コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

改訂コーポレートガバナンス・コードを反映したコーポレートガバナンス報告書の提出

6月株主総会シーズンが近づき、先日の日経新聞企業統治指針として改訂コーポレートガバナンス・コード(改訂CGコード)に関する記事が掲載されていました。

これまで改訂CGコードについては、何度か書いているので、改訂CGコードの詳細は今回は書きませんが、改訂CGコードへの対応は本年12月末までとされている中、6月1日以降改訂CGコードを踏まえたCG報告書を提出している会社も数社あるようですので、その簡単な紹介と今後企業が開示に当たって留意すべき事項について書きたいと思いま
す。

6月1日以降にCG報告書を提出している会社は、アサヒグループHD、セブン&アイカゴメ、Jフロントリテイリングなど1部上場企業では数社のようです。

政策保有株式については、カゴメが次のような内容を開示しています。

「当社は、直近事業年度末の状況に照らし、保有の意義が希薄と考えられる政策保有株式については、できる限り速やかに処分・縮減していく基本方針のもと、毎年、取締役会で個別の政策保有株式について、政策保有の意義、経済合理性等を検証し、保有継続の可否および保有株式数を見直します。なお、経済合理性の検証の際は、直近事業年度末における各政策保有株式の金額を基準として、これに対する、発行会社が同事業年度において当社利益に寄与した金額の割合を算出し、その割合が当社の単体5年平均ROAの概ね2倍を下回る場合には、売却検討対象とします。また、簿価から30%以上時価下落した銘柄及び、当社との年間取引高が1億円未満である銘柄についても、売却検討対象とします。その上で、得意先企業のうちこれらの基準のいずれかに抵触した銘柄については、毎年、取締役会で売却の是否に関する審議を行い、売却する銘柄を決定します。見直しの結果、2018年度に一部保有株式を売却いたしました。」

縮減を基本方針として、保有の合理性の検証方法まで具体的に記載しています。

政策保有株式については、大手企業では、これまでも保有検証を実施している企業も多いと思いますが、ここまで踏み込んだ開示はあまり見たことはありません。カゴメと同じレベルで他社も今後開示するか分かりません。

ただし、留意すべきは改訂CGコードを公表した際に東証パブコメに対する見解を公表しており、その中で、次のことが書かれています。

・「検証の結果、全ての銘柄の保有が適当と認められた」といった、一般的・抽象的
な開示ではなく、取締役会における検証に際し、コードの趣旨を踏まえ、例えば、次
のような具体的開示が行われることが期待される
-  保有の適否を検証する上で、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを含め、どのような点に着眼し、どのような基準を設定したか
-  設定した基準を踏まえ、どのような内容の議論を経て個別銘柄の保有の適否を検証したか
-  議論の結果、保有の適否について、どのような結論が得られたか

これを踏まえますと、カゴメの開示は決して詳細なものでもなく、東証の求める内容であるとも言えます。

とすると、次に企業が考えるべきことは、ここまで開示するとして、今、実施している保有の合理性の検証が果たして十分なものであるかの確認が必要になるような気がいたします。他社がどういう検証をしているのか詳細は分からないと思いますが、自社のこれまでの検証方法が、資本市場関係者に対して合理的な検証であると言えるのかの再確認が必要になるのではないでしょうか。

議決権行使助言会社ISSがオアシスのアルパインに対する大幅な増配要求に対して賛成を推奨

前回、議決権行使助言会社ISSについて書きましたが、先日の日本経済新聞でカーナビなどの自動車部品メーカーであるアルパインに対してアクティビストであるオアシスマネジメントが1株当たり325円の期末配当の株主提案をして(会社提案は1株当たり15円)、これに対してISSが賛成推奨したとの報道がありました。

アルパインには、親会社であるアルプス電気との経営統合を巡って、オアシスが色々と提案をしていることは新聞報道で周知の方も多いと思います。

今回の記事を見て、アルパインの2018年3月期の決算短信で財務状況を見てみました。大幅な増配を要求しているわけですから、アルパインのキャッシュがどの程度あるのかとの観点からの分析になります。以下は、2018年3月期のアルパイン決算短信の連結バランスシートから見た数値になります

現金及び預金 538億円
投資有価証券 285億円
有利子負債  0
利益剰余金  950億円
株主資本比率 65.8%

ネットキャッシュ(現金及び預金+投資有価証券-有利子負債)は823億円で、時価総額、総資産に占める比率は次のとおりとなります。なお、投資有価証券はコーポレートガバナンス・コードでは縮減が求められており、上場企業各社に対するアクティビストの株主提案でも投資有価証券は売却による現金化をすることを提案していることを考え現金及び預金と同じものとみなします。

ネットキャッシュ  / 時価総額 約 55%(ベース 時価総額1,500億円)
ネットキャッシュ  / 総資産  約 37%(ベース 総資産  2,190億円)
手元流動性比率       約 4ヶ月(ネットキャッシュ ÷ 月商)

これを見ると、キャッシュが潤沢であることはわかります。それだけ財務状況が良いという証であります。

オアシスは1株当たり325円の期末配当を要求しておりますが、これによると配当額は次のとおりとなります。

期末配当金額=325円 × 発行済株式数 68,952,260(自己株式除く)=約224億円

2918年3月期の純利益が93億円ですので、配当性向は約240%となります。会社提案は期末配当が1株当たり15円で、これに発行済株式数を乗じると総額約10億円ですので、約214億円増となります。

前述のとおり、ネットキャッシュも潤沢であることから、224億円の配当をしても十分なキャッシュがありアルパインの財務に与える影響は低いように思えます。1株当たり325円の増配にISSが同意したという記事だけを読むと少々驚きますが、あらためて財務諸表を読むと、財務に大きな影響はなくISSは論理的に当然の判断をしたと見ることもできるのではないでしょうか。

次にこれに賛同する株主の可能性ですが、アルパインの2018年3月末の株主構成は公表されていませんので、2017年3月期の有価証券報告書を見ると、次のとおりです。

その他法人41.85%、外国人株主 37.99%、金融機関13.43%、個人その他 5.76%

その他法人は親会社であるアルプス電気かと思います。

ISSが賛成を推奨するということは、多くの海外機関投資家ISSの推奨を参考にするので、外国人株主の多くは株主提案に賛同する可能性が高いです。総会の決議を通すための過半数の賛同を得るには、個人株主や国内機関投家の賛同がどこまで得られるかがポイントかと思います。

