ならば株主総会というものは、1円の利益も生み出す仕事ではないからです。総会の過去の事務局の経験を通じて、一番思うのは、自社が特段世間で目立つような企業でもないのに株主総会当日の株主からのQ&A対策はじめ株主対策に過度に力を入れている会社が多い印象を受けます。

消費者向けのいわゆるBtoCの商売をしている、航空業界、サービス業界、鉄道業界などは毎年の株主総会の招集通知を見れば分るように分けのわからない株主が株主提案として、どうでもいいことを会社の事業目的に追加しろとか社名を変更しろといった提案を会社法の規定に則り権利行使をしてきます。この場合には、当然に総会当日もこういう輩が何を主張してくるか分からないので、十分なQ&A対策をするということも良く理解できます。

しかし、部品メーカーはじめいわゆる世間で目立たない企業はここまで行う必要性は不要だと思います。より正確に言えば、世間一般で知名度もなく、かつ過去に株主総会特殊株主で荒れたような経験もない企業です。総会で荒れることもないのに、このような収益を生まない業務に過度に経営資源を割くのは無駄ですよね。
 
とすれば、総会担当者がまずやるべきは、自社の3月末の株主状況を見て、特殊株主に株付けされていないかどうかを見て、さらに事前の株主からの質問状や株主提案もないのであれば、総会当日に参加する株主は言ってみれば、ずぶの素人なので、総会のQ&Aなどに過度の時間をかける必要はないのです。この本質を理解していないと、総会にOBのお年寄りや土産目的で参加した個人株主の素人質問に過度に敏感になって過度な対策を講じ、結果、1円の利益も生まない総会業務に貴重な役員の時間も費やすことになるのです。
管理部門や経営企画部門を担当していない役員は、株主総会の本質やわずか1%以下の比率の株主が持つ権利の意義を理解されている方も大変少ないと思いますの、忙しい役員に無駄な時間を割いて頂くことのなきよう理解していただく必要があります。

総会のQ&Aの作成を事務局が各部門に依頼するにしても、「あくまで個人株主の一般的な質問を前提に作成して下さい」ということを言えば、簡潔で必要最低限の内容で済むのです。まず会社の内部者しか知らないような細かいことをわざわざQ&Aを作成するということは、時間の無駄以外の何ものでもありません。そもそもアナリスト説明会でプロであるアナリストの質疑応答をしている役員が、すぶの素人の株主の質問に答えられないということはまずないのです。
 
総会の実務担当者がそもそもこれらのことを理解していないとどうしようもないのですが、本質を理解して効率的な業務を進めるのが肝要と思います。

相談役などによる「院制」への批判の理由

3月11日の報道報道にて、経産省有識者検討会が「相談役」について企業が職務内容や就任の経緯などを開示すべきとする報告書を纏めたとの記事がありました。東芝の問題もあり、最近、企業の元経営トップが就任する相談役制度について強く批判される動きにありますが、相談役制度の問題はどこにあるのでしょうか。

相談役とは、企業の社長経験者が、その後、会長になり、会長を退任した後につくポジションかと思います。相談役制度のメリットは、経営の経験を積んだ相談役が現経営陣に対して大所高所からアドバイスをするということにあるかと思います。

しかし、問題とされているのは、取締役の地位にない相談役が現経営陣に対して指導・指示をすることで経営に対する相当程度の影響力を行使しながらも、相談役は会社法上の役員ではないため、責任を問われる立場にないという点です。つまり、取締役・執行役(執行役とは指名委員会等設置会社における執行役であり、いわゆる「擬似役員」である「執行役員」は別概念です。執行役員は、「法的」には一般従業員に毛が生えたような制度です)はその業務執行に対して、対会社及び対第三者に対して会社法上は損害賠償責任を負っています。

しかし、相談役は取締役の地位にない中、現在の経営陣に背後から強い影響を与えながらも会社法上は賠償責任を負う立場ありません。指導といいながら相談役の発言は、外部のコンサルタントとは全く異なり、ある意味で指揮命令の一種ともいえますが、経営に失敗しても責任を問われないという点です。特に取締役会に出席してもいないにもかかわらず、外部の株主から良く分からない点で経営に影響を与えているという点が問題視されているのです。

とすれば、相談役が現経営陣に対して業務執行への強い影響を及ぼす指示をするのであれば、①相談役の選任に株主の意思を反映させるプロセスにする、②相談役もその職務については、会社法上の損害賠償の義務を負わせるという建付けにすれば問題はクリアになるように思われます。

ただし、相談役といっても、企業によっては本当の意味でアドバイスだけしており、そのアドバイスを採用するかどうかは、完全に現経営陣に判断を任せている会社も多く存在すると思います。とすると、相談役というキーワードをもって、全て問題視するのではなくその実態を見る必要があると思いますが、外部かは分かりにくいところではあります。

なお、以上の法的議論は脇に置いて、相談役という「院制」に対する道徳的な批判も議論のベースにはあるように思えます。要は、サラリーマン社長は、オーナー社長とは異なり、一般従業員の延長とも解釈でき、それにも関わらず社長を退任した後、つまり定年を迎えた後も企業に対して影響を行使するという点に関する批判です。

なお、個人的には、オーナー社長経験者の相談役は別に考える必要があると思います。オーナーはサラリーマンとはその根底において企業に対する思い入れは異なり、また、企業は自分の分身ですので退任した後のアドバイスも心から自分の分身である企業の行く末を心配してのことであり、サラリーマン社長とは根本的な感覚が違います。

ちなみに米国の一部の大企業では、サラリーマン社長は退任後は一切経営に口を出さないと本で読んだことがあります。日本と違い報酬の面で、一般従業員の延長ではなく、大成功したオーナー社長と同じように数十億円の巨額の報酬を得て、リタイア後に自分で投資事業を企業したり、別のあたらな活動をするので、経営に口を出すインセンティブや時間もないということのようです。要は興味の対象が会社以外に目が向けられるほどの金を稼げたかどうかがポイントかと思います。
日本でもサラリーマン社長の報酬が、一般従業員の数倍程度の報酬ではなく、大リーグで成功したほんの一握りの日本人のプロ野球選手のように、別世界の住人のような巨額の報酬を得ることが出来れば、職業人生の定年を迎えた後も経営に口出しをする「院制」などという言葉はなくなるのかも知れません。

持分法適用会社を保有する意義は?(2)(東芝機械の持分譲渡のケースを例に)

前回、持分法適用会社を保有する意義として①対象会社の利益を取り込むこと、②取引上のメリットを享受すること、③対象会社の敵対的買収リスクを低減することのうち、②について思うところを書いてみましたが、今回は③及び①の順番で書いてみたいと思います。

まず③ですが、敵対的買収者とは、対象会社の経営陣の同意を得ないまま上場企業の株式を取得することで対象会社の経営を支配することをいいます。敵対的買収においては、買収者が公開買付(TOB)により投資先会社の株価に20%~30%程度のプレミアムを付けて買収を呈示し、これに納得する既存株主、つまり「折角高い価格で株式を買ってくれるので、売却してキャピタルゲインを得よう」と考える株主は遠慮なく応募をすることになります。

この場合、対象会社を防衛するためには、このTOBに応募する株式数をなるべく少なくする必要があります。このためには対象会社の経営陣は常日頃から会社の魅力を株主に伝えて、理解して貰い長期に亘り株式を保有して貰うことが大切ですが、即効性がありより重要なのは安定株式数が高いことです。

そこで、持分法適用会社として20%の株式を保有する筆頭株主が存在する場合、この株主は安定株主といえるので、企業を防衛する上で大変に意義があります。勿論、残りの80%を取得されてしまったら意味がありませんが、少なくとも確実に20%分は安定株主となるので会社が残りの会社サイドの株主(与党株主とでもいうのでしょうか)を確保する上で有用な施策になります。

ちなみに、東芝機械の例を挙げると、同社のPBR(株価純資産倍率)は割安と言われる1倍を下回っており、また、東芝機械は、買収防衛策を導入しており、2016年の定時株主総会で継続更新しています。
とすると程度の差はあれ買収リスクはあると考えているのであり、その観点からは東芝が20%の株式を保有していることは敵対的買収リスクの低減という点で大事であったといえると思います。