ところで、このISSの賛成推奨に対して、6月8日にアルパインが反論を東証に開示しています。

要約しますと、事業運営はグローバル展開であり、実際の現預金管理は多数拠点で複雑に管理されていること、投資有価証券は中長期的に円滑な取引関係を維持するために必要な戦略投資であり、これらのアルパイン固有の資金需要がISSの判断には考慮されておらず、追加配当を行った場合には事業運営に著しい制約を与えるという反論になります。

しかし、個人的な印象としては、表現が抽象的かつ定性的な域を出ず、反論としては非常に弱い印象を受けます。アルパインのバランスシートを見れば、財務・会計に相当疎い人でない限り、キャッシュリッチであることが容易に分かります。とすると、株主還元をせずにキャッシュを保有する理由の正当性を投資家に説明するわけですから、設備投資やM&Aなどの成長投資にいくら使うとかの具体的な数値をあげないと、説得性の乏しい反論であるような印象を持ちました。

経済合理性のある株主提案は益々増えております。本件がどのように進んでいくか、今後、少し関心をもって見ていきたいと思います。

ISSの議決権賛否推奨レポートに対する企業側の反論

議決権行使助言会社である米国ISSの議決権行使の賛否推奨レポートに対して、ツガミ(東証1部)とインフォコム東証JQS)が反論を公表しました。
ISS議決権行使助言会社の大手で、上場企業の株主総会議案に対して賛否を推奨する会社です。

ツガミ、インフォコムともに自社の株主総会社外取締役候補者に独立性がないとISSが判断していることに対して、東証の独立役員の基準は充たしており、ISSのいう独立性がないという判断は正しくないとして反論しています。

ISSの独立性の判断基準は東証より厳しいのは周知の事実ですが、そのような中、あえて反論を掲載する意義ですが、反論をすることで自社の会社提案議案に対する機関投資家の反対率が下がる可能性が高いということにあります。

ISSの反対推奨に対する反論の論拠としては、ISSの事実認定に誤りがあること、ISSの判断基準に合理性がないことが考えられます。後者は、合理性の判断は主観が入るので何が正しいかの判断は難しいところあるのですが、前者の事実誤認であれば、正しいか誤りかは明確になるのでISSの判断は覆るはずと考えられますが、実際には、ISSが企業の反論を受けて判断を覆したケースはないようです。

しかし、企業としては、適切な反論をしておけば、機関投資家はその反論を踏まえて判断をしますので、企業の反論に理由があると考えれば、会社提案に賛成する、つまり反対率が低下するということになるかと思います。

ISS株主総会シーズンに膨大な数の企業の総会議案を招集通知を見て判断するのですから、機械的に判断することが多く、細かいところまで目が行き届かないところも当然あるかと思います。

このため企業としては、反論するという事後的対応するよりも、まずはISSにしっかりと認識して頂きたい事項は、招集通知の各議案にハイライトするなど明確に記載をすることが肝要かと思います。

東証が改訂コーポレートガバナンス・コードを公表

6月1日に東証が改訂コーポレートガバナンス・コード(改訂CGコード)を正式に制定・公表しました。

本年6月1日からの適用で、上場企業各社は、準備出来次第速やかに対応し、遅くとも本年12月末まで対応することとされています。3月30日に金融庁が公表した案とほぼ同内容となっています。

また、パブコメに関する東証の考えも併せて公表されておりますが、改訂CGコードや投資家と企業の対話ガイドラインの解釈について東証の考えが示されている箇所もあり、参考になる東証の主な考えについて、以下紹介します。

<資本コスト> 

・把握する資本コストに加えて、資本コスト算出の背景にある考え方などについても、投資家と上場会社との間で建設的な対話が行われることを期待

<政策保有株式>

・個別の政策保有株式について、取締役会において保有の適否を検証するに際して、執行側において一定程度の準備作業を行うことも想定されるが、そうした場合であっても、実質的に取締役会自らが個別の銘柄について検証を行うことが必要

・必ずしも個別の銘柄ごとに保有の適否を含む検証結果を開示することを求めるものではないが、「検証の結果、全ての銘柄の保有が適当と認められた」といった一般的な開示ではなく、取締役会における検証に際し、コードの趣旨を踏まえた、次のような具体的開示が行われることを期待
① 保有の適否を検証する上で、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを含めどのような点に着眼し、どのような基準を設定したか
② 設定した基準を踏まえ、どのような議論を経て個別銘柄の保有の適否を検証したか
③ 議論の結果、保有の適否について、どのような結論が得られたか

・ 政策保有株式の縮減に関する方針・考え方については、政策保有に関する投資家と上場会社との対話をより建設的・実効的なものとするため、自社の個別事情に応じ、例えば 保有コストなどを踏まえ、どのような場合に政策保有を行うか、 検証結果を踏まえ、保有基準に該当しないものにどのように対応するか等を示すこと

以上になりますが、これらは一例であり、他にもパブコメに対する東証の考えが示されていますが、今後の実務指針になる記述もいくつかあります。

政策保有株式以外にも、指名委員会等設置会社でない監査役設置会社では、社外取締役を主要な構成員とする任意での指名・報酬委員会の設置が求められています。今回の改訂CGコードへの対応は、コーポレートガバナンスにこれまで割ける人的リソースの小さい企業には、負担は重くなると思います。

ただし、金融庁東証も何度も繰り返し言っていますが、CGコードは必ずしも全ての事項についてコンプライが求められるものではなく、エクスプレインすることでもよいとされています。

エクスプレインというのは、コンプライ(=遵守)が出来ない場合には、自社の実態や考えを踏まえ、遵守できない理由を説明することです。

例えば、取締役会の構成で、改訂CGコードでは、ジェンダーや国際性が求められることになりますが、女性の取締役を入れる必要がない、また、ビジネスが国内が主なので国際性は不要という場合には、不要である旨のエクスプレインをすれば良いのです。
イギリスでは、CGコードについて、エクスプレインしている企業も多くあると聞いていますが、日本企業は真面目なので、コンプライすることが多いですが、この点は、企業は何ら躊躇することなく、コンプライできない事項は、エクスプレインをすればよいと思います。