次に①についてですが、これは会計上の話になりますが、持分法適用会社の純利益に持分比率をかけた額は保有する会社にとっては自社の連結PL上に、営業外収益として取り込めます。

つまり、50%以上を保有する連結子会社のように売上高以下の全てのPL項目を取り込むのではないので、対象会社の利益率が自社より小さい場合でも、ひとまず営業損益より後の項目の利益に関して売上高経常利益率売上高当期純利益率は向上することになります(売上高以下のPL項目を取り込むと対象会社の営業利益率が自社より悪い場合には、取り込み後は自社の売上高は増えますが営業利益率は低下することになります)。
また、連結子会社の場合と異なり資産・負債を取り込むこともないので、程度の差はあれROAも改善することになります(分子の利益を「当期純利益」とした場合です)。もっとも、対象会社の当期純利益が利益ではなく「純損失」となっている場合には、逆で利益率やROAは悪化することにはなります。

このように仮に事業上のメリットがない場合でもあっても対象会社の業績が好調である場合には、自社の決算にプラスの影響になります。

東芝機械の2016年3月期の純利益は約48億円でした。とすると東芝は48億円のうち出資分相当額を自社のPLに取り込めることになります。取引上のメリットがない場合であってもこのように利益が出ていれば取り込めるわけですから、意義があるといえますが、巨大企業の東芝によってはこの利益がそれほど影響があるとはいえないとも考えることができると思います。

以上、持分法適用会社を持つことの意義について思うところを書いてみました。

持分法適用会社を保有する意義は?(1)(東芝機械の持分譲渡のケースを例に)

先日東芝が持分法適用会社として保有する東芝機械の株式の一部を売却する(20.1% のうちの18.1%)との報道がありました。持分法適用会社とは20%超の株式を保有する投資先の会社のことをいいますが、そもそも持分法適用会社(以下、対象会社と いいます)を保有する意義はどこにあるのかということについてあらためて考えてみま した。

私の考えるところでは、次の3つほどかなと思っています。
①対象会社の利益を取り込むこと ②取引上のメリットを享受すること ③対象会社の敵対的買収リスクを低減するため

他にも色々とあるのかも知れませんが、順不動になりますがまずは②、③の順で考え、最後に①について考えてみたいと思います。

まずは②の取引上のメリットですが、これは保有することで取引面のメリットを享受することです。対象会社が自社にとって重要な経営資源をもつ場合、20%の株式を取得して筆頭株主になることで経営に影響を及ぼす、自社に有利に経営資源を利用できるようにするというメリットです。

しかし、ここで考える必要があるのは、具体的にどのようにして経営に影響を及ぼすことが出来るかです。事業への影響力の行使を考える場合には、対象会社の株主総会を通じての影響と取締役会を通じての影響の2つの場合を考える必要があります。

株主総会を支配するには50%超の株式保有が必要になるところ20%では支配することはできません。
次に取締役会での支配ですが、取締役会は出席取締役の過半数の賛成で決議されますので、対象会社の取締役会の員数が5名の場合、3名が自社サイドの取締役である必要があります。なお、取締役会の決議は「出席取締役」の過半数ですので、何らからの圧力や懐柔策によって(刑法に触れる方法はNGですね)、出席取締役の員数を減らせば、有利に取締役会を運営できる方向に向かいますが、これはあ くまでも例外的な措置です。

しかし、20%の出資で取締役の過半数を派遣すると いうことは現実的ではありません。

とすると、20%の出資で影響を行使するには筆頭株主として事実上の影響を及ぼしていくことになりますが、対象会社との間で経営・事業の運営方針に対立が生じたような場合には、法的に優位に立てるということにはならないことに注意する必要があります。

この辺りのことを良く理解していないと、20%も出資しているから思いのままに出来るなどと考えてしまうと痛い失敗をすることがあります。

東芝機械のケースでいいますと、新聞報道では東芝本体と東芝機械との取引金額は3%以下のようです。逆にいうと東芝機械は、東芝以外の多くの顧客に製品を販売 していることになります。とすると、そもそも東芝機械を保有するということは、過去は分かりませんが、現時点では有用な経営資源を囲い込みたいということは目的にないように思えます。

次に③として敵対的買収のリスクの低減のための安定株主としての株式保有がありますが、長くなりましたので、残りの③と①の点は次回に分けたいと思います。

会社は誰のもの?