一方、エクスプレインの理由が難しい箇所もあると思います。

CEOの解任手続きなどはその1つと思います。改訂CGコードでは、業績等を鑑みたCEOの解任手続きの設定が求められていますが、オーナー企業などはコンプライは難しいのではないでしょうか。

オーナー企業では、子息や親戚が後継者になるのはあたり前ですが、業績評価等を踏まえた解任基準を設けることについては「何これ?」といった感覚と思います。後継者計画の策定も同じと思います。
しかし、オーナー企業だからオーナーの子息が当然に社長になるというのは、資本市場から見た場合には説明はつかないと思います。

オーナー企業であっても上場している以上は「公器」であるという認識をあらためて持ち、機関投資家が納得する対応をする必要があります。機関投資家は、CEOがオーナーの子息であろうが、サラリーマン上がりあろうが、企業価値を高めるCEOに関心があるのです。オーナー経営者は、きちんとした後継者計画を策定し、自分の子息がその計画の基準を充足する資質を持てるよう育成することが必要になってきます。

12月末まで上場企業は対応でバタバタすることになるかと思います。

そもそも、前にもブログで書きましたが、市場での資金調達の必要性がない上場企業は、上場の本来の意義がないので、改訂CGコードなどの面倒なことで手を煩わせることになるのであれば、これを契機におもいきって上場を廃止するということも真剣に考えてよいのかもしれません。廃止することによって、資本市場関係者の対応などを気にすることなく自由に経営できる上、経理の決算担当部門やIR部門など収益を生まない部門の人員を大幅にリストラすることで利益アップも期待できます。

日本企業の海外M&Aに関する意識・実態調査結果

先日の日本経済新聞に掲載されていましたが、日本企業の海外M&Aに関する意識・実態調査結果についてデロイトトーマツが公表しました。

「日本企業の海外M&Aは上達しているのか?」というタイトルで、日本企業の海外M&Aに関する意識に関する実態調査です。13ページほどのレポートになりますが、海外M&Aの成功率は約37%程度とのことです。

このレポートの中で、以前に経済産業省が公表した「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」の紹介があり、ディール(デューデリジェンス~クロージング)の前後を含めた、M&Aによる成長サイクル全体を通して経営トップが特に意識すべき視点が記載されており、「9つの行動」があげられています。

1. 「目指すべき姿」と実現ストーリーの明確化
2. 「成長戦略・ストーリー」の共有・浸透
3. 入念な準備に「時間をかける」
4. 買収ありきでない成長のための判断軸
5. 統合に向け買収成立から直ちに行動に着手
6. 買収先の「見える化」の徹底(「任せて任さず」)
7. 自社の強み・哲学を伝える努力
8. 海外M&Aによる自己変革とグローバル経営力強化
9. 過去の経験の蓄積により「海外M&A巧者」へ

いずれも内容自体は当たり前のものかと思います。当たり前のことですが、実施するにはなかなか難しいことと思います。要は買収した企業の一番の資産は人ですが、海外という日本と異なる文化・価値観を持つ人を、それも買収されたということで買収者である日本企業に少なからず敵対心を有する人をマネージするのは難しいことと思います。日本電産の永守会長が、以前にPMIには海外では地域にもよるが数年かかるといっていました。

日本企業による海外M&Aの成功件数が少ないとは従前より言われていることですが、成功率が37%ということは、「失敗した」との明確な回答はしたくないというインセンティブを持つ上での企業各社の回答ですから、成功例は本当は30%を下回ると推定されます。

経産省がCGS研究会(第2期)の中間整理について公表

5月18日に経済産業省が、CGS研究会(第2期)の中間整理について公表しました。

経産省は、昨年3月、コーポレートガバナンスの取組みの深化を促す観点から、企業において検討することが有益と考えられる事項を盛り込んだ「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)を策定しました。その後、CGSガイドラインのフォローアップとして、CGS研究会(第2期)を立ち上げ、コーポレートガバナンス改革の現状評価と実効性向上に向けた課題について検討を行ってきましたが、今回、中間整理を公表しています。

本年の夏頃を目途にCGSガイドラインの改定版を公表するということですが、改訂の方向性を示す中間整理の大きな内容は、次のとおりです。

1 社外取締役の活用
- 社外取締役としての役割を果たす上での最低限のアベイラビリティーやコミットメントが求められること、社外取締役を総体して捉えて、取締役会全体として必要な資質・能力を備えることの整理
- 社外取締役による監督の実効性確保の観点から、指名委員会において社外取締役の「選任・再任」の基準の設定が望ましい

2 指名委員会・報酬委員会の活用
- 委員会の構成や運営方法などについて、議論の対象や企業の置かれた状況による差異に応じ、場合に分けてベストプラクティスを整理すること

3 後継者計画のあり方
-「指名・再任プロセス」の客観性・透明性の確保や後継者計画の実効性確保において企業が参照できるベストプラクティスを示す

4 経営陣幹部の報酬・業績評価等
- 役員報酬の方針やベストプラクティスについて整理。報酬方針・設計の在り方のベストプラクティス(例:グローバル事業の展開企業におけるグローバル経営人材確保をする場合の役員報酬設計を行う際の留意点)の整理

5 取締役会の議長
- どのような企業が社外取締役が議長を務めるのが望ましいかを整理

大きくポイントと思われる事項は、上記のとおりかと思います。

上記5などは、現在は上場企業の約80%超は取締役会議長=CEOとなっていますが、指名委員会等設置会社など取締役会を戦略的議論の場とする企業は、社外取締役を議長にするというのが今後の流れになるような様相です。

もうすぐ確定する改訂コーポレートガバナンス・コードは金融庁の管轄で、こちらの改訂CGSガイドライン経産省の管轄ですが、経産省の担当者もフォローアップ会議にオブザーバーとして参加しており、コーポレートガバナンス・コードと同じ方向での改訂となります。

本夏に改訂CGSガイドラインが公表されましたら、またブログでポイントを整理したいと思います。

アクティビスト(物言う株主)の行動によって一般株主が潤う

5月21日にアクティビスト(物言う株主)であるストラテジックキャピタルが、新日本空調株式会社(証券コード1952)に対する本年4月24日付けの株主提案を取り下げる旨の公表がありました。