 

「会社は誰のもの?」とは良く聞かれる言葉ですが、会社は株主のものでありその価値を最大化するのが会社の経営陣の役割というようなことも良く言われます。

では、いったい誰のものなのでしょうか?

この点についてはが学者も交えて大変深い議論もなされており、事業会社の実務担当者が容易に語れることでもないのかも知れません。しかし、ここではまずはシンプルに考えてみたいと思いますが、とすると損益計算書(PL)の構造から利益の享受を受ける会社の利害関係者の順番を考えてみることが1つの考えとしてあるかと思います。

まずPLの最初に来るのが売上高であり、ここから利益を享受できる会社の利害関係者(ステークホルダーといいます)の順番を考えればよいと思います。

まずは、売上高の次にあるのは売上原価ですが、売上原価とは、単純に言えば販売した商品の仕入価格ですので、まず最初に売上高から仕入業者が代金の支払いを受けることができます。

次に売上原価を引いた後の売上高総利益から販売費及び一般管理費販管費)が引か
れます。販管費とは、販売に係った費用のほか営業人員や管理部門の人員の人件費が該当します。金額が大きいのは従業員の給料である人件費になります。したがって、仕入業者の次には、会社の従業員が給料という形で利益の享受を得ることができます。

そして、売上高総利益から販管費を引いた営業利益の後に、営業外費用として銀行への支払利息などが引かれることになりますので、銀行などの金融機関は融資した金額の利息の支払いという利益を享受できます。

そして、次に税引前利益から税金が控除されます。国は企業の利益の中から税金の支払ということで利益を享受できます。そして税金を引いた最後に当期純利益が残り、そこから株主は配当として利益を享受できます。

PLの構造上では、①仕入業者、②従業員、③金融機関、④国、⑤株主という順番で利益を受け取ることができ株主は一番最後にあります。

従い、株主の利益を最大化することが全てのステークホルダー(会社の利害関係者)の満足を満たすことが出来るのですが、当然に各ステークホルダーは利益を会社から享受する必要があり、株主が一番利益の享受の順番が低いのですが、誰のものかというと「株主のものということではなく、各ステークホルダーのものということになると思います。

他のステークホルダーの利益を犠牲にしても株主の利益を優先すべきという議論はそもそもおかしいですね。

 

地銀の統合延期の報道に見る企業結合審査の重要性(たかが手続き、されど手続き)

以前より何度か新聞報道されていますが、ふくおかFGと十八銀行の統合が公正取引委員会公取委)の企業結合審査が長引くため、2017年4月に予定していた経営統合を10月に延期するとありましたが、2月20日の新聞報道でも詳細の記事が掲載されていました。国内の地銀同士の統合で何度も新聞報道があるとはホットな話題の1つであるようです。

ポイントを纏めますと、この企業結合の結果、長崎県で貸出シェア70%の首位行が誕生し、これにより金利の競争がなくなり貸出金利の上昇など利用者にしわ寄せがいくことが問題とされているようです。統合により大きなシェアを持つ企業が出現することにより、市場プレーヤー間での競争が働かず、結果、製品またはサービスのユーザーが不利益を被る、つまり安い製品やサービスの供給を受けられなくなるということを規制するのが公取委の企業結合審査の考えです。

公取委の審査では市場をどこに考えるかが1つのポイントになりますが、長崎県を市場として考えているようです。市場が長崎県にとどまらず、九州全域や関西などと広げると市場プレーヤーも増えるので、この2社の統合後のシェアも薄まるのですが、長崎県と限定しますと市場も限定されますので、当然のことなが統合後の市場シェアも高まることになります。公取委の企業結合審査では、まずは広く市場を解釈できるように説得できる材料をそろえること、次に市場が狭く解釈された場合には、その狭い市場でも潜在的なプレイヤーの出現の可能性を主張できるような材料を揃えることなどが重要になってきます。

ちなみに本件は国内のみのドメスティック案件ですが、グローバル企業が統合するときも統合後のシェアが各国において一定の比率に高まる場合には、各国の当局の審査が必要になります。特に中国ではこの審査の時間がかかり、結果として審査が得られない限りは企業結合は実行できず、企業結合が遅れることが良くあります。

企業結合審査は、単なる手続きの話でありますが、あなどると統合が進まず大変なことになります。私が最初に勤務していた化学素材メーカーでは、もう20年近く前になりますが、ある世界の大手化学メーカーと日本、米国はじめ世界各国で合弁会社を設立しようと大きな事業計画を描いていましたが、日本での公取委の審査で市場のシェアが高まるということで統合の認可が下りず、結局グローバルでの統合が白紙になったという経験がありました。

本件とは規模感が違いますが、いずれせよ、このような統合審査に当たっては、十分な経験がある法律事務所を活用して取り組むことが重要です。

弁護士との対応窓口となると通常法務部ですが、私の経験上は、このような案件では法務部はそもそもビジネスが理解できていないことも多いので、法律事務所の折衝窓口にすると単なる伝達係にしかならず、社内の意見も満足に弁護士に伝えることが出来ないことも多いので、事業部門や経営企画部門が中心になって前面に立ち、法律事務所と協働して進めることがより効果的と思います。

通常の配当性向とグループ会社からの配当性向の考えの違い

先日の新聞報道によれば、企業の行う配当がリーマンショック時の2倍に増えているとのことのようです。企業業績も向上して配当を増やす企業が増えているということかと思います。

配当には、一般的には、自社の株式を保有する株主への中間配当、期末配当があります。配当が多いか少ないかの判断基準として配当性向という言葉があります。これは自社の当期純利益(税金を控除した後のPLの最後にある利益)に対する株主への合計配当額の占める比率をいいます。ある企業の当期純利益が100億円として、その期の配当金合計が30億円であれば配当性向は30%(=30億円÷100億円)となります。ちなみに、残った70億円はどうなるのかといいますと、バランスシートの純資産の部にある繰越利益剰余金(英語だとRetained earningで「RE」と略することも多いです)として蓄積されます。

以前にある会社が100%配当を実施したということも聞いたことがありますが、通常は20%~30%台を目指す企業が多いような印象を持っていましたが、新聞報道ですと2016年の上場企業の平均配当性向は35%程度のようです。

では、あまり言われないのですが、企業が自社の子会社から受け取る配当については、配当性向はどう考えればよいでしょうか。100%出資する子会社が当期純利益を出した場合です。

各社方針があるのかも知れませんが、この場合、先に書いたように35%などということは通常なく、基本的には100%配当ということになるかと思います。

問題は実際にこれがスムーズになされているかということです。ここで子会社が日本法人である場合と海外法人である場合を分けて考える必要があると思います。

日本の子会社であれば、親会社から転籍した方が経営陣になることも多く、また日本人同士ですから100%配当は実施しやすいのですが、海外法人の場合は結構難しいケースもあるのではないでしょうか。

海外展開を進めている会社は、現地法人のトップは現地採用のマネジメントとし、日本人を経営トツプから外している会社も結構多いと思います。このような場合、現地法人のトップは自分たち現地で稼いだ利益を本社に吸い上げられることに抵抗するケースも中にはあるのではないでしょうか。要するに「俺たちが努力して稼いだ利益をどうして親会社に全部上げる必要があるのか?」ということです。

しかし、そもそもグループ経営とは、一体としての経営であり、子会社は法人ではありますが、実態としては親会社の1部門と考える必要があります。また、当期純利益の算定に至る過程で、グループ会社の従業員への給与、役員賞与は販管費で既に控除されているのであり、特段の事情がない限り、最後に残った当期純利益を出資者である株主、つまり親会社に還元すべきものなのです。また、現地に利益をおいておくと、横領等の不正が発生するリスクも高いのではないでしょうか。

ただし、100%配当性向といっても、現地法人が設備投資(Capital expenditureということで通常「CAPEX」といいます)をするような場合は別です。この場合は、このCAPEXに見合った金額は配当から控除するということになります。金がないと設備投資ができないからです。

まとめますと、日本の親会社としては、配当の考え方の社内規則などを制定して、現地の経営トップには予め十分な説明をしておき、100%配当の発想をきちんと認識させるということが重要になってくるように考えます。