新日本空調が5月14日に公表した剰余金の増配決定の公表を受けての取り下げとのことです。本件を少し整理してみたいと思います。

<4月24日付の株主提案のサマリー>
・ 改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえて新日本空調の定款に、今後3年以内に政策保有株式を売却することを規定することを求める。そして、政策保有株式の売却資金は、株主価値向上に使うこと
・ 2017年12月31日現在における新日本空調の現預金は約73億円、投資有価証券は約211億円あり、一方、有利子負債は約98億円。3年後は上記1の投資有価証券を売却して現金に換えた場合、税引後で約188億円の手取金となる
・ 新日本空調は2018年3月期の1株当たり年間配当は40円を公表しており、2018年2月には1年間で取得総額10億円となる自己株式取得を公表。年間配当金の支払額と自己
株式取得総額の合計は20億円となり、2018年3月期の予想当期純利益の約66%に相当
・ 3年後には政策保有株式の売却に伴う手取金が約188億円になるので、現預金は
非常に潤沢になる
・ そこで、2019年3月期からの今後の3期については、総還元性向を100%以上になるようにして欲しい

 これを受けて、新日本空調は、5月14日に増配の決定・公表をしております。

5月9日公表の2018年3月期の期末配当予想は30円としておりましたが、14日公表では、5円増配し、1株当たり35円になっています。2018年3月期の年間配当は、45円(第2四半期10円、期末35円(普通配当30円、特別配当5円))となり、これを受けて、ストラテジックは株主提案を取り下げたことになります。

アクティビスト投資ファンドが増配を要求したことを受けて、会社が一定の増配を行うということは良くあることです。

ストラテジックは、株主提案が株主総会で通ることは当初から考えていないと想定します。本当の狙いは、株主提案をして、会社側に増配という一定の譲歩をさせることにより一定程度の利益を得るのが狙いです。

2017年10月23日にストラテジックが公表した大量保有報告書によれば、新日本空調の発行済株式数は、25,282,225株でストラテジックの保有比率は4.82%となっています。この保有割合から保有株数を算出すると保有株数は12,186,032株となります。今回の株主提案で5円増配を勝ち取ったわけですから、ストラテジックは、約6,000万円の配当アップを獲得したということになります。

本件で重要なのは、ストラテジックが株主提案を行ったことにより、個人株主など他の株主も増配の利益を享受できたという点です。例えば、5,000株を持つ個人株主がいるとすると、会社の当初予定である1株当たり40円ですと20万円の配当となるところ、ストラテジックのお陰で5円増配により25,000円増えることになるのです。

つまり、一般株主、特に個人株主にとっては、ストラテジックは自分たちを潤してくれる非常に頼もしい味方ということになります。

株主資本配当率(DOE)の開示

先日の日本経済新聞の記事に株主資本配当率(DOE)の記事が出ていました。DOEとは、Dividend on equityの略で、次のとおり算出されます。

DOE=配当金額 ÷ 当期末の株主資本

配当に関する指標には、配当性向があります。良く耳にする言葉かと思います。

配当性向は、配当金額 ÷ 当期純利益(%)です。つまり、会社が1年間で儲けたお金(当期純利益)からどれだけ配当金として株主に還元されるかを示す指標です。配当方針として、「配当性向20%以上」「配当性向30%以上」といったことを公表する企業も多いと思います。

新聞報道によれば、配当性向を目安にする企業は、純利益が減ると連動して減配となる可能性があると書いてあります。

これはどういうことかといいますと、仮にある企業が配当性向30%を公表しています。この企業の今期の純利益が100とした場合、配当金額は30(=100×30%)となります。しかし、来期は、当期純利益が50と減益になった場合、配当金額は15(=50×30%)となり減ることになります。配当金額を発行済株式数で割ることで1株当たり配当金額となりますが、配当総額が減ることで減配となります。

一方、DOEは、利益を積み上げた株主資本に対してどの程度を配当に回すかを示す指標で、株主資本は変動は少ないため、より安定的に株主に還元する姿勢を市場に示すことができるとされています。

新聞報道では、資生堂ファンケル、JAJがDOEを基準にしているとのことでしたので、インターネットで「資生堂 DOE」といったキーワード検索をしたところ、次のような内容が開示されていました。

資生堂:DOE 2.5%以上を目安とした長期安定・継続増配

ファンケル:連結配当性向40%程度及びDOE5%程度を目途に配当金額を決定

JAL:配当性向 親会社株主に帰属する当期純利益から法人税等調整額の影響を除いた額の30%程度を目安とし、DOEは 維持すべき株主資本利益率ROE)の水準10%と上述の配当性向を勘案し、3%以上となるように努める

こういった開示を市場は評価し、資生堂ファンケルともに株価が上がったとのことのようです。

ところで、話は変わりますが、配当性向を20%又は30%といった数値基準を掲げる企業もありますが、それで本当に十分なのでしょうか。

配当の原資は、基本的にバランスシートの株主資本の部にある繰越利益剰余金になります。正確には、繰越利益剰余金が100あっても現金が50しかないと現実には50しか配当出来ませんので(借入をして配当原資を増やすということも一応ありますが)、繰越利益剰余金の金額を上限として、その上で更にバランスシート上の現預金を上限とする範囲で配当が出来るということかと思います。

個人株主は、素人ですから、自分の投資先企業が配当性向30%で安定配当をしているということで満足している方も多いと思いますが、バランスシートを見て、配当の余力はもっとあるのではないかと疑って見る必要があります。

企業が使わないキャッシュを溜め込んでいるのであれば、つまりM&Aや設備投資でキャッシュを使う具体的な予定がないのであれば、株主はそれは還元せよといえる権利があります。

最近、2018年3月期決算企業の決算の発表が続き、個人的な株式投資の目的で、週末に自宅で四季報オンラインで、低PBR、ネットキャッシュ大、外国人株主比率が10%超などの一定の基準で中小型銘柄のスクリーニングをしているのですが、明確な配当方針やキャッシュの使途の公表もないままキャッシュをかなり溜め込んでいる企業がこの規模の企業では散見されます。要するに、上場していながらも、コーポレートガバナンスの意識が低い企業ということです。