パテントトロールとは

本日はパテントトロールについて書きたいと思います。パテントトロールとは、数年前から日本でも時折耳にするようになり、知財部の方などはご存知の方も多いと思います。 最近ですと米アップル社がパテントトロールとの間で訴訟に巻き込まれ数百億円の和解金を支払ったという報道もありました。

パテントトロールとは、保有する特許権を侵害している疑いのある会社に特許権を行使して、巨額の賠償金やライセンス料を得ようとするものをいいます。自ら特許を使って製品を開発・製造している会社はパテントトロールとは通常言いません。

事業会社は製品を製造するに当たり多くの特許を使用しています。新製品の開発や既存製品の設計変更をする際、通常は公表情報や他社のエンジニアの文献、学会発表資料や他社製品を見て他社の特許を侵害しないよう回避する努力をしますが、それでも完全に回避できないケースも多いのです。となるとどうするかといいますと、関連する技術の特許権利化を数多く行い自社の保有特許数を増やします。そうすることで、他社保有の特許を万一、侵害して同業他社から権利侵害の主張を受けた場合でも、自社も相手に権利侵害を主張できる材料を増やすのです。同業他社であれば類似する製品を開発・製造している訳ですから、保有特許を増やすということは、同業他社に権利侵害主張をさせないようにすることになるのです。

しかし、パテントトロールは、事業を行っておりません。とすると、彼らは手に入れた特許を武器に、当該特許に抵触する特許を使用して製品を開発・製造する企業に侵害に基づく、損害賠償請求を遠慮なくして行くのです。 日本では、パテントトロールが大きく活動しているという報道は目にすることもなく、パテントトロールを脅威と考えて、有効な対抗策を各社どのようにとっているかは分かりませんが、効果的な対抗策はないように思えます。先日ある報道を見たところでは、アメリカでは法規制を強化すべきではとの議論も出ているようです。

ところで、大企業の中には知財部の陣容が充実している会社もありますが、多くの企業では、陣容も小さく、エンジニアの発明の権利化の手続きが知財部の仕事の大部分という会社が多いのではないでしょうか。しかし、中には、事業戦略・営業戦略・知財戦略の三位一体を掲げて、知財部が事業戦略立案に積極的に関与しようとす動きをとっているようです。日本では知財部というとどうしても防御的な仕事をする部署とのイメージが強いですが、パテントトロール対策も含めて知財部が戦略的な提案(休眠特許の売却、知財戦略による技術の囲い込みなど)を今後することは重要になってくると思います。

社外取締役の役割と適正とは

先日の新聞で、政府は未来投資会議において成長戦略の中間整理を示したとの記事がありました。この記事によれば、コーポレートガバナンス・コード改革を一段と進めることを柱にするとのことで、会議では、社外取締役などの外部の目を生かすようなことも議論されたというような内容でした。

社外取締役ですが、最近は多くの上場企業が設置しているかと思います。特に2015年6月に東証金融庁によるコーポレートガバナンス・コードにおいて上場企業は社外取締役の複数選任が義務化されたことによるものと思われます。

ここであらためて考えてみたいのですが、社外取締役を設置する意義はどこにあるのでしょうか。

取締役会の役割は、業務執行と業務執行の監督の2つがあります。しかし、業務執行は社外取締役に期待されるものではないと考えます。業務執行とは、まさしく会社の日々の業務の執行であり、社外取締役はいわゆる非常勤でありますので、日々の業務執行を行うことは出来ません。

そこで、期待されるには、業務執行の監督となります。そして、更に監督を大きく2つに分けると、「作為の監督」と「不作為の監督」になると考えます。作為の監督とは、経営陣が何か能動的な行動をする時にこれが適法かつ効率的になされるように監督することです。これが通常の社外取締役の役割と考えている会社が多いのではないでしょうか。

しかし、これ以上に重要なのが、不作為の監督ではないでしょうか。つまり、経営陣が事業運営に関して何もなさないこと(=不作為)について、作為を促すことです。例えば、中長期的な成長の視点から、自社にない経営資源を買収で取り込んだり、または不採算事業の戦略撤退の行動を行うことを促すというようなことです。