こういった中小型銘柄の企業は、個人株主もしっかりと理論武装をすれば、株主としての権利を行使できるネタが沢山あると最近つくづく感じています。

サム・オブ・ザパーツ(Sum of the parts)による理論株価のバリュエーション

本日は、企業の理論株価分析として、サム・オブ・ザ・パーツについて説明します。

複数の事業セグメントを持つ企業の理論株価を分析するバリューエーション方法になります。具体例をあげて説明します。

甲会社という上場企業があり(株価800円、発行済株式数 7,000万株)、甲会社は電子部品事業と診断薬事業の2つの事業セグメントがあり、各事業のEBITDAは次のとおりとします。

電子部品事業 EBITDA 100億円(=営業利益60億円+減価償却費40億円)
診断薬事業  EBITDA 40 億円 (=営業利益30億円 +減価償却費10億円)

複数の事業セグメントを持つ企業は、有価証券報告書において、事業別の売上高、営業利益、減価償却費が開示されていることが多いと思います。

ここで、電子部品事業と診断薬事業のそれぞれのくくりでマルチプル法でそれぞれの事業価値を算出します。電子部品事業の業界には、競合他社が5社存在、一方、診断薬事業には、競合他社が7社存在するとします。

EV / EBITDA倍率が、電子部品事業の5社平均では7倍、診断薬事業は10倍とします。EV=株式時価総額+ネットデットで、EV / EBITDA倍率 = EV ÷ EBITDAの算式より算出します。次のとおりになります。
電子部品事業  EV= 100億円 ×   7倍=700億円
診断薬事業   EV=   40億円 × 10倍=400億円

よって、甲会社のEVは合計して1,100億円となります。

そして、ここから理論株式価値を算出します。EV=株式時価総額(株式価値)+ネットデットより、株式価値=EV-ネットデットになります。

ここで、甲会社のネットデット(=有利子負債-現預金)が仮に400億円とすると、株式価値=1,100億円-400億円=700億円になります。

そして、発行済株式数7,000万株であるため、1株当たりの株式価値=1,000円(700億円÷7,000万株)となります。とすると、甲会社の市場株価は、現在800円で、理論株価より200円低いことになります。これがサム・オブ・ザ・パーツによる理論株価算出の考え方になります。

この方法によると、複数の事業セグメントを持つ企業の理論株価が比較的簡単に算出できることになります。ただし、よく言われることですが、次のような課題(欠点)もあると思います。

1.競合会社の株価が全体的に低くても、将来業績への市場の期待から株価が非常に高い企業が1社含まれるような場合、倍率(マルチプル)が異常値になる
2.同じ業界の上場企業が少ないと評価が難しい

上記のような欠点があると甲会社の理論株価の説得度が低くなりますので、サム・オブ
・ザ・パーツによって理論株価を算出するには、異常値の競合他社の数値は除くなどの作業が必要になります。

そうしないと、理論株価と市場株価の乖離を投資先企業に指摘しても、反論を受けることになります。

買収防衛策の廃止の動きの増加

本年の定時株主総会終結の時をもって買収防衛策の更新期限を迎える企業が買収防衛策を廃止する動きが強まっています。

本年に入ってから、比較的名前の知っている上場企業ですと、クラレ、ダイワボウ、日本ハム、ワコール、京浜急行電鉄阪和興業帝人、ワコール、日本曹達理研機器などが廃止を発表しています。

背景としては、各社プレスリリースに色々と書いてはいますが、要するに本音は、議決権行使助言会社が買収防衛策に対する反対を一層強めたこと、また、国内機関投資家も昨年以上に反対を強めているため株主総会で買収防衛策議案の賛成率を獲得することが困難となっていることにあります。

ちなみに、上に記載した各社の直近(2017年3月期)の有価証券報告書に記載の外国人株主比率を見ると、クラレ 37.73%、ダイワボウ 28.05%、日本ハム 32.16%、ワコール 19.35%、京浜急行電鉄 15.10%、帝人 36.09%などとなっています。有価証券報告書では、国内機関投資家保有比率は明示されていませんが、いずれの企業も外国人株主比率が高い状況にあることが分かります。

買収防衛策廃止に当たって、廃止企業は次の点を考えることが必要になります。
1 廃止する理由について株主への説明
株主総会で株主の承認を得て、これまで継続更新をしているので、今回、継続更新しない、つまり廃止するということは、買収防衛策を廃止しても、買収防衛策導入の目的を達成できるということを説明することが必要になります。

2 安定株主比率の低下の中、アクティビストの出現リスクに対する対抗策の準備
買収防衛策が廃止されるということは、アクティビストにとってのハードルは低くなるといわれています。大量の株式取得をする場合、買収防衛策がある場合、買収防衛策の発動を嫌ってアクティビストは株式の大量買付けに進むことを躊躇するケースがありますが、廃止することでアクティビストにとってのハードルが低くなります。

廃止企業としては、アクティストを跳ね返せる理論武装と長期保有機関投資家を自社の味方とする準備が必要になります。

日本の上場企業全体(コーポレート・ジャパン)に占める外国人株主比率は約30%ですが、今後、政策保有株式の解消により、その解消分の株式を国内機関投資家及び外国人株主が引き受けることになりますが(個人株主は資金が乏しいので、保有できる株式数には所詮限界があります)、今後のアクティビストの出現に備えた十分な対応が必要になるのではないでしょうか。

勿論、上場企業約3700社のうち、買収防衛策をそもそも導入していない企業が約80%超になるわけですから、その他多くの上場企業と同じ立場になったことから、あまり気にする必要はないと考えることも一応いえます。しかし、これは「赤信号、皆で渡れば怖くない」の発想と同じで、「赤信号を渡る」(=買収防衛策を廃止する)ことで「自動車にぶつかる」(=アクティビストに狙わわれる)リスクは全員にあるということですす。

改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた個人株主のアクティビズムの可能性(4)