多角化事業を行っている企業は、担当事業毎に担当役員が分かれており、結果、自分の担当外の事業については、なかなか口だしにくいもののようです。私が最初に勤務していた化学素材メーカーは、事業セグメントがたしか5つほどに分かれていましたが、ある時に上司と一緒にある役員と酒を飲んだ時にそのような話を聞かされ、当時は入社間もないため組織のことが分っていなかったので、そういうものかと思った記憶があります。
遠慮をすることなく横断的な意見を述べることの出来る能力を持った人材である必要があります。

では、次にどういうバックグラウンドのある方が妥当なのかですが、上のような役割を期待するのであれば、やはり事業や会計・金融の経験者でないと難しいように感じます。事業の再編や投資に際には、事業、会計や金融の知識が必要になるからです。

時々弁護士や大学教授を社外取締役にしている会社も見ますが、弁護士(といってもより厳密には、メイン顧客が上場企業である一定程度の規模の法律事務所のことです)は、法律事務に精通した専門家ではありますが、会社の事業全般や金融に関しては、当然ながら実務の知見は持っておりません。とすれば、役不足かと思います。

もっとも、不祥事を起こした企業でリスク管理体制の構築などでの役割を期待するのであれ、そういう経験のある弁護士を社外取締役に起用する意義はあるのかも知れません。また、大学教授などは有名人であれば、会社のPRとして価値はありますが、そうでなければ甚だ疑問が残ります。

なお、事業経験者といっても大企業であれば、外からの見え方という点からも、自社と同等又はそれ以上の規模の経験者を選任対象とすることも実務上は大変多いと思います。とすると、そのような資格をもった社外取締役候補者は人数も限定されてしまいますので、難しいところでもあります。

社長クラスまたはそれに準じる役員クラス経験者を社外取締役にすべきとの提言も見たことがありますが、上場企業といっても世の中ピンキリであり、小さい規模の上場企業の社長がいわゆる大企業の社外取締役に就任するのは、まず現実的ではありません。逆に萎縮して大企業の取締役会で何も言えなくなってしまったら、それこそ何のための社外取締役であるのか分かりません。

と色々と感じたことを書きますと、社外取締役の設置は意味あるものかも知れませんが、実際にはなかなか適切な人材を探すのは容易ではないので、これを法律やガイドラインによって一律設置を義務付けるということは、企業サイドから見た場合、どこが違和感があるように感じます。

のれんの計上と企業の損益に及ぼす影響

最近の東芝の報道でのれんの減損などが話題になっています。のれんという言葉を耳にする方も多いと思いますが、のれんとは何でしょうか。

のれんが発生するケースには、企業の買収のケースがあります。

分かりやすく具体的をあげますと、例えばある企業(A社とします)の株式の100%を買収するとします。この場合、A社の純資産(株主資本)が100億円で、買収金額が150億円であったと仮定します。

とすると、買収金額と純資産の差額50億円(150億円-100億円)がのれんとして買収する企業のバランスシートの無形固定資産に計上されることになります。

この後、A社の事業が大きく悪化したような場合には、減損損失として損益計算書(PL)の特別損失に費用計上することになり、買収企業のPLの営業利益への影響はありませんが、経常利益より後にある税引前利益、純利益にマイナスの影響が出てきます。

また、減損しなくてものれんは20年以内の期間で償却することになります。とすると仮に償却期間を10年で設定した場合、毎年5億円(50億円÷10年)が減価償却費として買収企業のPLの販管費に計上され、結果、営業利益がこの費用計上分マイナスになります。

買収金額は、DCF法、株価基準法などの色々な手法や当事者の合意によって決まりますが、入札などのいわゆるビット案件などは買収金額が大きくなる傾向にありますが、買収金額が純資産より大きいとその差額分ののれんが毎期の減価償却減損損失により買収企業のPLに大きな影響を与えるので注意する必要があります。

また純利益が減少した場合には、1株当たり当期純利益(EPS)も減少しますので要注意です。

ちなみに、営業利益とは本業での利益であり営業利益率(営業利益÷売上高)は投資家が気にするところですが、キャッシュ・アウトとしては減価償却費は実際には現金の支出を伴うものではないので、EBITDA(=営業利益+減価償却費)で見ると影響はないのですが、どうしても営業利益率は目に付きやすいので、これが下がると市場でも厳しく見られるのではないでしょうか。