 改訂コーポレートガバナンス・コード(改訂CGコード)について、残りの資本コストと事業ポートフォリオについて纏めてみます。

今回の改訂CGコードについては、4月29日までを金融庁パブリックコメントの締め切りとし、その後、経団連、経営法友会、消費者庁などが意見を公表しています。現時点では、改訂CGコードはまだ確定はしていませんが、今回の改訂における大きな点は政策保有株式が1つありますが、資本コストと事業ポートフォリオの改訂も大きな点になるかと思います。

<改訂CGコード>
(1)資本コストの的確な意識の上での経営戦略の策定
(2) 事業ポートフォリオの見直し、設備投資、R&D投資等を含む経営資源の配分

まず資本コストですが、だいぶ前にもブログで書きましたが、資本コストとは会社に資金を拠出する債権者と株主に対して企業が負担するコストをいいます。つまりこれは債権者と株主から見れば、投資による期待収益率(リターン)のことをいいます。

負債コストと株主資本コストを加重平均して資本コストを出します。そして、(1)と(2)は別々ではなく、セットで捉える必要があります。

つまり、(2)の意味は、(1)の資本コストである投資家の期待収益率を上回る収益を生まない事業は企業は見直しをせよ、簡単にいうとカーブアウト(事業売却)せよということです。

収益性の有無の判断基準は色々ありますが、複数事業を営む企業であれば、ROICが指標になるかと思います。ROICとは、投下資本利益率になります。例えば、ある企業がA事業、B事業の2つの事業セグメントを持つとすると、A事業のROICは次のとおり計算します。

ROIC=A事業の営業利益÷(A事業の現金+A事業の運転資本+A事業の有形固定資産)×100%

これがこの企業の資本コストを下回るのであれば、カーブアウト等を検討せよということですが、これを個人株主アクティビズムに結び付けて考えたいと思います。

まず資本コストを把握する必要があります。資本コストは、ファイナンスの専門家であっても数値(より正確には株主資本コストのβ値)にばらつきがあり、個人の方が正確に計算するのは、少し難しいですが、ブルームバーグを利用すれば株主資本のβ値は出てくるので、それを使えばよいかと思います。

次に考えるのは、前述のとおりA事業のROICを算出することです。これが重要です。では、どうやって数値を拾えばよいでしょうか。

結論からいうと株主が得られる情報は企業の開示情報しかないので、正確な算出は難しいです。なぜならば、企業は、事業別の現金、運転資本、有形固定資産までは開示していないのが通常だからです。そこでざっくりとしたレベルで計算せざるを得ません。

分子であるA事業の営業利益は開示されています。問題は分母の数値ですが、A事業とB事業の構造が大きく異ならないのであれば、バランスシートに掲載されているこの企業の全体の現金、運転資本、有形固定資産の数値を、A事業の売上構成比で按分することになります。

つまり、A事業とB事業の売上高構成比がA事業40%、B事業60%となっているとすれば、バランスシート上の現金、運転資本、有形固定資産の各々の40%をA事業のROICの分母とするのです。ただし、A事業とB事業の事業内容が大きく異なるのであれば、例えば、A事業が半導体製造、B事業が小売といった場合には、按分比率は極めて不正確なもになります。

これにより算出したROICが資本コストを下回るようであれば、事業のカーブアウトを提案するという流れになります。ごくシンプルに考えるとこのような内容になります。

もっともこれは極めてざっくりとした分析ですので、最初から「A事業のROICは資本コ
ストを下回るので事業売却をしろ」との株主提案をするのは正確性が欠けるので、他の
の株主の賛同を得るのはまず難しいでしょうから、まずは株主総会に出席して、事前に自分で算出した数値を手許に持って、これに関するを投げかけることになるのでしょう。

株主総会においては、取締役・監査役は総会議題と関係のない質問の回答は法的に拒絶できますので、株主としては、上手く事業報告と絡めて質問をすることになるとは思います。

その上で、再度、数値の正確度を高めて、株主提案をしていくというステップになるのだろうと思います。このような事業のカーブアウトの提案は、M&Aアクティビスムということになります。

M&Aアクティビスムは、株価に与える影響が大きいと思います。というのも営業利利益率の低迷事業を切離せば、営業利益が改善され、企業の業績見通しの変化も大きいので、株価向上への効果大です。しかし、実際には M&Aアクティビスムの難易度は高く、精度を高めるには、場合によっては戦略コンサルなどの外部業者を使うほか、A事業の外部環境分析などのマクロ分析も緻密に行うことが必要になると思います。

M&Aアクティビズムの根本的な考え方はシンプルと私は思いますが、個人株主が事業のカーブアウトを提案して、他の株主の賛同を得るのは、なかなか難しいところがあるかとは思います。

初心者の経済学(ミクロ経済・マクロ経済)の効果的な勉強法

ゴールデンウィーク休暇期間中は、改訂CGコードと株主アクティビズムに関連する資本コストと事業ポートフォリオについて書くことができませんでしたが、これは今週中に出来れば書く予定ですが、本日は、休暇中に気付いた経済学の勉強方法について記載したいと思います。

私は法学部出身で学生時代にミクロ経済学マクロ経済学をきちんと勉強をしたことはありませんでしたが、ミクロ経済学マクロ経済学は体系的に一度きちんと勉強したいと前から思っていました。もちろん日経新聞やビジネス週刊誌などを読んでいれば、マクロ経済学に関連するGDP、GNPや金利などの基本的知識は、常識のレベルでは理解できるのですが、体系的に理解していないとどうしても弱いなと前々から思っていました。

以前から経済学の書籍は、1、2冊読んだりしていたのですが(途中挫折も多いのですが)、経済学の初心者の方にお勧めの書籍を本日は紹介したいと思います。書籍の名前は、次の2つになります。

「試験攻略入門塾 速習 ミクロ経済学中央経済社)」

「試験攻略入門塾 速習 マクロ経済学中央経済社)」

著者は石川 秀樹氏という方で、同氏は、上智大学法学部、ロンドン大学を卒業後、新日鐵住金勤務を経て、独立し、現在は石川経済分析代表をされている方になります。昭和38年生まれの方なので、54歳になります。

書籍自体は、知っている方も多いかも知れませんが、公務員試験、証券アナリスト中小企業診断士不動産鑑定士といった各種資格試験取得向けの基礎的内容ですが、この書籍の何がお勧めかといいますと、経済学の基礎的なことが分かりやすく纏まっているほかに、この書籍にそった講義内容が、You tubeで石川氏が講義をしていることです。勿論You tubeなので無料です。

つまり、予備校の講義と同じようにこの書籍の内容にそってYou tubeの動画で学習できます。この書籍は1年ほどに私は買い、時々読んでいたのですが、You tubeでの動画はこれまで見ておりませんでしたが、この長期休暇中にYou tubeを初めて見て、感動しました。

資格試験向けの内容ですが、経済学の初心者の方には非常にお勧めです。

経済学のうち、ミクロ経済学は、あまりに現実離れをした内容で正直実務では使うことはないと思いますが、マクロ経済学は、学問として体系立てて勉強しておくことで、新聞記事や株式投資関係の記事・書籍への造詣も深まると思います。古典派やケインズ派の考え方などを直接実務で使うことはないとは思いますが、学問として体系的に理解しておくことはとても有用かと思です。ミクロ経済学も理解しておくと何かの役に立つかも知れません。

ということで、経済学の初心者の方で、お金をかけずにこれから体系的にミクロ経済学マクロ経済学の初歩から勉強したいと思う方は、この書籍を買って、You tubeで勉強すると良いと思います。勿論、エコノミストなどの経済分析を専門にしていく方には、これでは全く足りませんが、企業で普通に働く方には十分な内容と思います。

そもそもGDPやGNPといった言葉自体は知っている人は多いのですが、この中身の詳細や両者の違いを知っている人は、実は少ないのではないでしょうか。これらの用語などはマクロ経済学の最初に出てくる初歩的な単語ではありますが、このような単語について初歩的なことも理解できていない方が世の中の大部分と思います。そういう観点からは、この書籍と講義動画で勉強すれば、初歩的理解というよりも、一歩進んで中級クラスまでの理解が出来ると言える気がします。

本日は、経済学の初心者にお勧めの本について休暇中に気付いた勉強法として書いてみました。

改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた個人株主のアクティビズムの可能性(3)-2

改訂CGコードと事業ポートフォリオ、資本コストの話題について、ブログで触れる前に先日の5月1日にソレキア株式会社(9867)に対して、個人株主が株主提案をした旨をソレキア東証に開示していました。

株主提案を行った方がこれまでのように投資ファンドではなく、個人株主であり、その提案内容がまさに私がブログで書いているところでもありましたので、本日は、これについて紹介したいと思います。

いくつか株主提案がありますが、その中で3つほど紹介します。

1.総還元性向100%とする剰余金配当の株主提案
2.ROE8%以上を目標にして、その実現に向けて取締役は最善の努力を払う旨の定款
変更の株主提案

3.政策保有している上場株式を第61期中に全て売却する旨の定款変更の株主提案

以上になります。ソレキアは、東証JASDAQスタンダード上場の時価総額約40億円程度の電子部品商社です。

2018年5月1日付けのソレキア東証開示文によりますと、株主提案を行使したのは、1名の個人株主ですが、この方は、ソレキアの2017年3月の有価証券報告書の大株主状況を見る限り上位10名には名前がありません。

2018年3月末現在での株式所有比率は分かりませんので不明ですが、ソレキアは1単位300株ですので、株主提案には最低300単位必要なので、少なくとも30,000株は保有する株主と言えます。

各提案の詳細について、ソレキアの5月1日開示の東証開示文から一部を抜粋すると次のとおりです。

まず、株主提案の上記1については、「貴社の平成30月期第3四半期決算短信によれば、平成29年12月31日現在の連結貸借対照表上、貴社が保有する現預金は約36億円、投資有価証券は3億円以上あります。また、貴社が現在行っている事業は、生産装置を更新する等の設備投資や研究開発に大きな資金を必要とするものではなく、現在の保有現預金等で十分な必要運転資金が確保されているはずです。」と記載されています。

次に株主提案の上記3については、「今年3月末に公表されたコーポレートガバナンス・コード改定案「原則1-4」では、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容を開示すべきであるとされています。このコード改定案「原則1-4」の精査・検証が、一般の株主に対して、誠実に行われるならば、現在の政策保有を正当化できる株式は貴社には一つもないという結論になるはずです。(貴社が政策保有している株式は、その発行会社の規模と比べて非常に少ない株数なので、保有に伴う便益などあるはずがないというのが主な根拠です。)しかし、長年、業績及び株価を低迷させているにもかかわらず、居座り続ける取締役にとっては、政策保有株式は保身のための株式の持ち合いという側面が強く、自らの地位を危うくする持ち合い解消を決断することは難しいと思いますので、定款に本条文を加え、政策保有株式の売却を確実にするべきと考えます。また、ROE 向上を目指す観点からも収益につながらない遊休資産を現金化し、収益性の高いプロジェクトへの投資を検討するべきであり、仮にそのような経営計画・投資案件が全くないのであれば、自社株買い等で株主に還元するべきです。」と記載されています。

いずれの内容も最近の投資ファンドが、企業に対して株主アクティビズムで主張する内容と同じ視線の提案になります。

ただ、上記1及び3の株主提案ともに提案の理由が、だいぶ定型的な内容であり、他の株主の賛同を得るには、このソレキアという企業の財務を含む企業分析をして、より踏み込んだ提案理由にしないと、賛同を得ること困難だろうと思います。この提案内容では、機関投資家も賛同票を投じるまでの判断には至らないのではないでしょうか。

提案内容は不十分であるとしても、私がこれまでブログで書いてきたように個人株主が最近のコーポレート・ガバナンス改革の流れに沿った株主提案を行った一例と言えます。ファイナンスコーポレートガバナンスの不備・課題を指摘するプロである投資ファンドの提案に比べるとまだまだ素人的な提案内容ではありますが、一応の理論武装をした提案ということになります。

気になったニュースでしたので、前回のブログの続きとして掲載しました。次回は、資本コストと事業ポートフォリオについて記載したいと思います

改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた個人株主のアクティビズムの可能性(3)-1

前回、改訂CGコードの観点から個人株主によるアクティビズムについて、取締役会の多様性の側面から記載しましたが、4月25日に株式会社フェイス(4295)に対してアールエムビー・ジャパン・オポチュニティー・ファンドから株主提案があり、それについてフェイスが開示を行っています。

フェイスは、5月1日時点で時価総額約155億円程度の中小型銘柄の企業です。

開示を見ますと、各事業分野に関連する多種多様な専門的知見や経験を有する取締役を経営陣に参加させ、その資質に裏付けられた視点を事業活動に反映させるということで、取締役1名の選任を提案しております。

なお、5月1日時点でのフェイスの株価情報によれば、PBRが1倍を下回っております。株価が割安に評価されている、最近のコーポレートガバナンス改革でいう問題のある企業といえます。

今回の株主提案は、推測ですが、株価が割安のため適切な能力を有する取締役を経営陣に加えることで、企業価値向上を図るということが主張の背景にあると思います。株主提案での選任候補者は、野村證券出身で、RMBキャピタルのパートナーの方となっています。

ちなみに、フェイスの2017年3月期の有価証券報告書で取締役構成を見ますと、社外監査役に弁護士・公認会計士の方が各1名おりますが、監査役は監査を業務とするので、企業経営に口を挟む役割はなく、そもそもそのような能力・経験もないので、企業価値向上を図る上では適任者とは言えません。

これを先日のブログに絡めて考えますと、今回の改訂CGコードでは、取締役の多様性として、ジェンダーと国際性を持つ人材の登用を求めており、今回の提案の方の経歴は、米国の投資会社ということで国際性のあるファイナンスのプロフェッショナルと言えます。株主提案による取締役の選任では、黒田電気に対して、村上ファンドが元経産省の方を取締役に選任する株主提案を行い、それが株主総会で可決されたことは記憶に新しいかと思います。

ごく一般の個人株主が、個人的なコネクションで、今回のフェイスのようなファイナンスのプロを提案することは困難かと思いますが、今回のケースのように株主アクティビスの手段としては有りうるということです。フェイスの2017年3月期の有価証券報告書を見ますと、外国人株主は18%となっていますので、株主提案がどの程度まで賛成率を集めるのか興味深いところです。

次回は、改訂CGコードの原則5-2で指摘されている資本コスト、事業ポートフォリオ
の見直しについて、このGW休暇中に出来れば書いてみたいと思います。この原則5-2がM&Aアクティビズムにおいて、今後、プロの投資ファンドが力を入れる可能性があり、個人株主も丁寧に投資先企業を分析すれば、株主提案をし得る余地もあるかと思います。

改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた個人株主のアクティビズムの可能性(3)

先日、政策保有株式について個人株主がアクティビズムを行う目線を書きましたが、今回は、政策保有株式以外の改訂CGコードの各事項について、株主アクティビズムにからめる余地があるのか検討をしたいと思います。

先日紹介した改訂CGコードの各事項のうち、政策保有株式関連以外での改訂事項は、次のとおりとなります(番号は前回の4月24日付のブログで記載した番号です)。

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5 後継者計画に対する取締役会の関与・監督
6 経営陣の報酬について客観性・透明性ある手続による具体的報酬額の決定
7 CEOの選任・解任手続の整備
8 任意の指名・報酬委員会等の設置活用
9 十分な人数の社外取締役の選任
10 ジェンダーや国際性の面を含む取締役会の構成
11 資本コストの的確な意識の上での経営戦略の策定
12   事業ポートフォリオの見直し、設備投資、R&D投資等を含む経営資源の配分

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このうち、株主アクティビズムの関係では、9と10について考えられます。

何故ならば、これが十分でない場合には、自己の提案する取締役を取締役選任議案として提案することができます。取締役として送り込むということは、経営に対する直接的な影響力を持つことになり、剰余金の配当はじめ株主総会議案を左右する力を持つことが出来き、つまり、株価向上につながる施策をとることができます。

具体的な提案の一例は次のような内容になると思います。

・「当社の規模で社外取締役の員数が少ないし、専門分野も偏っている。ファイナンスに精通したXX氏の選任を提案する」
・「BtoCの商売をしているのに女性の取締役がいない。女性のXX氏の選任を提案する」など

しかし、個人株主には大きな課題というか限界があります。

個人株主は、著名な企業経営者、外資系の戦略コンサルファームのコンサルタントなどとの個人的ネットワーク(自分の勤務する会社での業務上のネットワークとは別です)は通常有しておらず、とすると結局として、社外取締役としてどういった人材を提案できる可能性があるかを考えると、何かの機会で知り合った、中小企業や個人事業主をメイン顧客とする弁護士や公認会計士あたりになります。

しかし、上場企業に対してこのようなレベルの弁護士・公認会計士・税理士を提案したところで、他の株主の賛同を得られる可能性は極めて低いと思われます。もっとも上場企業といっても中小型銘柄の企業であれば、このレベルの弁護士・公認会計士でも社会的には専門家と見られているので、これで足るというところもあるかも知れませんが。

いずれにせよ、株主の賛同を得られる、世間でもある程度認められる一定の知名度のある人材に極めて強いコネクションがあると言える場合にはじめて、上記9及び10の項目は活きてくる材料と言えます。

次に順番が逆になってしまいましたが、上の5から7の改訂事項についてですが、改訂CGコード対応が出来ていないことを指摘することは勿論可能ですが、それが株主還元や株価向上に結びつくとも思えませんので、株主アクティビズムの材料にはならない気がします。

ただし、ガバナンスが企業の中長期的な業績の向上の前提にあるという最近の風潮からは、これらを材料につつくことで色々な提案に絡めていくことも一応可能えあり、その観点からは一応意味はあるとも言えます。

次に、11と12の事項ですが、政策保有株式に次いで株主アクティビズムの材料になり得るのは、この2つと考えます。

これはいわゆるM&Aアクティビズムに関連する事項です。

M&Aアクティビズムとは、株式保有先企業に事業買収や不採算事業のカーブアウトを提案することで、株価向上を目指すものです。配当増などバランスシートの右側の提案・要求をするアクティビズムが、バランスシート・アクティビズムと言われますが、M&Aの提案を行うM&Aアクティビズムは、バランスシートの左側である事業面に関するアクティビズムになります。

サードポイントによるソニーのエンタメ事業の分離提案などはM&Aアクティビズムといえると思います。

この11及び12の箇所の説明を開始すると少し長くなりますので、来週前半頃を目途にブログに書きたいと思います。